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不良少女白書2

 渚は何となく数日を真面目に通ったが、やはり気づまりで、何より雰囲気が嫌だった。隣の沢田だけは何度となく声を掛けてくれる。もともと屈託のない子だから、と思うにしても、いつしかありがたく、声を掛けてくれることを期待している自分がいることにも気づいた。そんな自分が苦痛になり、今日は6時間目の体育をさぼることにした。


 この学校が嫌になったのは、2年の終わりの時だった。この学校は3年のクラス分けを成績順に割り振ってしまう。その後も定期テストの成績によってはクラス替えが行われる。受験戦争を助長し、生徒の人格を無視したような扱いに不満を持ってしまった。あいにく渚は成績はそれほど悪くはなくD組に振り分けられたのだが、3年になってからは勉強もろくにしなくなった。他の学校の友達や高校生と遊び始めたのも、この春からのことだった。頻繁に学校をさぼり、それでも中間テストの成績はそれほど悪くはならなかった。ただ、前の席の男子がいなくなり、替わりに他のクラスの女子が入ってきていたのを見た時、言い知れぬ嫌悪感を感じた。そしてクラスの雰囲気も刺々しく感じられるようになった。


 それからはいっそう遊び回り、学校にも来なくなった。渚は母親と二人暮らしだったが、スナック勤めの母は渚の生活にはあまり干渉しなかった。昼過ぎまで寝ていて、夕方勤めに出る母に渚の行動を把握することはできなかった。朝、渚は学校へ行き適当に抜け出して着替えた後、高校生やフリーターの連中のたむろしている喫茶店で時間を潰し、夕方はあっちこっちで遊び歩いた。そして、この間の狭間東銀座一斉摘発で補導され、一週間の停学になった。


 その間に3年生だけ実力テストが行われた。渚は受けることができなかった。停学明けでクラスが変わっていないことに驚きながらも、どこか安堵している自分に嫌気がさした。


 教室に入った瞬間、誰もが自分を拒絶しているように感じた。どうしてお前はこのクラスにいられるんだと、言われているような視線をずっと感じている。先生に問い合わせた生徒もいたようだった。渚が教室でぼんやりしているとひそひそ話が聞こえてきた。

「・・が訊いたんだって。そしたら、休んでたら成績の評価と関係ないんだって」

「でも、風邪じゃないんだし。おかしいんじゃないの?」

「どうせ、次はダメだろ」


 男の声か女の声かわからなかった。確かに聞こえたように思った。幻聴のようでもあった。とにかく誰とも話したくなかったし、できれば誰とも顔を合わせたくなかった。


 学校を出ても行くところがないことに戸惑った。いつもの喫茶店でもいいけど、補導員が目を光らせている可能性が高い。他の店は、未成年に飲酒の許可をしていたということで、営業停止になってしまっている。家にも帰りたいとは思わない。まだ、母親はいる時間だ。何も言われることはないけれど、この学校に合格した時、ひどく喜んでくれていたことを思い出すと、何も言われないことほど辛いことはない。


 行き場のない自分に嫌気がさして、屋上に向かった。授業中ということもあって、誰も

いなかった。ポケットから煙草を取り出し、すうっと一息ついた。紫煙がふっと舞い上が

り風にかき消された。これなら見つからないと思い、ぼんやりと空を見上げた。久しぶり

の煙草は頭の芯まですっきりさせてくれる。辞めてやろうか、そんな事を思いながら煙草

の火を見つめた。


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