第1話「誕生」
「あなた達が居てくれたから私はこれまでを戦ってこれた。ちゃんと救ってもらえなくてごめんね。……ありがとう」
ーーー魔王が勇者に敗れた。
後世には男を英雄とし、その姿を模した像が建つことだろう。たが、決して彼女の名前を忘れてはいけない。英雄が生まれたその陰で、確かに魔王に抗い続けたもう1人の英雄を――――
◇◇
数年前へ遡る
この日、ひとつの生命が覚醒する。
生命はそっと瞼を開く。最初にその目に映った両の手を開閉させ、その手で自らの体を他人のもののようにゆっくりと触れていく。下を見ようと頭を下げた時、口元の違和感に気づき確認する。彼女は管が装着されていることに気づく。
「これで呼吸を。」
彼女は水のようなものの中にいることに気づき辺りを見回す。周りに6つ、大の大人を収容できそうな機械があるのが目に入る。と、その時なにかが開く音と同時に重力に引っ張られるように外へ放り出される。
管が外れ、軽く咳き込む。口元を腕で拭いながら顔を上げると脚が見えた。
「成功のようね。あまり時間はないの。」
長い白髪に青い瞳の女性は片手を彼女の方に置き、
「貴方にはこの世界の魔王を倒すために動いて欲しいの。何年かすると魔王は軍を生み出しこの世界を乗っ取ろうとする。この世界を救える期限はそれまで。あなたの力ででもいいし、助けを呼んで魔王を討伐する組織を発足してもいい。でないとこの世界が終わ…」
「何をしている。」
目の前にいる女性は形相を変え、再び話し始めた
「ごめんあとのことはお願い!時間の許す限り力を直ぐに蓄えて! お願い!世界を救って。」
そして彼女の意識は突如として暗転する
◇◇
名前すら与えられていない彼女は街の裏路地と思わしき場所で再び意識覚醒する。
「いってて…」
ほんの少しの高さから地面に落ち、軽い痛みを感じる。
「さっきのは何? それからここはどこ……」
四つん這いから起き上がり辺りを見回す。
今の自分には現状を把握出来ない判断をした彼女はそのまま人気のある場所まで出ることにした。
「あ、服。」
ないものは仕方ないと、隠すところは隠しながら石畳で舗装された道を歩く。するとすぐに年相応のしわをあしらえた顔のおばあさんとすれ違う
「そこのお主。聞こえておろう服を着ていないお主」
「あっ」
「服、ないのか?家がすぐそこじゃからなにか着るものを用意してあげよう。」
そう勝手に話を進め、ついてこといと背中を向ける。
服がなくては行動が出来ないため、そのままおばあさんに付いていくことにした。
◇
「ほれ、好きな服を選んどくれ。昔のわしの服じゃけんどもう着れる人もおらんからな。お主に合うものはあると思うぞ」
引き出しの中には見たことないデザインの服やスカートなどがあった。軽く自分好みでありながらも他に比べ値段の安そうなものを着ることにした
「そーじゃ着る前に風呂でも入るか?」
突然のお風呂に少し驚きながらも返事をする。
「いえ、有難いですがそこまでして頂くわけにはいかないです」
「ええよええよ。別に減るものでもないし」
少し考えたが、彼女は少し言葉に甘えようとここは簡単に折れ、軽く頭を下げ「ありがとうございます」と呟いた
「お主の黒髪本当に綺麗じゃな。黒髪なんてなかなか見んわ。風呂あがったらしっかり乾かすんじゃよ」
「ありがとうございます。」
軽く礼をいい、おばあさんにお風呂の場所を教えてもらってから着替える前にふと目に映った鏡を見る。
「あれ……」
彼女は自分の姿を見た時、自分は確かにこの世界ではないどこかで、それもこの姿で生きてきた気がした。
彼女は自分の姿を見た時、自分は確かにこの世界ではないどこかで、それもこの姿で生きてきた記憶があることに気がついた。
余裕があるときに改稿してから話を進めるのでちょー遅い更新になっちゃうわー