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さよならの日に、貴方の声を。  作者: 悠介


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7/9

甥との再会

「やぁ、春ちゃん。待たせたか?」

「ううん、今来た所。」

 浩介の死から三か月、今日は月命日だ。

 まだ寒い、二月の終わりの空気の中、俺は春ちゃんを車で迎えに行って、浩介の眠る寺に向かう。

 浩介の両親に遺骨をどうするか、って聞いたら、墓は畳んだし自分達は永代供養をしてもらうつもりだから、って言われて、急いで近場に墓を買った。

 毎月一回、ここに来るのが今の俺の習慣って言うか、新しいルーティーンだ。

「まだ寒いな。」

「そうだね。悠治は元気?綾ちゃんったら、悠治と外に行ってばっかりで、家に連れてこないの。だから、あんまり会ってないんだ。」

「大学と大学院じゃ場所も違うしな。悠治は元気だよ、綾ちゃんとも仲良くやってるって言ってたよ。」

 車を走らせながら、時折浩介が好きだった歌を流して、感傷に浸る。

 車は一昨年に買ったまだ新しい車種で、スマホで音楽を流せるのが有難いし、それには最初は驚いた。

 車に乗る、って言ったら、じいちゃんに乗せられて何処かに行く位だったし、じいちゃんの車は古かったから、そんな利便性の良い物はなかった。

 思えばバックカメラとか、ドライブレコーダーにも驚いたな。

 時代に置いていかれた気がして、慌てて色々と覚えたっけ。

「悠介、お昼食べた?」

「ん?まだだよ?」

「じゃあ、後でご飯行こうよ。悠介、基本的に家に引き籠ってるでしょ?たまには外の空気吸わないと。」

「それもそうだな。」

 もうすぐ寺につく、話をするのも良いけど、今は浩介に向き合いたい。


「……。」

「浩介、幸せだっただろうね。」

「……、どうなんだろうな。これから、やりたい仕事をやっていこう、って時に病気して、そのまま死んでいったんだ。それが幸せだった、とは俺には思えないよ。」

「そうじゃないよ。こうして、悠介がずっと想っててくれてる事が、幸せなんだろうなって。羨ましい位、浩介は愛されてたんだなって、実感してるの。愛して愛されて、相思相愛で、最期までそのままで、なんて素敵な事だもん。私、羨ましいよ。浩介が、それに悠介が。」

 俺が羨ましい、って言うのがわからない。

 でも、春ちゃんは春ちゃんなりに色々と考えてるんだろう、黙って話を聞く。

「私ね、愛し合った事って、無いんだ。大体は一方的に言い寄られて、それで勝手に私の何かを見て失望されて、時々ストーカーまがいな事されたり。逆に、私が好きになったのは、人生の中でたった一人、勿論、綾ちゃんと両親の事、友達の事も好きだよ?でも、恋愛として好きになったのは、悠介が初めてだったんだよ。……。浩介は、幸せそうだった。悠介と一緒にいる時が、一番笑顔が眩しくて、悠介もそれは一緒。愛し合うって、そんなに素敵な事なんだって、私嫉妬したんだよ?私はずっと片思いをしてたのに、そんなの関係ないって位、二人の笑顔は素敵で、まぶしくて、羨ましくて、妬ましくて。私、そんな自分が嫌だった、相思相愛な二人を妬んだ、そんな自分の心が嫌だった。でも、気付いたんだ。私は、救われてたんだって。」

「救われてた?」

「うん。悠介にいじめから助けてもらって、浩介に愛する事の素晴らしさを教えてもらって、二人に救われたんだ、って気付いたんだ。私、浩介の事は恋敵だと思ってたけど、二人を応援するのが正しい形なんだって、気付いた。だって、二人は本当に幸せそうだったから。まるで、見てるこっちまで幸せになれるんだって思っちゃう位、幸せそうだったから。」

 普段仏頂面だった俺が、笑ってるのが珍しかったんだろうか。

 でも、それだけじゃ、そう言う感想にはならないよな。

「なんて言うのかな、オーラって言うか、二人の纏ってる空気って言えば良かったかな。とっても幸せそうで、二人が凄い愛し合ってるんだなって、すぐ分かったんだ。」

「そんなに分かりやすかったか?俺達。」

「うん。だって、隠すつもりもなかったでしょ?」

「……。ちょっと恥ずかしいけど、確かに浩介との事は公言してたし、それが生命体として不自然な形だったとしても、俺達は俺達だから、って話をしてたんだよ。昔の話だけどな。」

 それは、付き合い始めて少し、同性愛をいじられた時の話だ。

 男同士なんて気持ち悪い、なんて言われた時に、俺達は、それが不自然であったとしても、誰に後ろ指を刺される事だったとしても、俺達にとって、それは間違いじゃないんだから、堂々としていよう、って話をしたんだ。

 結果、離れた人もいた、浩介の友達は、何人かがそれを本気で言ってて、ゲイがキモイ、って言って、離れていった。

 でも、それは間違いじゃない、同性愛が歪んだ愛情だったとしても、それが愛情である事に変わりはない、だから俺達は選んだ、堂々としていよう、隠さずにいようって。

 高校の頃には、そう言う事を言う言わないの分別が皆ついてたから、気持ち悪いとは言われなかったけど、やっぱり噂にはなってたりしたし、からかわれた事もあった。

 でも、俺達は変われない、俺達は俺達としてあるしかない、だから恥ずかしい事じゃない、って。

「俺達はさ、生物学的には異端だった、それはわかってたんだ。付き合い始めた頃に、パソコンで調べて、俺達みたいなのがゲイって言う人種だって事、同性愛って言うのがあって、自然界にも存在はするけど、少数派なんだって事、ネットではおもちゃにされる事がある事。でも、俺達は変われない、俺達は俺達でしかない。だから、堂々としてようって決めたんだ。誰に貶されようと、誰に嫌われようと、俺達の愛は間違いじゃないって、証明したかったから。」

「貴方のお父さん達にも言われた、って言ってたよね。気持ち悪いって、こんなのが息子で恥かしいって、言われたって。」

「そうだな。兄貴とは十歳年齢が違ったけど、俺達が付き合い始めた頃には、兄貴はもう結婚してたから。今、息子が二人いて、確か小学四年生と二年生じゃなかったかな。兄貴は俺を庇ってくれてさ、でも結婚して、家を出てるからあんまり手を出せない、って言われて、結局ここ数年は、甥っ子たちにも会ってないな。」

 墓の前で話すのもあれだから、車に移動しながら、話をする。

 そう言えば、兄貴とも連絡をここ数年あまりとってない、年始の挨拶位は来るけど、今年は俺が喪中だから、って事で、連絡も貰ってない。

 最後に連絡をしたのは、浩介が死んだ事を伝えた時だったかな。

「さ、話も良いけど腹が減ったよ。飯食いに行こう。」

「うん。」

 まだ冬の空、寒いしあんまり長居する場所でもない。

 俺と春ちゃんは、車に乗って、昼飯を食べに移動した。


「ん、子供?」

「誰かいるね。」

「……。もしかして……。」

 昼飯を食って、マンションに戻ってきて、ロビーに子供が二人、ポツンとリュック一つ持って立ってるのに気づく。

 ここに住んでる子達じゃない、もう何年か暮らしてるけど、こんな子達は見た事がない。

 何より……。

「もしかして、浩ちゃんと悠ちゃんかい?」

「あ……!おじちゃだ……!」

「おじちゃぁ……!」

「どうしてここが?って言うか、兄貴は?なんでここに?」

 やっぱりそうだ、数年間会ってなかったけど、兄貴と奥さんの面影がある子供達、さっき話題に出した、子供達だ。

 でもなんでここにいるのか、なら兄貴か奥さんはいないのか、なんて考えてるんだけど、二人ともわんわん泣き出しちゃって、聞き出そうにも聞けなさそうだ。

「……。浩ちゃん、悠ちゃん、取り合えず、おじちゃの家に入ろうか。ここは寒いし、二人とも風邪をひいちゃうよ。」

「この子達が甥っ子ちゃん達なの?」

「あぁ。浩希と悠介、俺の甥っ子達だよ。」

 取り合えず、二人をこのままにしてはおけない、だから手を繋いで、一緒に部屋に入る。


「浩ちゃん、悠ちゃん、何があったんだい?」

「えっとね……、えっとね……。父ちゃと母ちゃが、死んじゃって……。」

「兄貴と義姉さんが?」

「それで、じいちゃとばあちゃと一緒だったんだけど……。じいちゃが、出て行けって……。おじちゃの所に、行けって……。」

 涙を溜めながら、浩ちゃんが必死になって状況説明をする。

 悠ちゃんは泣き疲れて、今は俺の部屋で寝てる。

「ちょっとだけ待っててもらえるか?浩ちゃん。」

「うん……。」

 そう言って席を外して、キッチンで電話を掛ける。

 もう二度と声を聞く事もないと思ってた相手、親父に電話をかける。

「なんだ、お前か。」

「なんだじゃねぇんだよ親父、甥っ子達がこっち来てるけど、何があったんだよ。兄貴と義姉さんが亡くなったなんて、連絡も貰ってねぇぞ?」

「勘当した人間にいちいち言う必要があるか?」

「……。それで、なんであの子達が家に?あんたに出ていけって言われた、って浩ちゃんは言ってたけど。」

 この男、我が親ながら無神経過ぎるし、イライラさせられる。

 神経を逆なでさせられるって言うか、ホントは喋りたくもない、連絡を取りたくもない、そもそも向こうから着信拒否されてたはずだ。

「我が家では見る事はない、あの出来損ないの子供なぞ、必要ないからな。だからお前が引き取れ。どうせ結婚も出来ない出来損ないなんだ、それ位役に立って見せろ。」

「……。ホントにあんたは、殺したくなる程だな。まあ言いたい事は分かった。兄貴に見放されて、俺にも見放されて、寂しい人生を送ると良いさ。あの子達は、俺が引き取る。返せ、って言われたって、絶対に渡さない。」

「ふん、生意気な。」

 電話が切れる。

 イライラする、感情を逆撫でさせられる、でも子供達にそれを見せる訳には行かない。

 平常心を取り戻して、呼吸を落ちつけて、リビングに戻る。

「浩ちゃん、おじちゃと一緒に暮らそうか。おじちゃの弟もいるけど、大丈夫だろうから。とうちゃが死んじゃった時、行けなくてごめんな。連絡が来てなくて、おじちゃは知らなかったんだ。……。一緒に暮らそう、浩ちゃんも、悠ちゃんも、俺が傍にいるよ。」

「おじちゃ……。良いの……?」

「良いんだよ。金なら稼いでる、子供が心配する様な事でもない。学校の手続きとかしたいから、ちょっとだけ時間がかかるけど、大丈夫だ。」

「おじちゃ……、おじちゃぁ……!」

「悠介、大丈夫なの?確かに貴方は稼いでるし、基本的に家にいるから子供の面倒も見れるんでしょうけど……。子供を育てるって、結構大変な事だよ?」

「……。大丈夫、この子達は良い子達だし、兄貴の忘れ形見だ、施設に送る様な事はしたくない。……。この子達は、大切な甥っ子だから。会ってなかった期間があったとしても、大切な事に変わりはないんだよ。」

 浩ちゃんが抱き着いて泣いてる、春ちゃんは、子育てに関して素人な俺が、一人で子育て出来るのか、が不安みたいだ。

 でも大丈夫だ、きっと大丈夫だ。

 この子達は良い子達だから、きっと上手くいく。


「ただいまー。誰か来てるの?」

「悠治、お帰り。話があるんだけど、良いか?」

「うん、大丈夫だよ。」

 夜になって、悠治が帰ってくる。

 浩ちゃんと悠ちゃんは飯を食べてすぐ、疲れて寝ちゃってて、悠治は小さな靴がある事に気付いたみたいだ。

「俺の甥っ子達がさ、来たんだ。兄貴と義姉さんが亡くなったらしい、それで親父達は子供達を面倒見る気はない、って話でな。それで、俺は引き取ろうと思ってるんだけど、悠治の意見を聞きたい。」

「僕の意見?」

「悠治はまだ大学生だし、子供達とも面識はないだろう?だから、もしもそれが嫌だったら、当面の生活は面倒見るから、独り暮らしでも、ってな。……。浩介が死んで三か月、まだそれ位しか経ってないのはわかってる、悠治にとって、多分どれも辛い選択になるだろう、それもわかってる。ただ、俺は甥っ子達を見捨てたくないんだ。兄貴の、大切にしてた忘れ形見だから。」

「そっか、お兄さんが亡くなっちゃったんだ……。なんだか、悲しいね。でも、甥っ子君達が無事で良かった。僕は大丈夫、手伝える事があったら何でも言って?一人逃げて暮らそう、なんて思わないから。」

 悠治の言葉に、俺は驚くのと同時に安心する。

 出来れば悠治も一緒が良かった、それは、浩介を失った悲しみから、まだ悠治も立ち直れてないと思ったから、独りにはしたくなかったからだ。

 でも、悠治が子供を好きかどうかは知らなかったし、どうするかな、って思ってたんだ。

 でも、その答えを聞いて安心した、なら、これからの事もやりやすい。

「ありがとう、悠治。そう言ってくれると、助かるよ。」

「いえいえ、僕だって、悠にぃが大切にしたい事、気持ち、わかるから。僕が悠にぃの立場だったら、同じ事をすると思う。」

「そっか。じゃあ、この前進めてた話と同時にやっちゃおうか。」

 この前進めてた話、って言うのは、悠治との養子縁組の事だ。

 浩介がいなくなってしまって、親が碌に役にも立たない事を知った俺は、悠治に養子縁組をしないか、って話をしてた。

 今はただの兄弟もどき、なら、法律的に家族になっちゃおうか、って。

 それは悠治が結婚するまでの間、かもしれないけど、それでも、そうしたいって。

 この前書類を貰ってきて、丁度記入する所だったから、家庭裁判所に行って、追加で書類をもらってきて、後は子供達は未成年だから、家裁からの審査があるはずだ。

 色々と申請をしたり、学校の転校手続きがあったり、今のマンションの部屋じゃ狭いから、引越しも必要になってくるだろうな。

「色々と迷惑掛けるだろうけど、よろしくな、悠治。」

「うん。」

 取り合えず、そこの意思決定だけでも聞けて良かった。

「夕飯食ったか?」

「うん、今日は綾ちゃんと一緒に食べてきた。」

「そっか、了解。風呂入っておいで。」

 悠治は満足そうな顔をしてる、多分俺も、ホッとした顔をしてる。

 浩ちゃんと悠ちゃんを起こさない様にしなきゃな、って思いながら、食器を片づけるか。


「じゃあ、お兄さんはおじちゃと一緒に暮らしてたの?」

「うん、そうだよ。養子縁組、って言って、親子になろうか、って話をしてたところなんだ。だから、浩ちゃん達が養子縁組出来たら、お兄ちゃんって事になるのかな。」

「うーんと、えーっと……。」

「浩ちゃんと悠ちゃんは、おじちゃと一緒に暮らしたいって言ってたろう?だから、その為には養子縁組、って言うのをして、親子にならなきゃならないんだ。じゃないと、何かあった時に面倒が多いんだよ。」

「じゃあ、おじちゃが父ちゃになるって事ぉ?」

「そうだな、父ちゃの代わりになる、って事だ。」

 子供二人を悠治に引き合わせて、ちょっと悠治には大学を休んでもらって、話をしてる。

 浩ちゃんと悠ちゃんは、俺が悠治と浩介と暮してる事は知らなかった、って顔をしてて、この人はだあれ?から始まったから、ちょっと時間がかかった。

 ただ、子供達も人慣れしてるのか、それとも兄貴達の教育方針だったのか、怖がる事もなく悠治に接してる。

「父ちゃになるの?おじちゃが……。うーん……。」

「そこはおじちゃのままでも良いんだよ。形式上、親子になるってだけの話だから。」

 そう言えば、と思って児童相談所の人を呼んだんだけど、まだ来ないな。

 あのバカ親父が後から誘拐だなんだって言ってきても面倒だ、と思って、説明を先にしておこうと思って呼んだんだけど、兄貴が死んだ事自体初耳だったし、今は実家とは違う市に住んでるから、引継ぎされてるかどうかとかは心配だ。

「じゃあ、にいちゃって呼んで良いの?」

「うん。君達が良ければ、お兄ちゃんになりたいな。」

「にいちゃ!」

 浩ちゃんも悠ちゃんも、自分が捨てられた事は理解してるんだろう。

 これからここで暮らしていく事も、俺達と家族になるって言う事も、正しく理解してるんだろう。

 賢い子達だ、最後に会ったのが、浩ちゃんが小学校に上がる頃だったから、ぎこちなくならないか、とかちょっと不安だったけど、それも大丈夫そうだ。

「そうだ、二人共荷物が少なかったから、お洋服を買いに行こうか。おじちゃの洋服じゃ、ぶかぶかだろう?」

「良いのぉ?」

「勿論だ。ただ、ちょっと人が来るから、その後だけどね。」

「はーい!」

 そろそろ児相の人が来る気がする、買い物はその後だ。

 浩ちゃんと悠ちゃんに、兄貴が死んでからの話も聞かないとな、辛い思いをさせる事になるかもしれないけど、それは必要な事だから。


「これも買っておこうか。」

「おじちゃ、そんなに良いの?」

「良いんだよ、お金だけは持ってる、だから子供が心配する事はないんだよ。荷物があれだけだったって事は、服もないだろう?なら、買ってあげないと虐待になりかねないし、一緒に暮らす、って決めた以上は、ちゃんとしてあげないとだ。」

「ありがとぉ!おじちゃ!」

 児相の人曰く、兄貴と義姉さんが亡くなったのは二週間前、そこで両親が引き取った、って話だけど、金だけ持って逃げた、って言うのが妥当だろう、って話だった。

 遺産相続の手続きをして、金を引き出して雲隠れ、だろうって。

 とことんくだらない親だった、と思うんだけど、どっかに行ったのなら、それはそれで構わない。

 そう言えば俺も学生時代、印税を全部寄こせとか言われたっけ、まあそう言う親だって言う事は良く知ってた、だから今更驚きもしない。

 一応探して、って言う話をして、探偵を雇わなきゃなって考えてるけど、それも子供達が本来持つべき遺産を返してもらったら、後はどうでも良い。

 俺が気に食わないのは、引き取るふりをして金をかすめ取った、その性根の腐り方だけだ。

「浩ちゃんも好きな洋服選びなね?季節柄の事はちょっと見なきゃいけないけど、後は事由だ。」

「ありがと!おじちゃ!」

 この子達も、苦しいんだろう、辛いんだろう。

 でも、笑顔でいようとしてる、笑っていようとしてる。

 きっと、兄貴達がそう教えたんだろうな、くよくよしてた俺とは大違いだ。

「……。」

「おじちゃ、どうしたのぉ?」

「ううん、何でもないよ、悠ちゃん。洋服買ったら、ご飯食べに行こうか。」

「うん!」

 今はそれを話す時じゃない、この子達なりに、両親の死に向き合ってるんだ。

 俺も、いい加減浩介ばかりの頭の中を何とかしなくちゃな、って改めて思った。

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