9話 不吉な鐘の音
あれから1週間が経ち俺とステラはクエストを受けていた。
「ステラ今だ!」
「はい!」
ステラが放った矢はフォレストボアの脳天に命中した。
「ほんとすごいな、ステラの職業『狩人』は。」
「はい!元々そんなにランクが高い職業ではないんですけど、私たち猫人族の狩猟能力と狩人のスキルはすごいマッチしてるんですよ。」
「へー、すごいな。」
「それをおっしゃるならご主人様の方がすごいです!占星術師なのにあんな戦闘ができるなんて!」
「まあ、俺の場合はギフトのおかげだけどな。」
ステラには俺が転生者であることは言っていない。言ったところで信じてもらえるか分からないしな。
「今日はこれで終わりだな。」
トオルはオーガキングの一件で二階級特進してDランクになりステラも一週間という短時間でEランクまで上がった。
そんな二人がクエストを終わらせるギルドに戻ると室内には沢山の冒険者が溢れかえっていた。
「トオルさーん!」
自分の名前を呼ぶ声の方に視線を向けるとそこには遠くで手を振るリーシャの姿があった。
「この人だかりどおしたんですか?」
「そのことなんですけど、ギルマスがトオルさんに2階の会議室に来てくれとのことです。詳細はそちらで聞いてください。ステラさんもご一緒に。」
言われた通り2階の会議室に向かうとギルマスのガウマンの他に5組の冒険者パーティーがいた。
「おお、来たか。」
「これはなんの集まりだ?」
「とりあえず空いてる席に座ってくれ。」
トオルとステラが席につくと深妙な顔つきになるガウマン。
「それじゃあ、ここに集まってもらった詳細を説明させてもらう。1週間前、ここにいるトオルが西のブルングの森でオークキング討伐した。」
その言葉で他の5組のパーティーがざわつき始め、トオルに視線を送った。
「普通ならあんな低級の森にオーガキングどころかオーガ自体が現れることは少ない。そこで調査隊を送ったところ複数、それも大量のモンスターを発見した。」
ガウマンの発言に動揺の声を上げる冒険者たち。無論そのことにトオル自身驚きを隠せない。
『Aランクパーテー:紅蓮の刃/ リーダー:カイン』
「正確な数とモンスターの種類、ランクは?」
冒険者パーティーの一組の先頭に座るフルプレートの大柄の男が発言する。
「正確な数はわからなかったが100や200どこではないらしい。1000は下らないとのことだ。種類も定ランクのものから高ランクのものまでいる。そして...。」
言いづらそうに言葉を濁すガウマンの表情はひどく動揺していた。
「竜種が発見された。」
その言葉の今日一番の驚きと動揺の声が部屋中に広がった。
『Bランクパーティー:『疾風迅雷』/リーダー:トリスター』
「おかしくねえか?そんな大量のモンスターに今まで気づかなかったのかよ?それに、多種多様のモンスターどもが集団になって行動してるってのもおかしいだろ!」
『Bランクパーティー:『魔導士団』/ リーダー:ディーン』
「一理ある。竜種がその中に本当にいるのであれば他のモンスターは食い殺されているはずだ。」
各々の意見が飛び交う中ガウマンが再び口を開いた。
「それが不思議なことにモンスターたちはその場で待機して動いていないみたいだ。」
「どういうことだ?」
ガウマンの言っている意味が理解できなかったトオルはその疑問を投げつけた。
「わからん。報告通りなら森の奥でモンスターの大群は一歩も動かずに待機してるみたいだ。まるで、進軍の準備をしているみたいに。」
その言葉は部屋にいるもの全てを凍りつかせた。1000をも超えるモンスターの大群がこの街に押し寄せれば大変なことになる。
「そこで我々は奴らが動き出す前に奴らを叩く。ここにいる高ランクパーティーには竜種と高ランクのモンスターを叩いてもらいたい。」
「おいおい、待てよ。」
ガウマンの言葉にトリスターがちゃちゃを入れる。
「こんなかに知らねえ奴が混じってるがそいつは誰だよ。」
「トオル。」
ガウマンに声をかけられ席を立ち、みんなの方に体を向けた。
「俺はトオル。Dランクの占星術師だ。」
すると、トリスターは声を上げて笑い出した。
「おいおい、マジかよ。Dランク!?それも無能職の占星術師だって?冗談も大概にしろ。そんな奴に背中預けられるわけねえだろ!それにそいつが本当にオーガキングを倒したって?ゴブリンの間違いじゃねえのか?」
「占星術師がなんの役に立つんだ。」
「トオル様は本当に...!」
トリスターとディーンの言葉にステラが勢いよく立ち上がり、反論しようとしたがトオルはそれを抑える。
「それに隣に連れてんのは獣人の女じゃねーか!物好きだな、そんなモンスターみたいなのを一緒に連れてるなんて。もしかして奴隷か?そういう趣味?」
その言葉にステラが落ち込んだ顔を見せるとそしてトオルはその表情を見せて俯いた。そして次の瞬間勢いよく地を蹴り抜いた剣をトリスターの喉元に向ける。
その動きを捉えることができずトリスターは何が起こったのか分からず擦れた声を出した。
「俺のことは何を言っても構わないが次にステラのことを悪く言ってみろ。その首、弾き飛ばすぞ。」
長い前髪から見えるその目は本当に自分の命を取りに来た。
「お前らそこまでだ!」
ガウマンの声が部屋中に響き、一瞬トオルの視線がガウマンに行ったのを確認したところでトリスターは後方に飛び腰に携えていた日本の短剣を構える。
「上等だ!てめーみていな雑魚、俺がここでやってやるよ!」
今にも斬り合いが始まりそうになった時、後方からものすごい圧を感じる。そこにいたのはフルプレートで身を覆ったカインの姿があった。
「やめろ。」
「っち。」
その言葉で大人しく剣をしまうトリスターの姿を見て、トオルも構えていた剣をそっと鞘に収め席についた。
「今のでわかった通りこいつはランクやレベルに関わらず戦える奴だ。それとこの嬢ちゃんの実力じゃあ足を引っ張ることはない。俺が保証する。」
(ガウマン。)
ガウマンはトオルとステラを見て大丈夫だと目で言ってくれた。
「モンスターどもがなぜ動いていないのかは分からんがこの期を逃すわけにはいかない。2日後、奴らを....。」
「大変です!」
ガウマンの言葉を遮るようにリーシャが勢いよく部屋に入ってきた。
「どうしたそんなに急いで。」
「たった今調査隊からの速報が入って...。」
リーシャの怯える目と声でこの場にいた全員が察しただろう。
「動き始めました。モンスターの大群が!」
数時間後、町中に避難勧告の鐘が鳴り響いた。
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