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不良少女白書9

 翌朝いつもより早く教室に入ると沢田がもう来ていた。昨日よりは幾分落ちついた雰囲気だったが、昨夜も眠れなかったようで、目が真っ赤だった。それを見た渚は申し訳なくなった。渚は話があるからと言って屋上へ連れ出した。


 階段を上がろうとした時、大谷が下から二人を見つけて呼んだ。すぐに、園長室に来るようにとのことだった。沢田に謝っておきたかったと思いながら、言われるままに階段を降りた。


 ノックして園長室に入ると、昨日と同じように園長と教頭が待っていた。大谷に促されてイスに腰掛けた二人は、昨日にもまして小さくならざるを得なかった。渚は言いたいことが混乱して、何も言えない自分がもどかしかった。

「まぁ、そんなに緊張しなくてもいいから。リラックスして聞いていなさい」

園長は昨日と同じように静かに話し出した。

「昨日、野上さんたちにも事情を聞きました。それで、君、片平さんに突き飛ばされたように思ったけれど、逃げた時友達にぶつかったのかもしれない、ということです。迫られた時に慌てて逃げて、友達に当たったのを押されたように感じたのかもしれないので、よくわからないと言いました」

「じゃあ……」

園長は頷きながら続けた。

「今回の事件は、暴力事件ではない、ということです」

今までうつむいていた沢田が顔を上げ、目で園長に確認を求めた。園長は沢田の顔を見据えながら、頷いた。沢田は笑顔を渚に向けた。渚は何より沢田が喜んでいることが嬉しかった。

「ただ、けが人が出ている。それで、君達には訓戒を与えるということで、今回の処分とします」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「訓戒を与えられてありがとうはないだろう」

二人はバツの悪い顔をしながら互いに顔を見合わせた。

「以後、気をつけるように」

「はい」

「はい」

二人が席を立とうとした時、園長は引き止めるように言った。

「それから、片平さん」

「はい?」

「君の言っていたことなんだが……、野上さんは君達をD組だからとバカにした覚えはないと言うんだ」

渚は驚いて叫んだ。

「そんな!確かにあの子らは、言ったんだ」

「彼女らの言うことでは、確かに謝っている声が聞こえないからと文句は言ったけれど、クラスのことでバカするようなことは言っていない、と言うんだ」

「でも……、確かにあいつらは」

「本人が言っていることだから、信用するしかないだろう。ただ、私はこの学園でそんなことがあるとは思いたくないんだが……」

 なおも食い下がろうとする渚を沢田は引き止めた。沢田は目で合図を送っていた。これ以上はムダだと、訓戒で済んだのだから、これ以上は言わない方がいいと。渚ははっきりと沢田の言いたいことがわかった。

「そうですか、わかりました」

二人は静かに頭を下げ、退室した。


 退室と同時に笑いがこみ上げてきた。二人は嬌声を上げながら抱き合い、廊下を走って階段を駆け上がった。よかった、よかった。渚は退学にならなかったことを本当に喜んでいた。あんなに嫌っていた学校なのに。


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