盲信の果て
ライアという指導者が現れた。
彼は世紀末の地球を救うと宣言して2999年、星間移民船やコロニー開発に力を入れた。
僕はアカデミーの学生で、周囲の学生のライア教とでも呼ぶべき盲信者の増加を目の当たりにしていた。
「あなたも王立軍に入ってライアのために命をかけない?」
久しぶりに会ったミアは熱に浮かされたような目で僕にそう言った。
僕がかぶりを振ると、
「意気地なし!」
と言い残して他の男を口説きに行ってしまった。
確かにライアは救世主かもしれない。だが、僕の中で何かがライアを盲信することを危険だと告げていた。
8月の異常気象で地上は混沌の渦中にあった。
さまざまな国がいろんな思想を掲げて阿鼻叫喚の闘いを繰り広げていた。
僕は比較的穏健派な組織に所属している。しかし、誰にも内緒にしていた。
宇宙へいろんな勢力が旅立とうとしていた。
僕も家族と一緒に民間の宇宙船に乗ってコロニーに渡った。
「ミア!」
軍服姿のミアを見かけて、駆け寄った。
「地上で小競り合いが起きていて、全くライアの考えに耳を貸さず、兵力で蹂躙しようとしている国があるの」
「ライアはそれをどうするんだい?」
「徹底的に殲滅するつもりよ」
「穏便な方法は取れないのかな?」
「武力には武力よ!」
ミアの目は暗い炎を宿していた。
「君は変わってしまった」
「ライアは絶対よ!」
昔の穏やかな彼女、無垢な彼女を思い、そっとため息をついた。
王立軍が月を地上に落とす計画を立てているとニュースになった。主要人物の中にミアも紹介されていた。
若くてきれいでライアに盲信的なミアはプロパガンダのいい傀儡だった。
僕は穏健派の正規軍に登録させられて、戦闘機の操縦を訓練することになった。
「王立軍の月を地上に落とす計画を阻止しよう!」
異存はなかった。
月にブースターを設置している王立軍を攻撃した。彼らは反撃してきた。
戦争が起きている!
まるで悪夢でもみているみたいだ。
ブースターの建設区域に潜入すると、死体がゴロゴロ転がっていた。僕は目を背けて先を急いだ。
「ミア!」
王立軍の旗を持って行く手を遮る少女。
僕はひるんだ。
ミアの銃が火を吹いて、僕は腹部を撃たれた。ミアは躊躇しなかった。
僕が撃たれたのをきっかけに正規軍の仲間がミアを集中攻撃した。
「ライア、バンザイ!」
ミアの絶叫が響いた。
僕は薄れてゆく意識の中で、絶命したミアを哀れに思った。