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4 争いとは、人間とは、妖族とは。時々魔族

あれ、なんかものすごい長い・・・

あれから依頼の報告を完了させてすぐ、近くの喫茶店に入る。どちらかというと茶屋のイメージ。3人分のお茶と御菓子を頼み妖鬼・・・の女の子の話を聞くことに。


「いんや~、やっぱり若様いい格好してるねえ?力も出てきて・・・やっべ興奮してきました」


なるほど、やばいやつらしいな。これは逃げるしかない。そして横では三鈴が修羅のオーラが出てまぁまぁ・・・周りからどんどん人が遠のいていくぞ~。


「鬼、裕様に危害を加えてみろ。消滅もやさしい苦痛を提供してやろう」


「あら狐さん、あなたは勝負でしか勝てない弱者。勝者は決して強者とは限らないんだよ?」


「減らず口を、なんなら今ここでやろうか。駄鬼」


「是非もなし。やって見せろよ弱者。若様の右腕はこの私だ」


やばいよやばいよ、ここら辺一帯更地になっちゃうよー。・・・いやそれよりもとめなければ。しかしどうやって止める?いま俺は力を持ったばかりで制御が完璧じゃない。先刻の鶏のように消してしまっては元も子もない。ここはひとつ二人とも俺に好意を持っていただいてるという前提で話を進めよう!


空振りだったらくっそ恥ずかしくて死にそうになる奴だなこれ。と、とりあえず何か言わないと


「あ~二人とも、ここで争わないんだったら三鈴は頭をなでてやる!鬼ちゃんには・・・な、名前!そう名前を付けてやる!」


うわ・・・名前を付けてやるって。すげえ上から目線、おっ怒られないかな?三鈴は・・・耳がぴくぴくしてるな。うん、なら大丈夫だ。さらに言えば3本のしっぽが横に触れているしOKだ。鬼ちゃんは、震えてる?だ、大丈夫かk


「「本当ですか!?」」


いつの間にが二人が眼前にいる件について。え?動いてないよね?とりあえず鬼ちゃんの名前は・・・俺と同じような刀使ってるし、なおかつ女の子らしいやわらかい名前にしないとな。う~ん。


「・・・竜胆とか、どうだ!?」


とっさに出たのは花の名前、刀なんぞどこへ行ったのやら。竜胆。彼女をみて思い浮かんだそれはなぜなのか。一方鬼の方は体を震わせている。裕は気に障ったのかと、やはり自分なんかに名前を付けられるのは嫌だったと。その心配をしていた。が、それはどうやら杞憂だったようで


「わかりました!私は今日から竜胆!妖鬼姫の竜胆です!裕様、末永くお付き合いくださいね!」


満面の笑みでそういうのだ、男として女の笑顔はとても心に来る瞬間だった。三鈴は嗚呼、という顔をしていたがなぜだろうか?裕にはわからない問題であるがそれは後程三鈴に説明され、事の重大さを知ることになる。


それはさておき、三鈴の機嫌も頭をなでることで回復し話がつながる。


「・・・竜胆、あなたがここに来たの偶然じゃないわよね?」


「もちろん、今ここは人間が攻め込もうとしてるそれを伝えに来た」


「ちょっと待ってくれ、どういうことだ!?」


聞き捨てならない言葉を聞いた。人間が攻めてくる。それすなわち戦争。殺し合いだ、それよりも懸念すべきは裕、自分が人間を相手取るということ。現代社会の日本に生まれ住んでいた裕にとって、人を殺すなど想像もできない。


「こちらの世界は、国が数国しかないのです。まずはそこからご説明します」


三鈴が説明する内容はこうだ。国の名前なんぞどうせいやでも聞くことになるから今ははしょられた。その中でも唯一神崇拝の宗教があるらしく、攻め込んでくるのはそういう人たち。神の子である人間以外はよろしくない生物。排除という簡潔な流れだ。


「戦争と聞いて、臆さないんですか?若様」


「実感がわかないだけだよ竜胆。俺は戦争を経験してない、ましてやさっきの依頼ですら対象を殺めてはいない。消しただけなんだ。」


言っていることがすでにおかしいがその通りで、命のやり取りをしていない。殺していないのだ。さらに今度の相手は人。同族なんぞ斬る覚悟がない。


「裕様、あなたはこの国の王です。私に名前を付けた時からそうなることは決まっていました。こちらの世界はあちらほどやり口が巧妙ではありません。時代に関して言えばそれこそ中世に魔法が加わって毛が生えた程度です。対してこの国、倭は向こうよりも進んでるといっても過言ではありません。科学に魔法この二つを積極的に取り入れましたから。それを見たほかの国、人はどうしますか?」


確かにそれは技術を欲しがる人もいるだろう。しかしと続けざまに竜胆もいう。


「人ってのはそういうもんでしょ、あたしたちとは違うのよ。本能剥き出し欲望剥き出し。私たち妖族はこれでも温厚なのよ?こっちから手を出したことは一切ないの。それを逆手に取られてるけどね」


笑いながら言ってる目は哀愁を含んでいた。そんな彼女に裕はかける言葉はなかった。今の自分では的確な用意をしてやれない。それが答えだった。


「どちらにせよ、裕様はお城へ真っ先に向かってもらわないと。竜胆、転移させますから近くに」


「あいよ~」


話が急展開すぎてついていけず、裕はえ?え?と美女二人を交互に見ていた。


「ちょ、ちょっと!お代!お代払ってないよ!」


焦り気味に言う裕をよそに余裕の顔で


「知ってましたか、裕様。ここはすでに倭。あなたの国です。王様が飲食をした、それだけで拍がつくほどの存在なんですよ」


まあ、後で払いますがね。と何とも残念なセリフを残して転移した先は・・・


「おかえりなさいませ、若様」


多くの使用人が石道の端に腰を曲げながら待機している。


「・・・すっげえ」


古き良き日本邸であった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「遅いぞ三鈴、今まで若をどこに連れ去っていた」


道なりに進むと狼の耳としっぽをはやした男が玄関から出てきた。ワーウルフというやつかなと推測を立てると、向こうから自己紹介をされる。


「申し遅れました、若様。わたくし日本狼を代表しておりますものです。どうぞ頭の片隅にでもおいていただければと」


なんと自己紹介をあのDOGEZAでされてしまった。え?おれここ場違いなんじゃないの?と疑念を抱きながら三鈴は茶々をいれる。


「あなたなんか覚えたくないって。残念ねえ」


「いい加減にしろ、あまり若様を困らせるな。・・・それよりそこの鬼の格が上がってないか?三鈴に近くなった気がするんだが」


裕は思う、かく?なんじゃそりゃ?三鈴に近い?鬼が狐になるのか。的外れもいいとこである。その鬼は嬉しそうに


「いいだろ狼!私は若様から竜胆って名前をもらったんだ!これからはそう呼べよな!」


「なんだとおおおおおおお!!!!」


それを聞く狼さんのリアクションはまるで〇川の様なオーバーなものだった。三鈴に確認を求めたが其れも肯の字が帰ってきてしまい、なんたることだあああと頭を壁に打ち付けている。


「三鈴これはどういうことだ。なんで狼さんはこんなにヘドバンしてる?」


「裕様、名前を与えられるというのは我々妖族にとって最上の褒美であってかかわりを強くするものでもあるの。つまり、身内という解釈でもおかしくないわ。おまけに力も上がるしね?」


ようは忠義を尽くした人への最大の褒美なのだそうだ。しかもじぶんより上のものから与えられるというのはなんというかやばいらしい。興奮がアレらしい。裕はもちろん自分が上という感覚はないのでへ?であったが


「・・・じゃあ狼さんは漸次・・・とか?」


「「あ!ちょっと!!」」


二人の妖怪が気づくころにはもう遅く、裕は狼の名前を考え狼はそれを


「おお!おお!わたくしにもお名前を頂けるとは!感謝の言葉もございません!!さっそくこの漸次、狂信者どもを打ち取ってやりましょう!!」


喚起なのか武者震いなのか、それは裕にはわからなかったが狼さんは泣きながら震えていた。よく聞くと「俺の苦労は今の出すべてむくわれたぞおおお~」とこぼし、周りの狼からクンクン言われてるのでおそらくOKであろう。


じゃあ、あとは自分の考えを伝えなくては。と三鈴に伝え、城(屋敷)の人たちに声を出す。


「まずはじめに、知っている人がいないかもしれないから自己紹介を、俺の名前は神薙裕。今年大学を卒業して工業関連の仕事に就くはずだった22歳だ。よろしく。次に、今のことを聞いてわかったと思うが俺は人どころか血が出るものを殺すということはしていない。つまりいまだこちらの世界の子供にすら負けているとおもう。でも、みんなは命を懸けて戦うんだろ?俺の言葉なんか崩しでいいから違ったら違うといっていい」


この屋敷にいるものすべてが、戦うと、その意思表示を見せた。


「・・・ありがとう。その覚悟を素直にすごいと思うよ。俺は戦争なんかやったことないからいまだに実感すらわかない。いらなくなったら俺を蹴飛ばせばいい。最初は嘘かと思った。王とか、こことかでも来てしまった。なってしまった。なったからには精一杯やるつもりだ。人生経験の足りない阿呆ではあるがみんなの力を貸してほしい、間違っていたら止めてほしい。・・・汚い演説だったが聞いてくれてありがとう」


小さな拍手、そこから大きなものへとかわり次第に「間違えてたら俺が止めてやるー!」とか「何でも相談に乗ってねー!」なんて言葉も聞こえてきた。いい人しかいな過ぎて泣きそうになった。野次でも出してくれても全然よかったのにと、涙ぐんでいると


「たいそうな演説でしたね。で、どうします?」


三鈴が俺をまっすぐ見ている。つまりそういうことだろう


「言葉を飾ることに意味はないからな、敵の数、および場所、最大戦力の情報は?」


「若様、漸次にお任せを。敵兵約1万、場所はこの国の東100KMほどです。最大戦力ですが、おそらく若様と同じ時代の人間がいるかと思います」


「え?俺と同じ?」


「裕様、あちらの世界の人間はえてしてこちらに来ると時代に過剰な力を持ちます、裕様も所持しているでしょう?」


身に起こった変化は自分がよく知っている。うなずくとそのまま漸次による説明が続く


「そうですね、わかりやすくあちらの世界の言葉で勇者とします。力としては”消失”と聞いています。並大抵の人間には対処できないでしょうが我々は総和ならないと思います。結局は魔術ですから」


「そうはいうけど、私が相手したときはきつかったよ~。”曖昧”を使ってもなかなかどうして・・・正確に能力を使ってくるんだろうね~」


竜胆はその時のことを楽しそうに話す。鬼というのは争いが好き、というのは聞いたことがある。殺し合いではなく純粋な力比べ、しかしそれを人間に求めるのは極めて難しく、何度も暗殺なりなんなりがあったと笑っていた。笑える内容ではないが。


「・・・じゃあ勇者には俺が行こう。みんな・・・というか作戦指揮とかは3謀にまかしたほうがよさそうだし・・・」


そう言ってると三鈴が


「大体こちらに攻撃を仕掛けてくるのは1週間後ですかね。それまで裕様にはご自身の力の制御をがんばってもらいます」


「ああ、わかった。相手を消してしまったなんて、笑えない」


改めて詳しく説明すると裕は”値零”つまり0を操ることを得意とする。物体には位置エネルギー、運動エネルギーが存在する。ではとれらを0にした時どうなるか、単純に止まる。ではそれらと同じように存在するものを1として0にするとどうなるか。答えは消える。跡形もなくつまり裕が得意なのは魔術を魔術でというような正攻法ではなく、存在する基盤を消すことによって形を保てなくするというのが正しい。つまり正攻法チートではなく、裏方チートである。しかし代償に大量の演算を求められる。一度やるだけで脳がパンクするほど。二回やれば血管が切れるのではないか、という感じだった。ではこれの制御はどうするのか。まずは力になれるため発動時間の強化、加え空間把握力を高めることだ。特訓方法は・・・三鈴お手製らしい。


「作戦立案は、漸次がいいんだろうな。竜胆は部隊長で。俺はそれの下に」


「え!?若様隊長でしょ!!三鈴や漸次も来るんだからまとめ役として若様じゃなきゃ!」


なんだその超理論、と思ったが裕以外はおおむね賛同らしい。初めから面倒事のオンパレードである。


「グダグダしてるが、一週間後の敵接近までみんな頑張ってくれ。いや一番は俺か・・・」


ため息をついているところへさらに追い打ちをかけることが一つ


「裕様、お客様ですわよ。準備なさって」


戦闘態勢をとる三鈴の目の先には


「あら、かわいらしい王様ですわね~。食べちゃいたい」


「吸血鬼私の若様は渡さんぞ」


「うるさい鬼が、何を偉そうに」


すでにひと波乱ありそうだった。


「あれ、これ面倒事が無くならないやつ?」


気づいたのはもうちょっと後だった。





三鈴、竜胆、漸次と名前が三人つきました。説明を受けても全員に名前を付けたい裕です。

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