28 企画前夜祭
[鈴音:掲示板でも書きましたが、チャットの方でもご報告。書き専の皆さま、お疲れ様でした。先ほど、全ての方から脱稿のご報告をいただき、前半生終了です。準備は整いました。トップページの“締め切りまで、あと”は削除させていただきます。色々とプレッシャーをかけてしまい、申し訳ありません。けれど、さすが皆さま、期限までにきっちり仕上げられてくるあたり、力のある作者様方であるなぁと、運営として嬉しい限りです。本当にありがとうございました]
[いみそーれ:こんばんは。いよいよ明日から作品の投稿開始ですか。よかったよかった]
[黒ヤギ:ども、こんばんは。どうやら黒ヤギが最後だったようですな。まあ、なんとか脱稿できまして、鈴音さんに食べられる心配もなくなったって事で、よかったよかった]
[中村:こんばんは~。よかった、よかった。ヤギがちゃんと締め切り守れて]
[黒ヤギ:む? それはどういう?]
[中村:ヤギは前科持ちだかんね]
[黒ヤギ:中村さんからお手紙着いた。黒ヤギさんたら読まずに食べた]
[中村:しーかたがないので、もっかい書こうか? さっきの手紙の詳細全部]
[黒ヤギ:ごめんなさい。もう二度と、二度と失敗しません故。なにとぞ、なにとぞ……]
[中村:まあ、済んだ事だし。その後しっかりフォローしてくれたから。また今度、あたしが主催やるつもりだし、そん時はちゃんとやんなさいよ]
[黒ヤギ:ありがたき幸せ。粉骨砕身、努力仕り早漏]
[中村:てめっ、誤字誤字ww]
[黒ヤギ:誤字なんてありませんよ。早かろう悪かろうは、過去の事]
[中村:少しは慎め、エロ男爵]
[美絵子:こんばんは皆さま。あらあら、とんだエロ紳士ですこと……、しかし、まだエロの具合が足らなくてよ]
[いみそーれ:ちょっと川村さん。いきなり何を? って、最初とキャラが全然違うんですけど]
[美絵子:あら、そうかしら? 紳士筆頭である私が、何か?]
[ミズホ:今晩は、みなさん。どうやら前夜祭は、エロで埋まってしまうのでしょうかね?]
[美絵子:オフコース]
[ミズホ:さすが紳士筆頭。オープンなスケベ具合ですね]
[いみそーれ:>美絵子さん>ミズホさん。あなた達は淑女でしょう? もっとこう、紳士的な発言はありませんか?]
[美絵子:紳士と言う名の変態としてなら、発言をいくつか用意しております]
[ミズホ:同じく]
[いみそーれ:ちょっ、ミズホさんまで……。誰か!? この中で本当の紳士はおられませんかぁ!?]
[ザンジバル:呼びました?]
[中村:呼んでませんww]
[ザンジバル:ええっ!?]
[美絵子:こうなったら、彼を召喚するしかありませんね]
[ミズホ:わかりました。では、パワーをメテオに……]
[山咲:いいですとも!]
[黒ヤギ:いいですとも!]
[中村:いいですとも!]
[美絵子:山咲さんタイミング良すぎww。それにネタも知ってるんですね>いいですともトリオ]
[ザンジバル:いいですとも!]
[美絵子:タイミング悪>ザンジバルさん]
[ザンジバル:タイムラグなのに……]
[山咲:こんばんは、皆さま。>ミズホさん。この前はすいませんでした。ちょっとボーっとしてまして……]
[ミズホ:いえいえ、気にしないでください。それより良かったですね]
[山咲:はい。ありがとうございました]
[のぶ子:呼ばれて飛び出て、じゃじゃじゃじゃぁ~ん。大江山のぶ子でおじゃるよ]
[鈴音:結果変なのが召喚された。しかもネタ古っ]
[のぶ子:やったー! 待ちに待った時が来た! さあ、腕が鳴るぜェ、腹も鳴るぜェ、読むぜ読むぜ!]
[鈴音:あのねのぶ子、日付間違ってるから。まだそれ明日だから。お腹すいたのなら夜食食べてね]
[のぶ子:およ? しまった……、先走った。って、夜食は太るから、敵だから]
[ザンジバル:でも楽しみですね。明日には出そろう訳だ。僕も感想残しても良いですか?]
[青244:皆さま、こんばんは、そして執筆お疲れさまでした。あと数時間で解禁かぁ。楽しみ楽しみ。今日は寝られないかもぉ、ティッシュOK、水分補給OK。さあ、いつでもござれぇ。
>ザンジバルさん。良いと思いますよぉ。そっちの方が書き線の方々も嬉しいのでは?]
[鈴音:>ザンジバルさん。ええ、感想はどしどし書いてください。でも投票はダメですよ。読み専さんの特権ですからね]
[ザンジバル:了解しました]
[鈴音:おおっと、いよいよ投稿まで一時間を切りました。と言っても、日付が変わってすぐに投稿する必要はありませんからね。普通は皆さん寝ている時間ですし。問題ありません。一応予定としてですが、来週には結果発表です。読み専の方々には無理をさせてしまい申し訳ありません。が、よろしくお願いします。投票の詳細は鈴音宛てメッセージでどうぞ。もし、都合の悪い方がおられれば、ご連絡もそちらでお願いします]
[のぶ子:みwなwぎwっwてwきwたwww]
[鈴音:ほう。なら、締め切りは厳守できるのだな、のぶ子よ]
[のぶ子:守れなかったらどうなるの?]
[鈴音:のぶ子だけペナルティ]
[のぶ子:ええ!? あたしだけ!?]
[黒ヤギ:のぶ子は墓穴を掘ったのだ]
[いみそーれ:か、カオスだ……]
ログが加速していくチャット――にぎわう会話の中に依然、陣内誠司は入ってはこない。もちろん続き番号で二ケタを超えた雑談掲示板にも彼の書き込みはなかった。私の予想通り、結果発表まで姿を見せないつもりだ。
今になって思う。もし、あの時、私があんな事を言わなければ……。もし、あの時、ケンカにならなければ……。彼もきっと、この中で笑っていたんじゃないだろうか。
でも、わからない。彼の本心が。
企画に誘った理由は想像できる。たぶん今回私が体験した事を経験させることだったんじゃないかと思う。実力テストだと言った理由も同様。
企画にある締め切りや文字数制限とか縛りとか――技術を深める面でリミットやボーダー。最良の言葉選び。挑戦しなければ、気付けない事。誰かの意見を聞かなければ、わからない事。それら全部ひっくるめて、検査テストする。自分自身を、以前の自分と比べて、どうなっているのか、それを知る経験――それへの挑戦だったんじゃないかって思う。
現にそうだった気がするし、勉強になった事は確かだし、チャットや掲示板で開かれる楽しい会話の中に私がいる。
今回の企画へ参加できたことで、私が得た物は、とっても多い。十分すぎるくらいだって言ってもいい。けど……。
彼が参加している理由って何なんだろう?
――「僕に感想がない。だから僕の言葉は聞けないと、そう君は言いたいのか?」
“勝負”――“自信”――
チャットとは別窓で開いた安藤一樹の“なろう”ユーザーページ。新しく投稿されている、十万文字手前、推理カテゴリーの短編。
やっぱり……。そうなんだろうか……。
だとしたら、勝負とか、もう、どうでもいい。
たまらず充電器へ繋いでいた携帯電話を手に取り、開く。と、ちょうどその時、目に映ったデジタル時計が全てゼロに変わり、日付が、ひとつ増える。
いよいよ“涙の理由を聞かないで企画”の参加作品が投稿される日に――変わった。