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五歳の時、私は高城家にやってきた。
それ以外は他の人となんら変わりない普通の女子高生である。
「真央〜、玲起こしておりてきなさい」
お母さんが一階から大きな声で呼んでくる。
時計を見ると現在朝の7時20分。
「やば…、はいはーい!」
20分の寝坊に慌てて布団から飛び出すと、変身ばりの早さで制服に着替え部屋を出た。
「玲起きて!朝だよ!」
部屋の前でそう叫ぶとノックも無しに部屋に入る。布団を蹴飛ばしながらお腹を出して寝ているのは私の一つ年下の弟の玲。声も届かないないほどの爆睡ぶりだ。
「もう!朝ごはん食べれなくなるよ!起きてってば!」
半ば発狂気味にそう言うとカーテンを勢いよく開ける。朝日で起こそう作戦だ。
「…ん…まぶし…」
「あーさ!朝だよ!何回言わせ…きゃっ!」
ぺちぺちと頬を叩いていたら突然腕を引っ張られ玲の上へと崩れ落ちた。
すかさずぎゅっと抱きしめられる。
「…後10分…」
「ばか!誰と間違えてんの!はよ起きんかい!!」
力強い玲の腕を振り払って頭を一発叩いておいた。その一発で目覚めたらしく「あれ?真央?」とぼけーっとしている。
「起きた?!もう先おりとくから!」
とりあえず起きたということにして玲の部屋を飛び出した。
「朝ごはん食いっぱぐれだけはいやだ〜」
ドタドタと階段を降りると呆れた顔したお母さんが下で待っていた。
「高2の女の子がそんなに食い意地はってどうするの。外ではやめときなさいよ」
「わーかってるって!」
適当に返事をしてトースターからお母さんがいい具合に用意しておいてくれたパンを取り出して自分のイスに座ると…見当たらない。
いつもなら私より先に横の席に座っているはずの双子の兄が見当たらない。
「洋ちゃんは?」
「もうとっくに行きました」
「はや!」
「今日生徒会のなんかがあるんだって。真央は早く行かなくていいの?」
「あ〜 そっか。私は関係ないや」
そんな話をしてると玲が階段を大きな欠伸をしながらおりてきた。