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不良少女白書7

 翌日、渚は沢田と一緒に園長室に呼び出された。昨日はどうやって帰ったかもよく覚えていない。ほとんど眠ることもできなかった。深夜母親が帰宅してきたことをはっきりと覚えている。気づかいながらそっと母親は部屋に入り、そして寝床に着いた。それを確認した時、ようやく眠ることができた。朝、朦朧としながら起き上がり、嫌々ながら学校に来た。沢田は渚より早く教室にいた。渚が入ってきたことを見ると、立ち上がって迎えてくれた。心配そうな沢田に力強く目で合図した。


 ホームルームが始まると、担任の大谷が二人を呼んだ。園長室に来るようにとのことだった。そして言われるままに、ここに来た。


 園長室には、園長と教頭と大谷だけがいた。園長は静かに昨日の事件について聞きたいと言った。顔面蒼白の沢田は口がもつれてうまく説明できなかったので、渚が話し始めた。自分は途中から登場したのでそれまでの経緯はよくわからないが、と前置きして、沢田の不備と三人の言動を、努めて客観的に話した。園長は静かに聞いていたが、渚が話し終わると静かに話し出した。

「昨日怪我した彼女、三年A組の野上さんだが、足の骨にひびがはいったということだ。もし、暴力事件なら、君を処罰しなければならないんだが、本当に突き飛ばしたりしていないね」

「はい。突き飛ばそうというつもりはなかったけど、確かに、突っかかっていったのは事実です。ただ、結局彼女が逃げようとした時に、つまずいて、あんなことになりました」

「本当だね?」

「本当です!」

急に沢田が叫んだ。

「本当です、アタシ、泣いて何も言い返せなかったから、けど、でも、アタシの代わりに文句言おうとしただけなんです。それが、あんなことになって……。アタシが悪いんです。アタシが、ゴミ箱振り回したりしなければ、こんなことにならなかったから、アタシが原因なんです」

一気にそう言い放った沢田は、うつむき加減になりながらも涙を堪えているようだった。渚はそんな沢田が痛々しくて、ぐっとこぶしを握りしめた。

「あの、彼女、野上さんは、何て言ってますか?」

渚は園長の顔を見据えながら問いかけた。園長は渚の瞳を見ながら答えた。

「彼女は、君に押されたと言っている」

「そんな、嘘です。なぎさちゃんは、押してません。触ってもいません!」

沢田の叫び声にも渚は動ぜず、そうですかと答えた。大谷も何も言わずに立っているだけだった。教頭が、渚が最近停学になっていたことを園長に告げた。園長は静かに頷くだけだった。そして、もういいから教室に戻りなさいと告げた。処分は追って伝えると言うことだった。そんなと言う沢田をなだめるようにしながら渚は部屋を出ようとした。そして、扉の前に立った時、あらためて振り返った。渚は凛とした表情で園長を見た。園長はそのまなざしを見て、どうしたと問いかけた。渚はゆっくりと口を開いた。

「ひとつだけ、訊いてもいいですか?」

「ああ、どうぞ」

「あたし、暴力で罰せられてもいい。だけど、言葉の暴力はどう罰するんだ。野上らは、あたしたちを侮辱した。たかが、成績くらいのことで。ただ、クラスが違うくらいで、あたしたちをバカにしたんだ。心をズタズタに傷つけられたあたしたちは、どうなるんだ。あいつらは、罰せられないのか?確かに、あたしは不良だ。こんな髪をしてるし、補導されたし、停学にもなった。それ相応の悪いこともしたよ。だけど、あいつらは、あいつらのやったことは、言ったことは、罰の対象にならないのか?こんなに、惨めな気持ちにさせられても、あいつらは悪くないって言うのか?それが、正義なのか?おかしいよ……、絶対、おかしいよ……」

 渚の声は涙に消えていった。沢田は涙を流しながら渚に寄り添った。渚は沢田をなだめた。その後、静かに頭を下げ、挨拶をして退室した。


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