嘘と真実
一生懸命生きた人は、神の許しが出て天国へ行く・・・・。
オレと環は本部を走り回ったが、誰一人居なかった。案内役の人は居たのだが、何も知らないと答えたのだ。でも・・・
「ですが、隣町に行ったと聞いた覚えがありますよ?」
隣町なんてあったんだ!まだ知らないことが多いな・・・。でも、何で皆行ったんだろう。それも同じ場所に。腕にしがみ付いている環を見ると、早く解決しないとやばいと思ってきた。手の震えが強くなってきていたんだ。
「大丈夫だから!オレが何か他の方法探すから・・・」
オレが頭を撫でて云ってやると、環は首を横に振った。そしてオレの腕から離れて口を開いた。
「もういいよ・・。むっくんに迷惑かけちゃうしこれが魂操者の役目だと思うから」
涙の跡のついた顔で無理に笑う環の顔は、可愛くはなかった。そう云って、ゴメンネと呟くと廊下を駆けて行った。環は本当に諦めたんだ・・・・。
「で、何の為にオレ達を呼んだ?」
睦たちの居る町の隣の町に鬼衣瑠達は居た。それも、居るところはシャイングとは対立しているファミリーの本部だった。
「いやね、そちらの町で封印されている魔力が封印を解いてしまうと聞いたものでね。私達-サクルス-もお手伝いしようかと・・・。」
銀髪の男は不気味な笑みを浮かべ、鬼衣瑠たちに話しかけた。
「いらないよ、そんなの。僕達だけでやるから。」
零は、キッパリと断った。もちろんほかのメンバーも断るつもりだったのだろう。
「じゃあ帰るから!・・・・・」
鬼衣瑠や零たちが立ち上がるとその首に、剣が向けられた。その場は静まり返った。剣は本物でキラリと先を光らしていた。
「何のつもりだ?」
「あなた達を帰すわけにはいきませんので。ここでゆっくりお話でもしましょうか・・・」
動くことも許されない。この状況ではソウルを使うことも出来ない。少しでも動くと剣に伝わっている電気のソウルが自身を感電させるだろう。そのことに気づいた零はゆっくり不満げに座った。気づいていない他のやつ等にも座れと合図を出した。
「なんの話をするって云うんだ。お前達の助けなんかいらねぇんだよ!今はもう睦もいるし」
その言葉を聞いて、銀髪の男はふふと笑い続けた。
「でも、今シャイングに強い魂操者は居ない・・・当たり前!私が強い魂操者を全員呼んだのですから。」
「だから何が云いたいんだ!!」
苛ついてきたのか、鬼衣瑠がバンッと机を叩き立ち上がった。剣が向けられる。だが、もうそんな物を気にしてなどいなかった。
「何を、云い・・・」
「私は大地と草花の魂操者、環を殺すんですよ。彼女は私達の計画の邪魔ですからね」
はっとしたように鬼衣瑠は口を開けた。今気づいたのだろう・・・自分たちは計画にはまってしまったということを。
「彼女を騙すのは簡単でしたよ。魔力を封印するには大地と草花の魂操者が生け贄にならなければならないと云ったら信じてくれました」
「なんて事を・・!魔力を封印するのに生け贄なんていらないのに・・環はそれを承知したのか?」
怒りに震えながら鬼衣瑠は、叫んだ。だが、その声を聞いても男は笑っていた。
「ええ。承知しましたよ。貴女だけしかいないんですって云ったらそれが私の役目なんですね、と云ってね。やるといったらやる子なんでしょ?もう準備は始まっています。儀式が終わるまで皆さんはここに居てもらいます」
ガッタっと立ったのは零だった。はぁとため息をつくと男を睨み話した。
「誰に断ってうちのファミリーの一人を殺すなんていってるの?君達はアレを復活させようとしているんだろ?それを止めるのが僕達の仕事だ・・・」
零は一瞬のうちに体をソウルに包み込んだ。眼をも疑う早さで自分の周りにいる剣士を倒していった。そして、ソウルをそこらじゅうに放っていった。これだけ早くソウルを操れる人間は零だけであろう。
「零・・・」
「早く行かないと。あの君の連れてきた少年だけでは心配だからね」
零のほかにもどんどんソウルで戦い始めたヤツが増えてきた。だが、男の笑い顔は直らない。
「まだまだですよ・・。貴方達は逃げられない。」
ドアの向こうからなにやら音が聞こえた・・・・。
「これって罠なんじゃないのか?」
オレが気づいたのは生け贄の準備が始まって間もないころだった。だが、証拠もなにもないし。でも、おかしいのはオレにもわかる。生け贄なら鬼衣瑠たちも帰って来ると思うし・・。
「あれ?そういえば生け贄の場所ってどこだ?」
聞くのを忘れていた。これじゃあ助けるにも助けられないじゃんかぁ。でも、沼なんだろ?沼なら探せるかも・・・。鬼衣瑠、早く戻って来いよ!オレは走り出した。その生け贄の儀式をやる沼を探し。変な胸騒ぎがしていたのは、気づくことはなかった。




