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不良少女白書5

 国語の上杉先生が、いつものようにポイントを指摘しながら、板書をしている。渚はぼんやりと黒板を見ながら考えていた。いままでこんなに授業が楽しく思えたことがあっただろうか。沢田と一緒に勉強をすることになってから、授業に身が入っていることが自分にもわかる。真剣に聞くと、わかってくるようになる。わからなくても、沢田が教えてくれるし、自分で教えようとするとだんだん理解が深くなる。目に見えて自分の学力が上がっていくことがわかる。もっともこの数カ月は勉強していなかったからでもあるが。

「おい、片平、ぼぉっとしているみたいだけれど、わかってるか?」

 突然、上杉は渚の名を呼んだ。渚ははっとして頷くと、じゃあこれを答えてみろと黒板の問題を指した。すぐに教科書に目をやり、黒板の問題となっている箇所を探し、ゆっくりと立ち上がりながら答えた。上杉は静かに頷いて、よろしいと言ってくれた。横で沢田が小さく拍手している。周りから感心したような声が漏れている。いい気分に浸ったまま、腰を下ろした。上杉は褒めすぎることなく渚を褒め、また授業に戻っていった。沢田はウィンクをして見せた。渚も笑みを返した。自分のためでもあり、自分のためだけではない勉強だから、一層やる気も出てくるのだろう。渚は鉛筆を取って板書を写しはじめた。


 授業が終わると沢田が満面の笑みを浮かべながら寄ってきた。

「やったネ、なぎさちゃん」

「そんな、誰でもできるよ、あのくらい」

「何をおっしゃるウサギさん。ぱっと当てられて、ぱっと答える。なかなか、できることではござりません」

 そう言って見栄を切っている沢田を前にして、渚は自分が笑っていることに気づいた。いつの間にか教室で笑うことができるようになっていた。


 「なぁ、片平ぁ」

背後から男子の声がして振り返ると、坂井が立っていた。

「あのさぁ、俺、いまのところよくわかんないんだけど、教えてくんない?」

「あ、あたしが?」

「そう。どうも、国語って苦手でさ。覚えてどうにかなるわけじゃないし。まだ、数学の方がわかりやすいよ」

「何言ってるのォ、数学なんてどこがわかりやすいのよォ。記号ばっかりで、日本語でわかりやすくすればいいのよ」

「ララ、そりゃぁ、お前がバカなんだよ」

「いま必死で勉強してますぅ!フーンだ。自分だって、日本人のくせに国語ができないくせに」

沢田は腕を組んで坂井に背を向けた。そんな仕草がおかしくて渚はまた笑ってしまった。そう言えば、このクラスになってからこんなに話したことも笑ったこともなかった。坂井が差し出した教科書を覗き込みながら、渚はそう思った。


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