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第18話行こう、ノッソ村！

　さて、シャルロッテを除いて初めてのＮＰＣの仲間だ。ナクラはバッツに話しかけようとして――言葉に詰まった。コミュ障なので、なんて話しかけたらいいのか分からなかったのだ。

「俺はバッツ。よろしくな！」

　しかし、バッツの方からナクラに話しかけてきた！

「は、はい。よろしくお願いしますっ」

「足を引っ張らないように気を付けるけど、何かあったら言ってくれ」

「あ、足を引っ張るだなんてそんな！　私の方こそ！」

「え？　でもナクラって、ベテラン冒険者だろ？　期待してるぜ！」

　期待されてもナクラは実際初心者である。もっとも、小説家として脳内での冒険は欠かさないので、そちらの意味ではベテランともいえなくもない。

「……なぁ、武器が壊れそうだぜ。買い替えたり修理しなくていいのか？」

「あっ、そ、そうだね」

　確かに言われてみれば今の装備はシャルロッテから格安で譲ってもらった「壊れかけのメイス」だ。そうか、そういう注意もしてくれるのか。

　ナクラは武器屋へ向かった。マップからちょちょいと操作するだけで一瞬だ。買い物も低級(モブ)ＮＰＣ相手にちょいちょいだ。

　武器屋でメイスの上位装備、ソードメイスを購入した。刃が付いているちょっと危険なメイスである。形が泡だて器に似ているとナクラは思ったのが決め手。

　……どちらかといえばミキサーの回転部分と言った方が近いのではなかろうか？

　あとついでなので防具も普通の代物に更新しておいた。

　そして、さらに雑貨屋にも立ち寄り、『包丁』と『土鍋』も購入した。ボーナスポイントをつぎ込んで料理Ｌｖを３にしたので、これで屋外での料理もばっちりである。

　……ばっちりになってしまったのである！！

　ちなみにナクラ、『食材』は購入していない。

　……まさか現地調達する気なのだろうか？

　なにせナクラは、なんとフェンリル単独ノーダメージ撃破特典で「魔の森のヌシ」という称号を得ている。これにはＭＰ消費で『魔の森』の素材をどこでも自由に召喚できるという効果があり、ＭＰがある限りいつでもどこでも素材を入手可能なのである！（本来はフェンリルをノーダメ撃破するくらいであればもう魔の森の素材は取り放題なので、時短にしかならないフレーバーである）

　つまり、これを使えばいつでもどこでもウルフ肉やスライム粘液、白くべたつく毒キノコも手に入れ放題なのである！！

　……え？　けれどナクラはその称号にそんな効果があるなんて気付いていない？

　馬鹿な！　ステータス画面からちょいちょいと称号の横にある＋マークを選択すればその効果をいつでも知ることができるというのに！　なんてこった、これはユーザーインターフェースの敗北である！

「なぁ、料理するなら食材は買わなくていいのか？」

　おおっと！　ここでバッツ渾身のナイス発言！　よくぞ聞いてくれた。しかしナクラは自慢げにふふんとそれを鼻で笑ってみせたのだ。

「バッツ君。食材っていうのはね……森や畑とかで採れるでしょ！　だから現地で調達したほうが、新鮮でおいしいに決まってるじゃない！」

「なるほど、ナクラは頭いいな！」

「でしょー！」

　現地調達する気だった！！

　なんてこった、また土の付いた食材を洗わずにブチ込む未来が見える。まぁナクラの料理に比べれば土くれの方が上等な食べ物だ、なにせ食べても死なないので。

　ああ、誰かナクラを止めてくれ。ちなみにバッツは『ナクラは結構料理ができる』という判定で会話をしているぞ。なにせ『料理Ｌｖ３』というステータスがあるから。

　……高性能ＡＩ付きとはいえ、ＮＰＣにも限界はあるんだよ！　ガッデム！