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第六章④

 ほどなくして、古民家の前庭に救助隊を乗せた県警のヘリコプターが着陸した。橋が崩れているのに気がついた近隣農家が、停められたままの車を心配して連絡したらしい。

 全ての罪を認めた相羽もその場で自首をし、こうして、前崎たちにとって初めてのサークル活動は、寂しく終わりを告げることになった。


 それぞれが言葉少なに私物を持って古民家を出て行く中、

「結局、誰も救えなかったか」

 廊下で自虐的に吐き捨てた前崎の言葉に、

「そんなことありませんよ」と、前を歩く中原が振り返って反応した。「前崎さんはここに居たみんなを救いました」

「救っただと?」

「ええ。だって、あのまま事件の謎がうやむやになっていたら、葉子さんや真由子さんの心には、誰かによって理由も分からず三人の仲間が殺されたというトラウマだけが残っていたはずです。少なくとも私はそうだと断言できますし、相羽さんだって、冷たい目をしていたのに、最後にはあんなに涙を流していたじゃないですか。……それが証拠ですよ」

「……」

「だから、前崎さんの推理はみんなを救ったんです」

 願望に近い考えだと思いつつも、中原の真っ直ぐな目に、思わずたじろいでしまう。

「恥ずかしいことを平気で言うな。ったく」

「だって、本当にそう思いますから」

 そう言って、くすりと笑う中原の顔を、前崎は久々に見た気がした。

「……俺には出来ない考え方だ」

 ふいに、なぜかドキリとしてしまった感情をごまかしつつ、前崎はため息混じりに靴を履く。

 けれど同時に、心の中では、

 ――そういう考え方も、少しはアリなのかもしれない。

 そんなふうにも、思っていたのだった。

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