表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

5.宴が終わって



卒業パーティーも終わって、私はその後の事についてお父様から説明を受けた。


「男爵令嬢は、北の修道院送り、カリスト殿下は、現在、南の塔に幽閉されている。騎士団長の息子は、継承権剥奪の上、領地送りになった。」


当然と言えば、当然の処罰なのだが……。


「お父様、男爵令嬢は、いつまで修道院へ?」

「どうした?気になるか?」

「彼女は、夢見がちなお馬鹿さんだと思うのです。もし、双方が望むのであれば、騎士団長のご子息と結ばせてあげてはいかがでしょうか?あのご子息も、今回の件で、結婚相手はもう見つからないでしょう。」

「ふむ。そうだな。あの家には次男がいるので、家を継ぐことについては問題ないが、母親が長男を可愛がっていたので、かなり嘆き悲しんでいるようだ。」


それならば、嫁姑問題が起きてしまいそうね。


「彼女と関係があったのは、彼だけでしたか?」

「殿下は、キスまでだったそうだ。」

「まぁ、奥手でしたのね。では、実際に愛し合っていたのは、2人だとお伝えしてはどうでしょうか?殿下と婚約した訳では無いですし。」

「納得するかは分からないな。どうして令嬢に肩入れするのだ?」

「結果がわかっていて、止めなかったのは、私の我儘でしたから。少し申し訳ない思いがしています。」

「良いだろう。お前がそれで気が済むならば、私が話を取り持ってやろう。だが、殿下は良いのか?」

「殿下には十分お仕えしましたから、もう良いですわ。」


私はお父様と笑いあって部屋に戻った。


さて、これで私は婚約も解消され、自由になりましたわ。何をしようかしらね。


卒業パーティーの翌日から、学園は長期休暇に入っていて、時間はたっぷりありますもの。旅に出ようかしらね。

そういえば、王家はどなたが継がれることになるのかしら?カリスト殿下は、王妃様のただ1人のお子様。

こちらに迷惑が及ばなければいいのですけど。



******



王は、彼の執務室で一人の青年と向かい合っていた。


「状況はそなたも理解しているだろう?」

「同じ学園内ですから、当然ですね。」

「ならば、次の王太子は……。」

「聞きませんよ。今まで隠し続けたのですから、最後まで隠し続けるのが、正しいのでは?」

「国家の一大事なのだ。」

「あのような息子に育てた事が、国家の一大事だったのですよ。」


王は青年の底冷えするような声に打ちのめされるように、俯いた。


「努力は……した。」

「誰が、ですか?」

「それは……。」

「あなたの提案は、私にとって、何の益もない。」

「頼む。何でもするから。」

「嫌です。」

「そなたの母は優しかったのに……。」

「母ならきっと気にもしませんよ。」


王は、ゆっくり身を起こすと、その場に跪いた。


「頼む。そなたしか。」

「血の繋がりが必要ですか?必要なのは、この国を良くしてくれる人材のはず。違いますか?」

「わしは……。」

「さようなら。二度と会いません。」


彼はその言葉通り、振り返りもせず立ち去って行った。閉まるドアの音が無常に響く。


「やはり無理でしたね。」

「公爵。冷たいでは無いか。わしだけに相手をさせるなど。」

「私が関わったとしれたら、不首尾を私まで王妃様に叱られてしまいます。それはお断りですよ。」

「此度のことは、王妃も自分の罪と反省しておる。」

「ほお。我が娘に今まで散々迷惑をかけて、今更ですか?」

「そのように言わんでくれ。」

「それで、どうされるのですか?」

「王妃と相談して、決めた。これは決定事項だ。」

「伺いましょう。」

「反対は、認めぬぞ。」

「嫌な予感しかしませんね。」

「ミュリエル・ファインバッハを王妃とする。この国を継ぐものは、彼女が夫と認めたものだ。」


ファインバッハ公爵は、無言で右拳を振るった。


小気味いい音がして、嬉しそうに告げた王が床に転がった。


「あなた達は……。すぐに取り消してください!!」

「それはできん。先程鈴を鳴らしたであろう?」


確かにあの青年が出ていった直後、王が鈴を鳴らした。公爵は、自分に対する入室の合図だと思ったのだが、違ったらしい。


「小狡いことにばかり頭が回りますな。昔と全く変わらない!」


王と公爵は、子供の頃からの腐れ縁で、いつも王が公爵に迷惑をかけては許しを乞うという間柄だった。


「もう、正式に発令された。覆すことはできん。ミュリエルの為に、正式交付は、来月の10日にする事になっている。」


長期休暇明けと言うことかと、公爵は唇を噛んだ。

いっそ、他国へ逃がすか?


「隣国にもその旨通知するのでな。逃がさぬわ。」

「私はあなたが、大大大嫌いです!」

「そうか?わしは好きだがな。優秀な人間はそばにいるだけで楽しいのでな。」

「グッ。」

「わしのおすすめは、先程の男だ。よく見極めるのだな。」


公爵は、背後から響く笑い声を背に部屋を出ていった。


王は、痛む腰と頬を撫でながら、その後ろ姿を見送った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なんだ、得意気に振る舞ってたのに国王にいいようにやられて、娘を守ることも出来てないじゃないか。公爵は。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ