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不良少女白書6

 6時間目の体育が終わった後、渚は教室へ戻らずに更衣室から直接図書館へ向かった。今日沢田と勉強をする下調べに理科の本を探しに行ったのだった。沢田は掃除当番なので、すぐに教室に戻った。渚は、薄っぺらで比較的やさしそうな本を見つけて借り出した。

 停学中に行われた実力テストの問題でどうしてもわからない所があった。テストの後の理科の時間に先生が、私立高校の入試では時々中学で習わない問題も出るといいながら、解説をしてくれたということだったが、沢田は理解できなかったと言った。沢田は数学と理科は嫌いだと言ってあまり真剣に考えようとしなかった。もちろん渚にもわからなかった。まだ、先生に聞きに行くことに抵抗のあった渚は、自分で調べてみることにした。何人かの先生は渚を他の生徒と区別なく扱ってくれていたが、まだどこかよそよそしい印象の先生もいた。それはしかたないことだと思いながら、こういう時に質問に行くことをためらっている自分がまだ好きにはなれなかった。屈託なく話しかけてきた沢田に比べると、自分はまだまだだな、と思ってしまう。


 図書館のある北館の階段を降りると、ゴミ捨て場の前に沢田がいるのを見つけた。思わず声を掛けそうになって、やめた。沢田は三人の女子の前でうなだれて、泣いているようですらあった。渚は急いで駆け寄って、沢田の傍に立った。

「どうたの、ララ?」

「…あっ、なぎさちゃん」

 沢田はごみ箱を持ったままうなだれて涙を流していた。三人の女子は渚の突然の登場に驚きながらも、険しい顔を崩さず二人を見つめた。

「あんたも、D組なの?」

「そうよ、それがどうしたの?」

「ちょっと、この子、バカじゃないの?」

「ララが何かしたの?」

「何か、じゃないわよ。常識って持ってないのね、この子」


 一人が始めた話は、沢田がゴミを捨てに来たことから始まった。沢田はゴミをコンテナにぶちまけた後、空になったゴミ箱を振り回しながら帰ろうとしたのだった。あいにくゴミ箱には液体が入っていたらしく、振り回した時にこの三人にその汁がかかったということだった。それで三人が文句を言って詰め寄っても、沢田は泣くばかりで謝りもしないという。

「大体ね、ゴミ箱を振り回すなんて、常識がないのよ」

「泣いてごまかそうなんて、幼稚園児じゃないのよ」

「ちゃんと、謝って欲しいわね」


 半泣きの沢田はぼそぼそと弁解した。

「アタシ、何回も謝ってるのに全然聞いてもらえないの……」

「謝り方が悪いのよ。何言ってるのか全然わかんないわ」

 ヒステリックに叫ぶ女子を前に渚はむっとしてしまった。

「じゃあ、どう謝ればいいのよ」

「そんなの、当たり前じゃない。ちゃんと頭を下げてハッキリと謝るのよ」

「アタシ、ちゃんとしたよ……」

「あれで、できたって言うの?」

「いいじゃない、本人がちゃんと謝ったって言ってるんだから」

「誠意がないのよね」

三人は示し合わせたように、頷いた。

「じゃあ、金でも出せって言うの?」

「まさか、そんなの恐喝じゃない。もう、D組の人間は下品だから」

「ナニ?」

「なぎさちゃん、さっきからこの人たち、アタシがD組だからってバカにするの」

「バカになんかしてないわ。ただ、礼儀がなってないって言ってるのよ。謝り方もしらないし、人を恐喝しているみたいに言うし。ひどいものね」

 渚は抑えきれなくなって一人につかみかかった。怯えたその女子は、慌てて後退しコンクリートの段差に足を躓かせてへたり込むように倒れた。運悪く、脛の部分にコンクリートの角が当たりその上に座り込んだため、その子は大声を上げて足を抱え込んだ。騒ぎを聞きつけた男子が職員室と保健室に走った。渚は呆然としたまま、うずくまっている女子を見ていた。視界が狭まっていくことがはっきりとわかった。沢田は立ち尽くしている渚の腕を引いて渚の名前を呼んだが、渚は全く沢田の声に反応しなかった。


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