表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

破滅へのカウントダウン 前

その日、王都から最も人気のある化粧品が消えた。

貴族御用達の商人は、仕方なく今まで不評だった質の悪い化粧品を売り出す事となった。

その数日後には、ほとんどの町で同じ現象が起きた。

それから少しして、途轍もない価格で化粧品が販売された。

今まで銀貨一枚(一万円相当)だった化粧品が、銀貨十枚となったのだ。

商人達は、何とか安くならないかと生産元へ赴いたが、色良い返事は貰えなかった。

また、その少し後に、服屋から絹を素材とした服が消えた。

こちらも化粧品と同じように、数日後にはほとんどの町から無くなり、後日高額となり販売される。

他にも、ワインなどといった嗜好品から、冒険者や騎士団に必要なポーションの類も同じように高騰した。

だが、これに困ったのは貴族や有力者だけである。

平民の月収は、銀貨十枚から十五枚程度である。

その為、今回高騰した物は、元々が高価である為、平民には何も影響が無いのだ。

そして、その影響を一番に受けたのが王宮である。

何せ、逆ハーと化した取巻きでもっとも権力を持つ男が、今まで通り国庫から金を出しては湯水の如く使い、化粧品や、絹で出来たドレスをリリアに買い与えたのだ。

それらが今までの十倍以上の価格になっているとも知らず。

そうなれば、国庫が底を突くのは明白である。

故に、国庫の担当者は、泣きながら頭を下げる。

「殿下、どうかこれ以上お金を使う事はお止めください。これ以上は国庫が持ちませぬ! どうか、どうか!」

「馬鹿を申すな! その程度で国庫が底を突くはずがなかろう!」

「突いてしまうのです! このままでは! 殿下はご存知ないかもしれませんが、ここ少しの間で物価が考えられない程高騰しており、殿下が使われた金額は、今月に入りすでに金貨百枚を超えております!」

「何だと!?」

知らなかったとはいえ、一月でこれ程使えば、近いうちに国庫は底を突く。

基本的に、王侯貴族の買い物はその場で金を支払わない。

余りにも金額が大きい為、後日請求という形を取るのだ。

それ故に、自分がいくらの物を買ったのかわからない事も多々ある。

「何故これ程高額となっているのだ! 先月と変わらぬ程度しか買い入れておらぬぞ! その時は金貨二枚程度だったはずだ!」

金貨二枚を程度といえるあたり、どれだけ金銭感覚が狂っているかわかるが、本人にとっては、これが当たり前なのだ。

「化粧品やワインなどといった嗜好品の類は約十倍に。絹を素材とした服は数十倍になっております。」

「馬鹿な!そんな事が許されるはずがなかろう!」

「しかし事実、ライアーノ領から入る物全てが高騰しているのです!」

「ライアーノ領だと! なるほど、あの女、私との婚約が破棄になった腹いせにこのような事を! よかろう! 私が直接ライアーノ領へと赴き、あの毒婦に目に物を見せてくれるわ!」

意気揚々と言い放ったそのタイミングで、外交を担当する部署の者がやってくる。

「失礼致します。殿下、陛下がお呼びです。」

「わかった。すぐに向かう。」

王の執務室へ向かうその背を、国庫の担当者は哀れんだ目で見送った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ