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13.結婚相手の条件



私は、ジェイクとの討伐依頼を終え、屋敷に戻り、お父様にたっぷりとお小言を食らった。


護衛を撒いて出掛けたのだから、仕方がない。覚悟の上だった。でも、得たものは……。


ジェイクの二刀流、私もやってみたかった。もう少し時間があれば、習いたかったけど、あれ以上、家を留守にするのは無理だったから仕方ない。


せめて、彼の連絡先を聞いておけば良かった。ギルドで教えてくれるかしらね。

私はぼんやりと窓の外を眺めた。1ヶ月以内の婚活。

そんな短時間で知り合った人と、結婚。


結婚するなら、強くて、優しい……そう、ジェイ……。


え?今、私、何を考えたの?ちょっと待って。

触れた頬が熱い。


でも、ジェイクは駄目。私が選ぶ人ならば誰でも良いとはいえ、平民は選べない。きっと相手に迷惑をかけてしまう。苦しめてしまう。貴族社会は、身分の低いものに寛容な世界じゃないから。


私を選んだ事を後悔させたくは無い。選ばれた事を恨まれたくない。


だから、平民のジェイクだけは選んでは駄目。絶対に。

たとえ、彼以上に惹かれる人がいなくても……。



******



アルフレッド・ファインバッハは、父親と向かい合わせに腰を下ろし、窓の外、未だに灯りの消えない部屋を見つめ、ため息を吐いた。


「父上、気丈にはしていますが、やはり王妃の件、ミュリエルに大きな負担になっているようですね。」

「それは、そうだな。」


元々、王妃となるべく教育を受けてきた妹だ。覚悟はあったはず。だが、それは、王の伴侶となる決められたコースを辿る道で、自分の伴侶を王とする道ではない。

妹の決定がこの国をどう変えてしまうか分からないのだ。


「今からでも、カリスト殿下に、王位に着いていただくことは出来ないのでしょうか?」

「無理だな。王太后が生きておられた時ならば、それもありえただろう。しかし、今は……。」

「父上、私は、どうしたらいいのでしょうね。ミュリエルを助けてあげたいのに、あの子に相応しい相手を思いつかないのです。」

「それは、私もだ。評判の良い子息を調べているが、今回の件で、評価を落とした者が多くてな。」

「どういう事ですか?」

「彼らは面白がって、はやし立て、あの令嬢が間違っていると気づきながら、ミュリエルの評価が下がるのを楽しんでいたようだ。」

「な、どうして!」

「優秀で、表情をあまり変えないミュリエルが、泣いて自分に縋ってくるのを待っていたらしい。婚約破棄になれば、有利な条件で、自分の婚約者にしようと狙っていたようだ。」

「まさか……。」

「大人しそうと、思われたんだな。」

「ええーーーーっ、なんですか?その誤解!」

「世間の評価はそうなんだ。」


ありえない。今でもあの練習という名の、扱きの地獄は忘れない。あの妹が縋る?誰に?なぜ?

だから、世間の評価は当てにならない。


アルフレッドが間もなく結婚する相手は、伯爵令嬢だが、彼自身で相手を見極めて決めた人だ。


そう、彼は偶然見かけ、心惹かれた彼女を、その屋敷の見習い侍従となって、人となりを自分の目で確認した。

その上で、彼女にプロポーズして、受け入れて貰ったのだ。


その話をミュリエルに聞かせたら、なぜか引かれたが……。

さらにその上で、彼女に侍従の振りをした事は死んでも話すなと釘を刺された。なぜだ?


「父上、私達が相手を選ぶのは、ギリギリまで待ちましょう。あの子の選択に任せた方がいい人と巡り会えるかもしれませんよ。」

「そうであって欲しいな。」


二人はようやく窓から灯りが消えたのを見て、ソファから身を起こした。



******



私は、結局、あの1回しか冒険者として依頼を受けに行けず、ジェイクとも会えないまま、長期休暇が終わろうとしている。


パーティーには数回参加したが、いつの間にか騎士団長の息子が倒されたのは、私のドレスの裾を踏んで、自ら転んだという話になっていて、それを面白おかしく話しながら、擦り寄る男性にうんざりした。



「どうしよう。告示の日が来てしまうわね。」


独り言の増えた私に、昔からの侍女のマーサが、黙って蜂蜜と少しばかりのブランデー入のホットミルクを差し出してくれた。


「お心に叶う人はおられませんでしたか?」

「うん。」

「では、そういう人が見つかるまで、無視なさいませ。お相手を決めるのは、お嬢様でしょう?」

「いいの、かな?」

「かまわないのではありませんか?問題があるようでしたら、お嬢様が王になられてはいかがですか?」

「ふふっ。無茶苦茶言ってるわね。」

「そうですか?私はお嬢様さえ良ければ、構いませんわ。」

「ありがとう。マーサは何時だって私の味方ね。」

「はい。」


そうね。告示したからと言って、直ぐにとは決まっていない。少し待ってみよう。


でも、ジェイクが頭から離れない私は、どうしたらいいのかしらね。


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