表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/47

第一章⑩

 午後六時二十一分。

 夕食から暫く経ったにも関わらず、いまだ、あまり打ち解けられていない空気を気にかけたのか、中原は積極的に紙倉へ質問を投げかけていた。

「――それで、どうして真由子さんは今の大学に?」

「えっと……高校三年生の夏休みに、オープンキャンパスでこの大学を見学したんです……その時に、このサークルの勧誘を受けまして……」紙倉はどもりながら答える。「所属していた先輩の説明を聞いていたら、なんか、ちょっと興味が出て……」

「へえー。その人って、もしかして部長の葉子さん?」

「……あ、いえ。今はもういない方なんですが……」

「あら、そうなんですか」

「ええ。でも、上手く話せない私にも凄く優しくて……」

 コップの中のオレンジジュースに視線を落としながら、懐かしそうに、その目を細めて言う。

 そのとき、懐中電灯を持ってトイレに行っていた冴和木が戻ってきた。

「――ねえ、哲也。悪いんだけど、お風呂の薪の火を一旦取り出してきてもらえないかしら?」

「んあ? どうしてだよ?」

「さっき、お風呂の湯加減見てきたら、いい感じだったのよ」

 冴和木の右腕には、すでに着替えとタオルが用意されている。

「……いい感じって、沸かし始めてまだ一時間弱ってとこだろ? ちょっと早くねえか?」

 加藤が言うと、相羽も眉根を寄せる。

「俺も、この気温だったら、もう少し掛かると思うが……」

「いいのいいの。私はぬるい位が好きだから。そのほうが肌に良いし、熱すぎたら結局うめることになっちゃって、後の人にも悪いじゃない」

「――ったく、それで一番風呂とは、しょうがねえお嬢様だ」

「お願いね」

 加藤は冴和木から懐中電灯を受け取ると、渋々ウェアを着直し、玄関へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ