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不良少女白書11

 急いで家に帰っても母親がいないことはわかっていた。それでも、急いで帰らずにはいられなかった。この間の一件も詳しくは話さずじまいだった。その前の停学についても、あまり話していない。夜遊びを続けていたのは気づいていたようだった。それでも、何も言わなかった。言ってくれなかった。学校をさぼっているのも連絡が行っているはずだった。それでも、何も言わなかった。それが悔しかった、というのがおそらく本音だったろう。でも、今日は何でも話ができそうな気分だった。成績表を見せて喜んでもらいたかった。今までのことを全部詫びたかった。


 扉を開け部屋の中に入っても、やっぱり誰もいなかった。夕陽が差した部屋はほの暗く、生活の陰影が映し出される。セミの声がまだまだ響いている。灯かりを点け、成績表を鞄から取り出しテーブルの上に置いた。

 夕飯に何を作ろうかと思ったとき、スマホが鳴った。期待を抱いてすぐに、発信先も確認せず応えた。

「はい、もしもし、渚です」

「……なぎさ?わかる?あたし」

低くためらいがちに話す音に聞き覚えはあった。それは、ここしばらくは忘れていた声だった。

「きょうこ?」

「そお、覚えててくれたぁ?ひさしぶりね、どうしてるの、最近?全然、見かけないからさ」

「あぁ、あたし、停学になって、それからは全然行かなくなったから」

「そう、中坊は大変だね。義務教育だからね。あたしみたいにガッコ行かなくなると楽だよ。まあ、あと半年ほどだね」


 恭子は夜遊びで知り合った仲間だった。二つ年上の恭子は、高校を半年ほどで退学になって、フリーターで通している。たまたま知り合いだった男に誘われてジェネシスで紹介されて以来、ずっと遊び友達だった。原付の運転も教えてもらって、乗り回したりもした。酒の味も教えてもらった。色々なグループに紹介もしてもらった。その当時はそれでも楽しかった。ただ、今はもう世界が違うようにも思えた。

「今日、出ておいでよ。もう、停学からしばらくたったし、センコウの見る目も甘くなってきてるだろ」

「ん、まぁ……」

「何?何かあったの?」

「いや、ただ、あたし、ちょっと事件起こして」

「へぇ、やるね。まぁ、いいじゃない。久しぶりだし、ちょっとだけってことで。お母さんの帰る前に帰りゃいいんだろ、また」

「うん…」

「じゃあ、待ってるよ。七時くらいまでなら、白薔薇にいるから、その後はたぶんジェネシスだな」

「……うん」

「じゃあ、待ってるよ」


 恭子の声は最後に強い語気を放っていた。渚は話の途中で断る意思を失っていた。そう今日が一番大事な日だという意識だけが強くなっていった。


 手早く着替えると、成績表とメモを書いておいた。今日は遅くなるかもしれませんが、心配しないでください、と。渚は鏡を覗き込み、黒く染め直し短くなった髪を指で軽くとくと部屋を出た。


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