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小説家になろう  作者: 藤咲一
私と小説
8/51

7 あけまして、有頂天


〈皆様、あけましておめでとうございます〉

 初詣から無事帰宅した私とお兄ちゃんは、リビングの大コタツに滑り込み、お正月番組をBGMに御節をつまんでいた。

「帰って来ないな。父さん、母さん」

 溜め息みたいな息を吐き出し、お兄ちゃんが言う。

「う~ん。そうだね」

 そう言いながら私は、数の子にかかった鰹節を必死になって除けていた。

「いつになったら帰って来るんだ」

 呟くような言葉。それに私は溜め息をつく。

「どうしたのお兄ちゃん。さっきからずっとそう」

「あ、いや、別に何でもないよ」

 そう言ってお兄ちゃんは、出汁巻き卵をパクリと頬張る。

 珍しい事もあるもんだ。いつもテンション高めのお兄ちゃんが、溜め息をつくなんてホント稀なのに。

「大丈夫?」

「ん? ああ、大丈夫だ。心配するなって、ホントに瑞穂はお兄ちゃん思いの優しい妹だなぁ。お兄ちゃんは猛烈に感動している」

 大袈裟におどけるお兄ちゃん。だけど、いつものキレがない。

 何が大丈夫なのか――私でもわからなかったけど、なんとなくお兄ちゃんは強がっている気がした。

「一応家族だもん。心配はするよ」

 半眼で向けた視線を数の子へ戻す。恥ずかしいからじゃない。そう、自分に言い聞かした。

「ありがとう」

 妙に優しいお兄ちゃんの声。それに私の警鐘が早鐘を打つ。キケン危険。横目でちらりと確認すれば、お兄ちゃんの顔が眼と鼻の先。

「ちょっと待て……こら! 変態!」

 油断も隙もなかった。心配した私がバカだった。いったいどさくさに紛れて何をしようとしてるんだこのドアホウ!

「ん? 何だ違うのか」

 “何が違うのかだ”と押し返す私にそう言いながら、お兄ちゃんが片眉を上げる。それに私は怒鳴った。

「何を想像した!? この変態!」

「そりゃぁ……」

「聞きたくもないわぁ!」



 師曰しいわく。人の関節は全て武器になるそうだ。掌を握れば拳になり、肘を曲げれば肘鉄。膝、首、何でも。筋肉が力を生み出し、関節が伝達――衝撃を標的へ。要はその先に固い物があれば、凶器になり得ると言う。



 コタツで“寝息”を立てるお兄ちゃんを横目に、私は後片付けだ。と言っても、取り皿とお箸だけなんだけど。

 それらを持って、キッチンへ移動。最新鋭の食器洗い機へ丁寧に並べて、洗剤を少し。後はスイッチポンっと。

 静かに動き始める姿を覗き窓から確認すると、冷蔵庫からプリンを取り出した。デザートです。誰にも文句は言わせません。

 いざ、実食。

 と、リビングへ戻ってコタツに着いたその時、私の携帯が鳴った。

「もう、いい所だったのにぃ」

 口を尖らせ携帯を手に取る。あ、何だ。メールか。

 お母さんからだった。

 今現在、お父さんと合流し、これから初詣へ向かうそうだ。これは当分帰って来ないなぁ。ま、お兄ちゃんも“寝てる”し、ゆっくりできる。

 そんな事を考えながら、“わかったよ~。ゆっくりしてきてね”と返信した。

 送信完了から、メールボックスへと画面が変わる。そこで思い出した。千尋のメールへ返信してなかった事に。もう、回線も混雑はしていないみたいだ。

 せっせこ、メールを打つ。

 できるだけかわいく、デコレート。んでもって、送信。っと。よし、完了。

 スムーズだった。だったら、ネットの回線も大丈夫だよね。と、“なろう”へアクセス。執筆済み小説から、アクセス確認へ。

 連載は、あまり変わりがない。少しだけ伸びたかなぁ。じゃあ、大晦日に投稿した短編はどうだろう。ポチっとアクセス。

 って、え、嘘ぉ! 信じられなかった。凄いアクセス。連載の総アクセス数を軽く上回っていた。何度も見なおしたけど、変わらない。リアルな数字に私の心は高揚する。こんなにたくさんの人が見てくれたんだ。嬉しい。嬉しい。

 感想はひとつも書かれていなかったけれど、読んでもらえる事を実感できた。それがとても嬉しかった。

 私は調子に乗って、アクセスランキングへ。ジャンル別、連載短編の別で並べられた前日のアクセスランキング。そこに、私の書いた物語が……

 あった!

 しかも、一番!?

 天にも昇りそうな気持と言うのはこんな感じなのだろう。世界が輝いて見えた。まるで、私を中心に世界が回っているかのよう。今までずっと平々凡々な生活を送って来た私に、初めてスポットライトが当てられた気がする。

 もしかして、私って文才あるのかなぁ。なんて、自画自賛も飛び出した。

『あまり調子に乗らない方がいいわよ』

 もう一人の私が水を差す。だけど無視だ。

 今連載している物語も、完結していないからアクセスが伸びないんだ。きっとそうだ。


 よっし。気合い入れて更新するぞぉ!


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