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「たーかしろー」
「たかしろー」
「高城!」
「わっ、なになに 稲葉くんだ」
授業中ボーッとしてると前の席の稲葉くんが後ろを振り返って私を呼んでいた。
「稲葉くんだじゃねーぞー 話聞いてなかったろ」
「え、うん 全く」
はぁとため息をつく稲葉くん。そして感じる無数の視線。
稲葉くんと同じクラスになれた事はすごく嬉しいんだけど2年になって一ヶ月 私がちょっとでも稲葉くんと喋ろうもんなら 初めて稲葉くんと同じクラスになれた女の子達が恨めしそうに見つめてくる。
「庶〜務、洋司から聞いてない?」
「 あ!! 」
庶務の話をされ思わず大きな声を出してしまった。先生がギロリと睨む。
「高城 トイレか?」
「ちち違います すみません」
手をぶんぶん顔の前でふり否定すると呆れた顔をしてまた授業を再開した。
「高城声でかいわ」
「だって稲葉くんがいきなりそんな話するから!」
コソコソと話しながらも人差し指でガンガン稲葉くんの肩を押す。
「ちょ 痛いっつの」
へらへら笑いながら私の手を制止する稲葉くん。
「その庶務ってどうなってんの?なんでなの?」
「洋司に聞いてないの?」
「びっくりしすぎてちゃんと聞くの忘れてたよ」
「あほだ」
「あのねー当たり前でしょー?意味不明なんだから!」
「しょーがない 教えてやる」
「なによ」
「高城兄弟に似てない真央ちゃんが見てみたいんだって〜、うちの王子が」
「 は!? 」
「ゴホン……高城?」
「あ、あの、トイレ…」
「早く行ってきなさい」
二度目の大声に流石に居づらくなったのでトイレとゆうと稲葉くんが小さな声でヒーヒー言いながら爆笑していた。