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10.ジェイクの独り立ち



ジェイクは思った。このオヤジ達について行ってはいけないと。高々8歳だが、そう思ったのだ。


最終的に鍛冶屋に弟子入りしていた、父の弟弟子にあたる男の一喝でジェイクはその男と鍛冶屋で面倒を見られる事になり、オヤジ二人の懇願で貴族としての振る舞いや様々な知識を覚えさせられる事になった。


そのせいで、付き合わされたこの村の悪ガキ達は、皆、妙に立ち居振る舞いが上品で、頭が良いと、結婚相手には不自由しないのだが……。



ジェイクは鍛冶屋としても腕を上げ、弟弟子の元剣聖から剣も学んだ。

ジェイクが12になると、元剣聖の師匠は、時々王都に出かけるようになった。最初こそ面倒そうだったが、そのうちにイソイソと出かけるようになった。


「師匠、女か?」

「違うわ!何ませたことを言っている。」

「村のリンダがそう言って泣いてたぞ。」


リンダは出戻りの女で、師匠に想いを寄せている。気づかないのは師匠だけだ。


「ほ、本当に、リンダがそう言ったのか?」

「そうだ。女を泣かせる男は最低だぞ。」

「はー。お前、その台詞誰に習った?」

「宿屋のガイ。」

「あの野郎、今度しめてやる。ジェイク、変な言葉を覚えるなよ。」

「女は弱い。弱いものをいじめるのは駄目だ。」

「まぁその通りだがな。」


そう言うと、師匠は、ニヤリと笑った。


「弱くない女もいる。」

「そうなのか?」

「そうだ。あと数年もすれば、俺も敵わなくなる。お前も勝てないだろうな。」

「そんな女がいるのか?」

「会いたいか?」

「うん。」

「そのうち会わせてやるよ。気が向いたらな。」


ジェイクが15になった頃、師匠は王都に行かなくなった。師匠では勝てなくなったのと、相手が学園に入学する準備で忙しくなったせいだった。


(結局、会えなかったな。)


師匠は、相手の名前を決して教えてはくれなかった。

そして、彼も父親のように鍛冶屋と冒険者を兼ねながら、独り立ちできるほどに成長した。


そんな時、王と祖父から学園に入学するよう連絡が来て、ジェイクは学園に入学した。

もしかしたら、その令嬢に会えるかもとの期待があったのは否めない。



だが、学園に入ったら、そんな令嬢は見当たらず、入学は、この学園ではなく、他国の学園だったのではと、意気消沈する毎日。


学園で目立たずに暮らしている内に、馬鹿な女が目に付いた。王妃の座を狙っているのか、あざとい表情で王子と側近を狙い始めた。

王子は、ジェイクの従兄弟だ。まさかあんな手に乗るはずは無いと思ったのに……。


(お前なぁ、婚約者がいるだろうが。彼女はどうするつもりなんだよ。)


苦々しい思いでいたが、当の婚約者である公爵令嬢は、気がついていないのか、気にする素振りも見せない。

嫉妬で馬鹿な真似をするのを期待した、馬鹿女には気の毒だが、相手にされていないだろうと思った。


まあ、結局は、一時の気の迷いで落ち着くと思い、気にするのはやめて、冒険者稼業に励んでいたのだが……。


相手にされないのに業を煮やした馬鹿女は、公爵令嬢の悪行を捏造し始めた。さすがにこれは不味いと公爵令嬢に忠告しようと思って、気がついた。


公爵令嬢は、態と好きにヤラセているのだと。


風にも折れてしまいそうに見える、華奢で淑やかな彼女は、ジェイクが思うほど、弱い人間では無いのか、それとも、彼女の傍に計算高い男がいて、彼女を操り、王家との破談を狙っているのか。


だから、馬鹿女には一言注意をした。

王子は、取り巻きが多くて、忠告出来なかった。


そして、起こるべくして起こった、卒業パーティーの事件。やはりとしか思わなかった。

だが、ここでジェイクが分かったことは、公爵令嬢がこの事件が起こることを予見し、報復を用意していたと言うこと。

彼らは公爵令嬢の手の平の上で転がされたのだ。


公爵令嬢、カッコイイな。それがジェイクの感想だった。


王は思った通りジェイクに王位を継いで欲しいと言ったが、今更だ。確かに教育は受けたが、それ以上は真っ平だ。


それでも、家族としての情がない訳では無い。

両親が死んでから、コソコソと隠れて姿を見せるあのオヤジ達の事が、ジェイクは嫌いではなかったから。


(お嬢様のお世話ぐらいなら、安いものだ。)


不機嫌な顔を装いながら、彼は頼みを聞いたのだった。


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