愚か者達の末路
二月後、ライアーノ家で開かれるパーティーに、自国や近隣諸国の貴族達が集まっていた。
男達は政治政略で腹の探り合いを、その伴侶達は自国の流行を話しあっている。
その中に、明らかに浮いた集団がいた。
リリアとその取巻き達である。
ライアーノ家でのパーティーに参加する事をリリアに伝えると、自分も参加したいと言い出したのだ。
より正確にいうならば、最近ライアーノ領からの物が高騰したせいで、贈り物が減った為、ライアーノ領で仕入れようと画策していた。
ハボックは実家でのパーティーにもかかわらず、客扱いされている。
しかし、重要な発表があると聞いており、自分に侯爵の座を譲る為のパーティーだと考えている。
取巻き達は次々と料理を手にしては、リリアに「美味しいよ。一口どうだい?」と伝えている。
あらかた来客がパーティー会場へ入ったところで、主催者であるエリックが会場に現れる。
「皆様、本日はお忙しいなか、我がライアーノ家へ足を運んでいただき、誠にありがとうございます。大したもてなしは出来ませんが、我が領で取れた食材で用意した食事をご堪能ください。」
深く頭を下げたエリックに、ハボックが歩み寄る。
「父上、今日は重要な発表があると聞いていましたが?」
ハボックのその言葉に、集まった来賓達が耳を傾ける。
「お集まりいただいた皆様もその内容に興味をお持ちのようです。もったいぶらずに発表されてはいかがでしょうか?」
ハボックのその言葉に、エリックは自国の王を見る。
エリックは王が頷いたのを確認して、一度咳払いをする。
「皆様の招待状に同封した手紙に書かせていただきました、重要な発表を、この場でさせて頂きます。」
その言葉に、ハボックは今か今かと心を踊らせなが待つ。
だが、その発表が行われる直前に、会場の扉が開く。
発表を待っていた全員の目が扉へ向けられる。
入ってきた二人に対し、声をかけたのはハボックだった。
否、彼らに罵声を浴びせたのはハボックだった。
「何故貴様らがここにいる!」
周囲にいる者達が近隣諸国の重要な人物ばかりだというのに。
そして、愚かにもハボックに続いてしまった人物がいた。
「ここは貴様のような毒婦が来る場所ではないぞ!」
その言葉が、どれだけ愚かな行いであるか気付かぬまま。
故に、彼女がこのような行動を取るのは必然といえた。
「クスクス。」
笑われた事に我を忘れた二人は、掴みかからんとレイアに詰め寄る。
そして、あと少しの所で地に這いつくばる事となる。
本人達は、何が起き、何故自分が地に這いつくばっているのかわからないといった表情だ。
「他国の方が見えるパーティーでこのような行動を起こされるなど、程度がしれますよ?」
二人を倒したラシュクルドは、パーティー会場へ入ってきた騎士達の邪魔にならないよう二人から距離を取る。
騎士達は二人を拘束していく。
「貴様ら、俺を誰だと思っている! このような事をして、ただで済むと思っているのか!」
「お前達、何をしているかわかっているのか!」
二人の拘束が終わる頃、リリアと取巻き達も騎士に囲まれていた。
「皆様、お騒がせして申し訳ありません。そして、先程発表についてですが、我がライアーノ家は、そこにいるハボックを廃嫡し、娘のレイアへ侯爵の座を譲ります。」
「な!?」
驚きのあまり、ハボックは固まってしまう。
「そして、我が王家は、第一王子であるレオナルドを廃嫡し、第二王子であるユーノを時期国王とし、成人と同時に王座を譲る!」
「何だと!」
第一王子、レオナルドもまた、驚いて声を上げる。
「父上! 何の冗談ですか!」
「冗談だと? それはこちらの台詞だ! そこにいる平民の娘の戯言を鵜呑みにし、ろくな調査もせずレイア嬢を糾弾し婚約を破棄した貴様のような愚か者に王座を譲っては、ご先祖様に顔向けが出来ん!」
「戯言だと!?」
「その通りだ! その娘が受けたという嫌がらせなど、レイア嬢は一切関与していない。それどころか、そのような嫌がらせ自体起きていない。その娘の虚言だ!」
レオナルドはリリアを見るが、リリアは顔を真っ青にして、今にも倒れそうだ。
「この件に関わった者全てに、追って処分を言い渡す。この者達を連れて行け。」
国王が命じると、騎士達は抵抗する取巻き達を連れて会場から出ていく。
「お騒がせいたしました。それでは、引き続き、料理をご堪能くださいませ。」
エリックの言葉に、何とも言えぬ空気の中、パーティーは再開された。