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荒野の夕陽


 その国は長い内乱が続いた。

 緑豊かな大地は荒れ果て、人心もそれに続いた。


 統治していた者、された者、どちらも血を流し倒れていく。

 国を守っていた神は、惨状に呆れたのか、何処かに去った。


 神に仕えていた一族だけは、ひそかに生き延びた。

 もう一度、神を呼び戻すのだ。

 豊かで平和な国を、造り直すために。


 その一族に、方法論は伝えられていた。

 神は、音と色と形に宿る。

 だが、それらを正確に読み取り、神に捧げる能力を持つ者が、一族にはもう、いなかったのである。


 一族の長は決意する。

 神を呼び戻す能力者シャーマンを、この世界に招くことを。


…………


 芹菜は目を覚ます。


 薄暗い。

 夕暮れなのか、明け方なのか。今、何時だろう。


 身体が痛い。

 痛みを感じて、芹菜の意識は覚醒する。


 ここは何処だろう。

 今まで、寝ていたのか。


 芹菜の目の前に、目を閉じた少年の顔があった。

 体を起こした芹菜に、キーンという頭痛が走る。


 少年。

 少年を、見た。


 バイクに乗って見た景色だ。


 少年は、路上にいた。



「ああああ!!」


 芹菜の声に少年の瞼も反応する。


 芹菜の悲鳴に近い声は、琉生のまぶたの裏に、強いオレンジ色を与えた。


 何回か瞬きを繰り返し、琉生は目を開けた。

 薄暗い天井から、オレンジ色の光の筋が、何本か落ちている。


 丸みを帯びた天井を眺め、琉生はぼんやりと思う。

 自分の部屋と、違う……


 自分の部屋ではない?

 すると、ココはどこ?


 聞こえたのは薄い紅色。

 若い女性の声だった。


「君、大丈夫?」


 琉生の顔を覗き込む視線。

 薄暗い中でも、視線の元の瞳には、強さがあった。

 琉生はコクコクと頷く。


 頷いて琉生はハッとする。


 交差点にいたはずだ!

 交差点で、眩暈を起こして


 それから……


 それから、どうした?


 琉生は思い出す。

 動けなくなった琉生に向かって、オートバイが走って来ていた。


 何かを掴もうとして、琉生は手を伸ばして……

 そのあと、どうなった?


 女性は琉生を抱きしめた。


「良かった! 生きてる!」


 生きてる?


 そうか。ぶつかって、倒れて、どこかに運ばれたのか。


「私は芹菜。宗岡芹菜。君は?」

「羽生琉生、です。ここは、どこですか?」


 二人は床に座り、周囲を見渡す。

 丸い天井と、布に囲まれた、テントのような場所。


 床には薄い布が敷かれている。

 布の四隅には、ろうそくか何かが置かれ、チロチロと炎が揺れていた。


「わたしも、今、目が覚めたの。どこだろうね、ここ。病院、じゃないのかな……」


 テントの隙間から、声が聞こえる。

 芹菜と琉生は、恐る恐る、外へ出た。


 いきなり目に飛び込んできたのは、杏色の大きな夕陽。


 テント前には二人の子どもが、何かで遊んでいた。


「泣き声……」

 琉生がぽつりと言った。


「えっ何?」

「あの夕陽から、泣き声がする」


 二人の子どもは琉生と芹菜に気付き、一人が駆け出して行った。

 残った一人は、小学一年生くらいの背丈の少女だった。


「”#$☆%%!&♪&’‘@」


 少女が話しかけてきたが、芹菜には何を言っているのか、全く聞き取れなかった。


 琉生は答えた。


「僕はルイ。こっちのお姉さんはセリナさん。ここは、どこなの?」


 なんで、この琉生という少年が聞き取れて、自分には聞き取れないのか、芹菜はまだ分かっていなかった。


「そう、ここは、ガルダと言う場所なんだね」

 琉生と少女は会話を続けていた。


 駆け出して行った子どもが、大人を連れて戻ってきた。


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