4話 激動の一日
「それでは改めて受付嬢のリーシャです。何かあったら私に相談してください。それとギルドカードの発行は発行は翌日となりますので明日また取りに来てください。」
「ありがとうございます。」
「それとこれがゴブリンキングのと数体のゴブリンの換金報酬となります。」
ゴブリンキングの幼体が金貨3枚とゴブリンの銀貨2枚が渡された。それをそのままアイテムポーチに入れるとリーシャが顔を近づけてコソコソ話しだした。
「トオルさんトオルさん。それアイテムポーチですよね?とっても珍しいものなのであまり人前で使わないほうがいいですよ?」
「どうしてですか?」
「どうしてってアイテムポーチを持っているだけで荷馬車やバックパックなんか必要にならないじゃないですか。そんな便利で高価なものを持っていると奪おうとして命を狙ってくる人はザラなんです!」
何それ怖すぎでしょ。人前で使うのはよそ。まあさっき盛大に使っちゃったけど…。
「それでこれからどうしますか?ギルドカードの発行は明日ですがクエストは今から受けられますよ?」
「んー。ここに図書館ってありますか?」
「書庫でしたらこの奥にあります。ただ、持ち出しはできないので注意してくださいね。」
その後、教えてもらった通り書庫へと向かった。
なぜ書庫に来たかって?簡単なことだ。どの世界でも情報こそが命だ。俺みたいにこの異世界から来た知識ゼロ野郎は最初が肝心だ。
そして、書庫にある本で役に立ちそうな情報があるものを片っぱしから漁ってよみ始めた。主にこの世界の情報や歴史といったことを調べていくといくつかわかったことがある。
まず、この世界『ミルトディア』は星の女神アストライアによって創造された。四つの大陸と広大な海でできており、その四つの大陸には大小合わせて12の国が存在する。俺が今いるここは人口のほとんどがヒューマンの大国『ノイシュタイン王国』だ。
他国は各種族が独立してなったもので昔は戦争や植民地なども存在していたらしい。そしてそのきっかけになったのは200年前の『魔神戦争』だ。魔神は魔物を使役し、世界を滅ぼそうとしていた。その魔神を倒すためにヒューマン族から勇者が召喚され、十二の種族から力を借りることで魔神の封印に成功したそうだ。
それから様々な条約や国交を結ぶことで現在の平和な世界が作られたそうだ。ただ、今だに過去の怨恨を引きずる国どうしも多く完全な平和とは行っていないのが現状だ。
「通りで異世界なのにここには別の種族がいないと思った。それよりこれだ。」
今手に取っているのは職業やレベルに関する本だ。
この世界には職業と呼ばれるものが存在する。ガウマンたちから話を聞いて少しは理解していたが職業はこの世界で最も重要なものらしい。
この世界では生まれた時には職業というものが決まっているらしく、その職業にあった職につくのが当たり前らしい。戦闘系の職業、戦士や魔法使いは魔物の退治や戦争などで活躍し、商人や鍛治師など非戦闘職は街のインフラや戦闘職のサポートなどを行う。この本には過去に存在した職業の種類などが載っていた。持っているユニークスキルや会得するべきスキルなど多く記載されている。
そんな中で一番説明がなかったのが俺の職業『占星術師』だ。占星術師は星を見て過去や未来、天気や運勢などを占うことができるらしいがその的中率は低く今では全職業中最弱、ハズレなど書かれていた。会得できるスキルも少なく需要がないらしい。
「なんか不憫な職業だな。まあスローライフを送ろうと思っている俺には関係ないか。ある程度モンスターとは戦えるし冒険者しながら小銭稼ぎすればいいしな。」
それともう一つ目についたのはレベルの概念だ。レベルは職業と同じように生まれた時から存在し、このレベルをあげることで職業の強化や新たなスキルを得ることができる。魔法使いであれば新たな魔法を使えるようになる。しかし、魔法は魔法師にしか使うことができない。この世界の人間は魔力を持って生まれるがそれを使えるものはほとんどいない。
「そうなると俺の使い方は異質なのか。持ってる魔力を感じることができれば身体強化とか感覚強化とかできるから便利なんだけどな。それも女神からもらったスキル<魔力感知>があるおかげだろうけど。」
話は戻るがレベルをあげるために必要なことは一つ。モンスターを倒すことだ。モンスターを倒すことで経験値がもらうことができる。
「まるでゲームみたいだな。」
そして、自分のレベルより高いレベルのモンスターを倒すことでレベルアップすることができるのだが一つのレベル差で大人と子供ほどの力の差がある。そのため、自分を強化できる戦闘色のレベルは上がりやすいが非戦闘職はそういったスキルを持たないためあげるのがとても困難なのだ。
ただ、戦闘職でもレベル5に以降はレベルを上げにくく過去にレベル10まで上り詰めたものは召喚された勇者のみだとか。
「ここに出てくる召喚された勇者ってもしかして同郷かな?女神も別のものがどうとかいってたし…。もうこんな時間経っていたのか。」
窓の外を見ると日は沈み始めて赤い夕焼けが書庫の窓から差し込んできていた。
書庫を出たトオルはリーシャからおすすめされた宿屋『星海の宿』に向かっていた。その途中、小学生くらいの女の子が二人ぐみの男に絡まれているのが見えた。
「おい!ガキ。通してくれるんだこの服よお。これはたんまり慰謝料もらわねとだなあ。」
「ご、ごめんなさい。私急いでて…。」
「謝って済むなら衛兵はいらねんだよ。」
「おい。」
見かねたトオルは二人組と女の子の間に割って入っていった。
「なんだ、嬢ちゃん。なんかようか?」
「この子が怖がってるだろ。大人気ないぞ。」
「はあ?何抜かしてんだこいつ。ぶつかってきたのはそっちだろ。それによう俺らはDランク冒険者だ。こいつら非戦闘職がのうのうしてられるのは俺らのおかげってわけ。そんなやつらが舐めたことした報いを受けさせるのは当然だろ?」
なんだこいつら。
「クズだな。」
トオルの漏れた言葉に二人の冒険者は怒り出して殴りかかってきた。しかし、トオルはそんな二人を軽くいなすと簡単に引いていった。
「てめー!覚えてろよ!」
「こっちではそれがお決まりなのか?」
そんなことを思っていると周りから大きな歓声と拍手が送られた。どうや冒険者のああいった行動は頻繁にあるらしい。
「お嬢ちゃん大丈夫だった?」
「ありがとうお姉ちゃん!すっごく強いんだね!」
「いや、俺男なんだけど。」
女の子の純粋な笑顔の言葉に嬉しいが少し複雑な思いを感じながら苦笑いを浮かべながらいった。
「え!?すっごく綺麗な顔だからお姉ちゃんかと思った!」
元の世界でも学生時代よく女に間違われたことあったっけ。まあ、髪も伸ばして結んでたし、顔も女っぽかったからな。
「私、エイミー!お兄ちゃんは?」
「俺はトオルだよ。ところでエイミーちょっと聞きたいんだけどここら辺で『星海の宿』っていう宿屋知らないかな?」
「お兄ちゃんうちのお客さんなの!?お父さんとお母さんのお店だよ!私も手伝ってるの!」
「そうなんだ。案内お願いしていいかな?」
「もちろん!ついてきて!」
そしてトオルはエイミーに手を引かれながら星海の宿に向かった。エイミーは買い出しの途中であの冒険者に絡まれたそうだ。あんな野蛮なのが冒険者とは世も末だな。そんなことを思っているといい感じの宿が見えてきた。
「ここだよ!おかーさーん!」
「エイミー遅かったじゃないの?」
(お母さん?若すぎじゃない?)
店には入ると冒険者たちが大勢食事をしている姿が見えた。そして、奥から一人の若い女の人が出てきた。
「あ、お姉ちゃん!お母さんは?」
「奥の厨房よ。その人は?」
「お客さんだよ!それでね…..。」
エイミーがことの顛末を説明すると慌ててトオルの側までやってきて深く頭を下げてきた。
「このたびは妹を救っていただきありがとうございました!」
「い、いえ!俺は何も。」
「私はエイミーの姉のエルザって言います。」
「俺はトオルです。宿泊したいんですけど部屋は空いてますか?」
「あ、はい!一泊食事付きで銀貨3枚になりまあすがお礼に食事代抜きで銀貨1枚とどうか5枚で大丈夫です!」
「いや、わるよ。」
エルザとそんな話をしている奥からエイミーが母親を連れてきた。
「遠慮しなくていいんだよ。娘を助けてくれたお礼だからね!」
申し訳ない気持ちになったがこれ以上断るのも失礼だろうと思い提案を承諾した。
「わかりました。じゃあそれで10日分お願いします。」
エルザたちと話していると隣でエイミーが席にいる冒険者たちと話しているのが見えた。
「このお兄ちゃんが助けてくれたの!」
「そんなことがあったのか!」
「今度なんかあったら俺らに言えよ!ボコボコにしてやるよ!」
「ありがとう!でもまたこのお兄ちゃんにお願いする!」
そのままトオルに抱きつき嬉しそうな顔を見せた。それを見た冒険者たちはがっかりするものと笑みを浮かべているものがいた。
(全員がさっきの冒険者ってわけじゃないみたいだな。)
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