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第二章①

 ふと……前崎は、誰もいない森の中に一人、ぽつんと立っていた。

 ――ここは?

 辺りは雪で真っ白に染まり、静謐せいひつが空間を包む。軽装なのに、不思議と寒さは感じない。

 なぜ自分はこんなところにいるのだろうか? そんなふうに記憶を辿ろうにも、欠片さえ、全く思い出すことが出来ない。

 そのとき、遠くから一つの足音が聞こえ始めた。

 ザッ…………ザッ…………という、少し間延びした、妙な音……。

 それはだんだんと近付いてきて、もやがかった大きなシルエットが、木々の陰から見えてくる。

 ――なん、だ、あれは……!

 やがてその全貌があらわになると、前崎は愕然とした。

 縦に長い真っ赤な顔に、闘牛のような鋭い目鼻立ち。頭には、髪の毛の代わりに湾曲わんきょくした二本の角が生え、身長はニメートルをゆうに超えている。赤黒い身体には擦り切れた腰布以外、何も身につけておらず、異常発達した上半身の筋肉には、無数の切り傷が刻み込まれていた。

 そして、なにより目を奪われたのが、その右手に持った巨大な斧だった。刃先からは、ぽたりぽたりと血のようなものが滴り落ち、白雪を赤く変える。

 怪物は、蒸気のような鼻息を空気中にたっぷりと撒き散らしながら、爪の長いその巨大な素足で、一歩一歩近付いてくると、前崎の目の前で仁王立ちした。

 猛烈な威圧感に心臓は早鐘を打つ。逃げようにも、足は硬直し、接着剤でくっついてしまったかのように全く動いてはくれない。

 そうこうしているうちに、相手は、喉をグルリと鳴らし、手に持った斧を軽々と天高く振り上げる。

 そして、お互いの目線が重なった次の瞬間、ぎらりと光る刃の輝きが、前崎の弱々しい首筋をぎ、大量の赤い鮮血が花びらを散らせるかのように――――。

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