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7話 二人の出会い

“この程度で持たぬとはまだまだのようだな”


(またここ。お前はいったい誰なんだ!)


 暗がりに一人、広い空間に先ほど聞いた声だけが響き渡る。


”まったく。やかましい主人だ。“


 すると、奥の方からこちらに近寄ってくる気配が感じた。徐々に姿が明らかになる。


(お前は...。)


 暗がりの奥から現れたのは大きな漆黒の獅子だった。


”我が名は獅子宮のレオ“


 獅子宮?黄道十二宮の獅子座の?


(いったいどういうことだ!?なんで星座が実体化して話ができる?)


”我らは主人の力の一端。スキルといった方がわかりやすいか?“


(スキル?)


 思い当たる節があった。

 ステータスボードに映し出された〈?????〉の表記。それがこいつだっていうのか?


(でもなんで急に。)


”呼び起こされたからだ。“


(それはどういう...)


”時間のようだ。今の主人では我らを十分に扱える力はまだない。力をつけよ。さすれば必然と理解するだろ。“


(おい!ちょっとまて!まだ...)


 意識が朦朧としてきた。睡魔に近い。徐々に意識が薄れていき体に力が入らず、スーッと切れた。





 意識が徐々に浮上してくる。重い瞼を開け掠れてる視界が鮮明になってきる。そして、最初に目に写ったのは黒髪で猫耳がついた少女の姿があった。


「あ!大丈夫ですか!?」


 慌てた表情で少女が見下ろしていた。そして、後頭部に弾力を感じる。そう、膝枕だ。


「あ、ああ。いったいなにがあった。」


「覚えていらっしゃらないんですか?オークを倒した後急に倒れて、こんなボロボロになるまで戦って。私、私、死んでしまったんじゃないかって...」


「大丈夫。ちゃんと生きてるよ。」


 うっすらとだが覚えてる。瀕死でオークキングに立ち向かった時、声が聞こえた。声のままに口を開くと黒い剣が現れて気がつくとオークキングを倒していた。それとさっきの獅子あれはいったい。


「私なんかのためにここまでしてくださる人今までいませんでした。私はみんなから嫌われてたから。」


「こんな可愛い子のためだったら何度だってするさ。」


「か、かわ!?」


 トオルの言葉に顔を赤く染める少女。それを見て微笑ましく思ったのか口を緩めて笑った。


「君の名前は?」


「私は猫人族のステラです。」


「俺はトオル。ステラが無事でよかった。」


 その言葉に目元が緩み涙を浮かべるステラ。頬から流れる涙を横になっていたトオルがそっと手で拭き取る。


「トオル様はとてもお優しいのですね。こんな醜い私にもそのような言葉をかけてくださって。」


 やけに卑屈だな。


「そういえばステラはなんでそんな格好でこんなところにいたんだ?」


 すると、ステラは深妙な顔つきで話してくれた。


 ステラはここから西にある獣人の国の小さな村で暮らしていたらしい。そして、2週間前村に盗賊たちがやってきて村を襲っていったらしい。


「私は忌み子で盗賊たちも気味悪がり、私だけヒューマンの奴隷商人に売られました。その道中、あのオークに襲われてなんとか私だけ逃げてきたところトオル様に助けていただきました。」


「忌み子?」


「この黒い髪は私たちの間では不幸の象徴。生まれた時から父はおらず母は私を産んで死んでしまいました。なので、村では一人で村の隅で暮らしていました。」


「そうだったのか。それでこれからどうするんだ?」


 トオルが聞くと無理に笑顔を作り、少し言葉に詰まった後話し出した。


「帰る場所もありませんし、誰かといると不幸にしてしまうのでなんとか一人で生きていこうと思います。」


「それなら俺とこないか?」


「え?」


 思いもよらぬ言葉がトオルから提案され呆然とするステラ。


「俺さ。こっちに来たばかりで一人なんだ。けど、せっかく冒険するなら誰かと一緒の方が楽しいだろ?ステラみたいな可愛い子なら尚更だ。」


「で、でも私といるみんな不幸に...村の人や奴隷商の人たちみたいに。トオル様だってこんなボロボロになって。」


「ちゃんと生きてるだろ?それに俺こう見えてもちゃんと強いんだぜ?」


 ニコリと笑うそのトオルの顔に少し頬を赤く染めるステラ。


「本当にいいんですか?」


「ああ。俺と一緒に行こう。ステラ。」


 ただ、俺は彼女を自分に重ねてるだけなのかもしれない。誰からも認めてもらえず孤独な彼女を見捨てることがどうしてもできない。偽善かもしれない。でも、誰かに必要とされ認めてもらえる喜びを彼女にも知って欲しい。そのためなら。


「はい!」


 ♢


「それじゃあそろそろいくか。」


 ボロボロの体はあの後、ポーションを飲んで少し休んでようやく動けるようになった。


「その格好じゃあれだからこれ着て。」


 そういうとマジックポーチからマントを取り出しそっとステラに着せた。


「あ、ありがとうございます。」


 その後死んだオークキングの遺体をマジックポーチにしまって森を抜けた二人はダカールに到着した。ステラは身分証を持っていなかったため、通行料を払うことで入ることができた。


 ダカールに着く頃にはもう日が沈みあたりに夕焼けの光が差し込んでいた。


「これだとギルドの受付も終わってるな。明日改めて尋ねるか。」


「すいません。私のせいで...。」


「ステラのせいじゃないよ。それより、これから俺が泊まってる宿に行くけどいいか?生活用品は明日になるが。」


「い、いえ!私なんかのためにお金を使わせるわけには!」


「なあ、ステラ。その私なんかとか私のせいでとかやめないか?俺はステラのためにやってあげたと思ってやってるだけなんだ。だから嫌じゃないなら断らないでくれ。」


「でも、助けてもらってお金まで出してもらったら私、返すものが....。」


 さらに落ち込んだ表情を見せるステラにしびれをきらしたトオルは腕を掴んで自分に引き寄せた。


「いいか。一緒に来てくれって頼んだには俺だ!だから、ステラは気にしなくていい!どうしてもっていうならこの先も俺と一緒にいてくれ!」


 街中で大声で叫んだせいで周りから視線を集め、情熱的な言葉に周りが囃し立ててくる始末。


「それって....。」


「あ、いや!そういう意味じゃなくて...。くそ!」


 つかんでいたステラの手を引っ張って野次馬の包囲を全力で走り抜けた。

 そして星海の宿にたどり着いた二人は息を切らしなら互いを見て少し気まずい気持ちになってしまった。


「ただいまあ。」


「トオルさん!おかえりなさい。」


 配膳をしていたエルザがトオルに気付いて歩み寄ってきた。


「どうしたんですか!?そんなボロボロで!」


「ちょっとな。」


 心配かけまいと言葉を濁した。そして、後ろに控えていたステラがそっと顔を覗かすとそれにエルザが気付く。


「トオルさん。その人は?」


「ああ。この子はステラ。実は...。」


「お兄ちゃんの彼女?」


 二人に気づいたエイミーがひょっこり現れた。


「か、彼女...」


「ち、ちがう!!!!」


 エイミーの何気ない一言にエルザは信じてしまい呆然と立ち尽くしていた。





「あらあら、トオルくんたら隅におけないわね。それにまさかあんな力を持っていたなんて。」


 真っ白な空間、映し出されたモニターを見ながら微笑む一人の女性がいた。


「まあ何はともあれ楽しくやってるみたいね。」


「アストライア様。ご報告が...。」


 羽の生えた少女がアストライアの元へ報告にやってきた。


「そお。もう間も無くなのね。こちらもう準備を始めなくてはね。」


 再びモニターに目を向けて深妙な表情で小さくつぶやいた。

お忙しい中お時間を割いていただきありがとうございます!


いかがでしたでしょうか?


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読者の方が満足できるお話を書けるように頑張ります。

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