13話 決着
満点の星空の下、漆黒に包まれたもの同士相対する。
「どういうことだ。彼は本当に占星術師なのか?」
「我々が知り得ない力もあるのだろう。」
受け入れ難い現状に呆然と立ち尽くすフレンダ。その横で強敵に立ち向かう少年の姿を目に焼き付けるカイン。
そんな二人の視線の先には強大な漆黒のドラゴンと対等に戦う少年の姿があった。
「はああ!」
ブラックアーマードラゴンに漆黒の長剣の一撃を喰らわせる。今まで通らなかった刃が嘘みたいにドラゴンの硬い鱗に砕きダメージを与える。
ドラゴンは今まで受けたことのない激痛に声を上げて苦しむ。しかし、ドラゴンも負けじと応戦するが悉く避けられ、怒りが限界に達していた。
(これならいけるぞ!)
確信したトオルは次々と止むことのない攻撃を繰り返す。しかし次の瞬間ドラゴンの口から勢いよく炎のブレスが放たれた。広範囲で交わすことができずもろに食らってしまった。
「少年!」
「トオル様!」
フレンダとステラがその光景を見て慌てふためく。砂埃が収まったそのさきには人影が。
(危なかった!ノーモーションであんなの卑怯だろ。)
「まさか、ブレスをモロに喰らって生きてるとは...。あの鎧は一体...。」
あり得ない光景を目の当たりにしたカインは唖然とした表情を見せる。
「こっちからもいくぞ!」
『黄道技能:黒炎獅子一刀!』
漆黒の長剣に纏う火炎をブラックアーマードラゴンへと勢いよく振り下ろした。
炎は地を勢いよく駆け抜けて正面のドラゴンへと命中した。
「やった!!」
「まさか、付与魔法まで使えるとは...。」
声を上げるものや驚きの表情を見せるものドラゴンを焼くその光景に皆歓声をあげる。しかし。
(これだけじゃダメか。)
ドラゴンの鱗は粉々になり、剥き出した皮膚は燃え尽き、灰とかしている。しかし、ドラゴンは攻撃を受けきった。
「お、おい。あれ喰らって生きてるぞ。」
「マジかよ。」
攻撃をもろにくらったって生きているドラゴンを見て唖然とする冒険者たち。
すると、ブラックアーマードラゴンは最後の力を振り絞り空へと飛び立つと口を開き大技を繰り出そうとしていた。
(まずい!)
「あれはやばい!全員退避しろ!ここ一体が焼け野原になるぞ!」
カインの言葉で一同大慌てで撤退していく冒険者。しかし、その光景を見て一人ドラゴンを見下ろすトオル。
「おい!少年!お前も引け!あれはまずい!」
「トオル様も早く!!」
(だめだ。あれが放たれれば逃げきれない。残りの魔力全部使ってあれを使えば...。)
トオルは携えていた剣を地面に突き刺し、両手をドラゴンへ向けた。
ドラゴンの口から巨大な炎の塊がトオル目掛けて放たれた。
「トオル様!」
「君も早く逃げろ!」
フレンダが逃げようとしないステラの腕を掴み必死に後退しようとしている。
放たれた攻撃は徐々に近づいてくる。しかし、トオルの両手の先に受け出る魔法陣。
『惑星魔法:プロミネンス・ブラスト!!』
炎の光線がブラックアーマードラゴンへと放たれた。
炎の光線はドラゴンが放った炎の塊を突き抜けてそれで滞空するブラックアーマードラゴンに命中した。直撃したドラゴンは黒炭と化し、空から地面に叩きつけられた。
「どうだ...。トカゲやろう...。」
その言葉と共に全ての武装が解除され、トオルも地面へ倒れ込んだ。
「やった...のか。あのドラゴンを。」
「トオル様!」
夢みたいな光景を見せられる呆然と立ち尽くすフレンダ。倒れたトオルの元に駆けつけるステラ。
「やったぞ。ドラゴンをあいつが倒した!」
その光景を見た冒険者たちも大声で歓声をあげる。
「まさか、あんな大魔法まで使えるとはな。あいつは一体何者なんだろうな。」
呆然と立ち尽くすフレンダにカインが歩み寄り、笑みを浮かべながら疑問を口にした。
「さあ。ただ、大した少年ですよ。」
ドラゴンを倒したトオルを見ながら微笑むフレンダだだった。
「まさか、中級とはいえ竜種を倒すとは。面白いものが見れました。また会える機会を楽しみになってますよ。」
遠くで戦場を観察していた黒いローブの男はトオルを見て不気味な笑みを浮かべるとその場から姿を消した。
その後、ブラックアーマードラゴンを倒し黒いローブの男がさったことにより残っていたモンスターたちは統率を失い冒険者たちに駆逐され、ダカール防衛戦は勝利に終わった。
♢
深く沈んだ意識が徐々に浮上してくる。重たい瞼を開けかすんだ視界がクリアになっていく。視線の先には見慣れた天井。
「ここは星海の宿か?」
視線を横にむせるとそこにはトオルに寄り添いながら地べたに座りベットに伏せているステラの姿があった。
「ステラ、ステラ。」
体を起こしねているステラを優しく起こすトオル。
「へ...。ト、トオル様!!」
寝起きで朦朧としていた意識が徐々にはっきりとしていきトオルの存在に気づいたステラは勢いよく抱きついた。
「よかった...。本当によかった...。このまま目覚めなかったらどうしようって私。」
トオルを抱きしめながら涙を浮かべるステラ。
「ごめん。心配かけたな。」
そんなステラをそっと抱きしめ落ち着かせた。
「それであの後どうなったんだ?」
少したち落ち着いたところでステラに疑問を投げかける。
ステラが言うには俺は大技の連発で魔力が枯渇し、2日も寝込んでいたらしい。防衛戦はそのあと、残りの冒険者でなんとかなり、今は復興作業が進んでいる。
「そうか。2日も。一度、ギルドに行って確認してくるか。」
「病み上がりなんですしあまりご無理はなさらない方が...。」
「大丈夫。別に戦いにいくはけじゃないんだし。」
そう言って支度を済ませ部屋を出て階段を降りていくとエルザとエイミーの姿があった。
「トオルさん!?もう大丈夫なんですか?」
「はい。心配おかけしました。」
「お兄ちゃん大丈夫?」
「あのね、あのね!お姉ちゃんとステラさんお兄ちゃんが心配で毎日教会に行ってお祈りしてたんだよ!」
「ちょっとエイミー!」
エイミーの言葉で慌てるエルザと顔を赤らめるステラ。そんな二人を見て申し訳ないような嬉しいような気持ちになった。
「そうだったのか。二人とも心配かけて済まない。あと、ありがとう。」
その後、エルザとエイミーにお礼を言いステラと二人でギルドに向かった。
ギルドに入ると多くの冒険者がいて賑わっていた。
「あ!トオルさん!」
遠くからリーシャが声を上げると視線が一気にトオルに集まった。
(え、なに!?)
「「おお!!ドラゴンスレイヤーの復活だ!!」」
勢いよく冒険者たちはトオルに群がり握手やサインを求めてきた。
(おいおい。なんだよそのダサい二つ名は!)
冒険者たちのネーミングセンスのなさに呆れるトオルそして群がる冒険者たちにもみくちゃにされる。
「俺はただ。スローライフを送りたかっただけなのに!!」
こうして最強の占星術師が誕生した。
お忙しい中お時間を割いていただきありがとうございます!
いかがでしたでしょうか?
これにて1章が終わりです。今後のストーリーにもご期待ください!これからも皆さんが楽しんでくれるお話を書いて行けたらと思います。
もし面白いと思っていただけたらブックマークとページ下部にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎の評価をお願いします。
作者のやる気につながります!
読者の方が満足できるお話を書けるように頑張ります。