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1.断罪からの始まり

こんにちは。お読み頂きありがとうございます。



王宮の大広間。煌びやかな飾りに、色とりどりに着飾った貴婦人達。

その中央に立つ男は、誰よりも高級な服を纏った貴公子で、その腕には涙を流す美少女を抱きかかえている。

そして、彼が指さして声を荒らげる相手は、


私、ミュリエル・ファインバッハ公爵令嬢だ。


「ミュリエル、そなたの悪行ももう看過できない。婚約者と思えばこそ、そなたの反省を促し、行いを正す機会を与えてきたが、それも全て無駄だった。


私、カリスト・ドリアヌスはそなたとの婚約を破棄する事をこの場に集まるものの前で宣言する。」



私は、はぁと大きくため息を吐いた。どうしようか。もう一言だけ言って、チャンスを与える?

私は、俯きながら、その場に立つお父様にそっと目を向ける。

あら、どうしようかしら。お父様ったら……。


「ミュリエル、何か申し開きはあるか?せめてアリアンヌに対する謝罪を告げる機会は与えてやろう。」


私はゆっくりと顔をあげて、カリスト殿下の顔を見つめた。こんなに酷い場面を作った男は、私と目が合うと目を背ける。

周りのざわめきの中には、私を蔑んで笑うもの。これで落ちぶれれば、私を手に入れられるかもと舌なめずりするもの、そして、彼の言う事を信じられずに動揺するもの等。


そうね、見た目でならば、彼が抱きしめている女より、私の方が余程庇護欲を掻き立てる見た目でしょうね。


ほっそりとした儚げな見た目に、淡い烟るようなブロンドに水色の瞳。妖精姫とも称される私。

抱きしめられているのは、男爵令嬢のマリアンヌ・ドルチェ。ピンクブロンドの甘ったれた喋り方をする、私と違って胸の大きい女。

もしかして、私はあの胸に負けたのかとも思ってしまったわ。


「私はどうして謝罪をしなければならないのでしょうか?教えてくださいませ。」

「愚かな!私がそなたのした事を知らないとでも思うのか?確かにそなた自身が手を下したのではないのだろう。だが!周りの人間を弱々しい態度で操り、マリアンヌに害を与えていたのは、間違いない。」

「私が何をしたと仰せですか?」

「まだシラを切るのか?私はそなたがそのようにふてぶてしい態度をとるとは思わなかった。」

「殿下は、私が正しいとは、思っても頂けないのでしょうか?」

「マリアンヌがそなたに被害を受けている事を、耐えきれずに訴えているのだ。」

「お調べにはなられましたか?」

「調べるまでもない。マリアンヌは傷ついてこのように泣いている。何度も繰り返された虐めに耐えかねたのだ。わかるか?」

「涙を流せば信じて頂けますか?私は何もしておりません。」


私は、ちょっと頑張って、涙を流した。頬を涙が伝う。


「ミュリエル様、そのように誤魔化すのは、酷いです。あなた様が反省して謝罪し、今後私達に近づかないようにしてくだされば、許して差し上げます。どうか謝ってください。」


そろそろ馬鹿馬鹿しくなってきた。ねぇお父様、もう良いですよね?私、ちゃんとチャンスを差し上げましたよね?

お父様が笑いを収めて頷くのを見て、拳を握った。


「さて、殿下、今日のこの騒ぎは、陛下のお許しを得てなさったのですか?それとも許可も得ずになさいましたか?」


先程までの少し弱々しい喋り方からは、想像もつかないキツめの喋り口調にカリストが動揺する。それは彼の後ろに控える腰巾着も同じ。


「それは……。」

「それは、何ですか?陛下のお許しを得ずに、こんなに好き勝手なさったと言う事ですか?」

「好き勝手ではない!真実の追求だ!」


後ろにいた騎士団長の息子が前に出てくると、私の肩を掴んで、床に跪かせようとする。

彼が伸ばした手を逆に掴んで引き寄せ、脚を払って床に引き倒し、腕をひねり揚げながら、膝で押さえ込んだ。


周りが揃って息を呑む。


「いきなり暴力に及ぶのが、真実の追求ですか?」


騎士団長の息子の首に軽く手刀を当てて、気絶させて、立ち上がる。あら、少し刺激が強かったかしら?

カリストもマリアンヌも少し顔色が悪いわ。


「殿下、お返事は?」

「……し、しかし、そなたの行いは……」

「はぁ。まだ言っているのですか?本当にどうしようもない。お父様、記録球をご用意くださいませ。」

「良いとも。では1つ目はこれだな。学園でのパーティーの前日にドレスが破られたと言うもの。」


お父様が記録球を翳すと、その時の情景が浮かび上がる。

嬉々として、ドレスをハサミで切り刻むマリアンヌ。


カリストが驚いた顔で腕の中のマリアンヌを見つめている。だから調べろと言ってあげたのに。


次に翳した記録球は、周りを見回し、人気が無いことを確認してから、バケツの水を被り、足音が近づくと、悲鳴をあげて、泣き崩れ、助けに来た人に、私にお仕置をされたと訴えるマリアンヌ。


マリアンヌがブルブルと震え始めた。


最後の記録球は、私の後ろを付け回し、階段を上がるのを見届けてから、悲鳴を上げながら、たった3段を転げ落ちて、殿下の側近に救われ、私を指さしながら、突き落とされたと訴えるマリアンヌ。

そういえば、この時の側近も騎士団長の息子だったわね。


あら、お父様、まだもうひとつお持ちでしたの?


お父様が最後に見せて下さったのは、騎士団長の息子とマリアンヌの逢瀬。あら、初めて見るわね。

あらあらあら。え、いいの?この場で皆さんに見せたりして。あら、彼の手がドレスの胸に。きゃあ!


令嬢達は、悲鳴を上げながら、指の間から、ご覧になっているわ。そうよね。これはちょっと見るのも恥ずかしいわ。


そして、大騒ぎの中、お父様の指示の元、騒ぎは無事に収束した。


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