プロローグ
俺の名前は星宮透30歳の天文学者だ。
「今日も星が綺麗だな。」
満点の星空の下俺は今日も展望台で夜遅くまで研究に没頭していた。
「ほんといつ見てても飽きないよなあ。」
透が星を眺めていると後ろから男が同調しながら歩み寄ってきた。
振り返るとそこには同僚で研究仲間の悟がいた。両手に持ったコーヒーの一つを渡されお礼を言うとまた言葉を続けた。
「そういえば今年の年末も実家に帰らないのか?」
「ああ、勘当された身だからな、ホイホイ帰れるわけじゃないよ。」
「今年も家でゲームやラノベの続き読みかなあ。」
俺の家は武術の名家で将来を期待されていた俺はその重圧に耐えられず逃げ出してしまったのだ。星に興味を持ったのはその時だった。修練の合間に見る星空に惹かれ勘当覚悟でこの道に進んだ。
「なるほどな。ならさ、いいキャンプ場見つけたから一緒にどうだ?この間新しい望遠鏡買ったんだよ!」
「お!いいなあ。それなら来週にでも....!」
透が喋っていると地面が大きく揺れ出した。地震だ。
立っていられないほどのその揺れで俺らは地面に座り込み身動き取れずにいた。
「この揺れはやばい!早くここから出るぞ!」
透が悟の方を向くと怯えてる悟の姿があった。その時展望台の支柱が地震により亀裂が入る重さで悟の方に倒れ出した。
「悟!危ない!」
透は勢いよく飛び出し、座り込む悟を思い切り突き飛ばした。取り残された透は振り向き降りかかる展望台を見ながら過去を思い出していた。
そうか。俺はここで終わるのか。
まあでも悪くない人生だったな。
ただ、欲を言えばもっとこの星空を眺めたかった。
展望台の崩落により星宮透はこの世界での人生を終えた。
♢
「…し。…もし。もしもーし。」
何か聞こえる….。一体誰だ….?
重く閉じていた瞼を開き、ぼやけた視界が徐々に鮮明になっていく。
「お目覚めですか?」
視界の先には一人の女性が立っていた。唖然とその女性を見上げた後体を起こし、辺りを見渡すとそこには真っ白な空間が広がっていた。
「あなたは一体?確か俺展望台の崩落で死んだはずじゃあ。」
「私は女神アストライア。そして、あなたは確かにあの世界での人生を終えてしまいました。」
その言葉に呆然とする透だったがその表情を見て神は微笑みながら口を開いた。
「安心してください。元の世界に戻すことはできませんがあなたには私の世界へとご招待いたしましょう。」
「私の世界?」
「ええ。私の世界はあなた方で言う剣と魔法のファンタジーの世界『ミルトディア』。あなたもそう言うのお好きでしょ?」
唐突な申し出に理解が追いつかず、唖然とした表情を見せる。
「ただ、今のミルトディアは魔王の復活の危機にあるので前にあなたがいた平和な世界ではありません。魔物もいて危険がいっぱいです。」
「もしかしてこれって、異世界に転生して勇者として魔王を討伐する的なあれですか?」
真剣な表情で答える透にアストライアは声をあげて笑った。その笑いに何かおかしなことを言ってしまったかと不安な表情を浮かべる透。
「いえいえ、それはまた別のものの仕事なのであなたには自由にこの世界を謳歌して欲しいのです。ただ、先ほども言った通り危険が伴いますので覚悟をしてもらわなくてはなりません。死が常に隣り合わせの世界ですので。」
「その世界って俺でも魔法を使えたりするんですか?」
「魔力は誰にでも宿るものなのですが魔法を使うためには魔法適性と言うものがないと扱えません。あなたにはその適性が見られないので使うことはできませんね。」
そうなのか…。せっかくのファンタジーの世界なのに魔法が使えないなんて。
「それを踏まえて彼方の世界の話をしましょう。」
そこから異世界ミルトディアの話が始まった。
ミルトディアは剣と魔法のファンタジーの世界で地球でいう中世の時代らしい。そして、そこに住まう人々には『職業』と呼ばれるものが生まれた時に与えられる。将来はその職業によって決まる。剣士や魔術師など戦闘系から非戦闘系など数多くある。そして、それに伴い現れるユニークスキルと誰でも努力すれば手に入るスキルからなる。
そして、大きく元の世界と異なるのは魔物だ。この異世界には魔物と呼ばれるモンスターがおり、日々死と隣り合わせの危険な世界である。
「そこで代わりと言ってはなんですが幾つかの特典をおつけしましょう。」
「特典ですか?」
「はい!危険な世界ですぐ死んでもらってはご褒美転生にはならないので。なので、元の記憶を有したまま年齢も今の半分の若さで、幾つかの役に立つスキルと魔道具をおつけします!職業はあちらにいってからしかわからないのどんな職業になるかは運次第ですね。」
おお!確かにそれはお得な特典だ。
「そして何より….。あなたが愛した美しい夜空があちらの世界で待っていますよ。」
危険な世界と聞いて少し不安で迷っていたがアストライアのその言葉で心のもやが一気に晴れた気がした。透の晴れた表情にアストライアも微笑んでくれた。
「俺、行きます!異世界へ!」
「決まりですね。それではあなたを今から私の世界へご招待いたします!」
すると、透の足元から魔法陣が浮き出てきた。全体が発光し、徐々に体が光の粒子へと変換し始めた。
「あなたに星々の光が導かんことを。」
その言葉にふと何か思い出した表情を見せる透。
そういえば、アストライアって星の女神の名前じゃなかったっけ?そうか、最後に望んだ願いがこうして叶ったんだな。新しい世界はゆっくり旅をしながら星を見て回るのも悪くないかもな。
そんなことを思いながら透の意識と体は溶けていった。
この物語は異世界に転生した透が星を眺めながらスローライフを送る物語….になるはずだった。
お忙しい中お時間を割いていただきありがとうございます!
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