第五話:旅路と陰謀③
連日投稿が早くも途切れる・・・
短いですが、お楽しみいただければ幸いです。
カラカル達と別れて、シンヤとザイグの二人は馬車を預けると身軽になって大通りを進んでいく。正装をした者達が多い中で左右に刀を帯びたシンヤは悪目立ちしているが気にせず歩いていく。
「ここです。自慢じゃないですが立派な建物でしょう?」
ザイグの商会、『フーマニタス商会』の事務所は競合商会が軒を連ねる大通りからは一歩外れたところに居を構えたいた。三階建てでその面構えはシンプルな石造りだが無駄はなく洗礼されており、他所と比べても何ら遜色はない。
「なんで大通りに建てなかったんだとそりゃ当時はヘイトリッドと喧嘩しましてね。妻もせっかくなら目立つ方がいいんじゃないかと言っておりましたが、私はそうは思わなくてね。儲かるか儲からないかは事務所がある場所では決まりません。全ては嗅覚次第。時代の流れを読む力があるかないかだと私は考えております。ですから、今私はこの選都でも一、二を争う巨大商会と言われるまでになりました。っと、そんな話をしても仕方ないですね。さぁ、行きましょう」
一階は買い付けた商品を管理する倉庫。二階は丸々事務所となっていて事務員がせわしなく働いていた。だがザイグの姿を見ると皆手を止めて笑顔で挨拶をした。ザイグもまた一人一人に労いの言葉をかけていた。ずいぶん慕われているようだ。
「お帰りなさいませ、社長。今回の商談、上手くいきましたか?」
「おぉ、セロス君!君の見込み通りだったよ!ありがとう」
「それは何よりです。副社長をお呼びしますか?」
セロスと呼ばれた眼鏡をかけたスラリとした肢体の女性は一礼してその場を一旦離れて、三階へと消えた。するとすぐにドタバタと慌てて誰かが階段を降りてきた。
「ザ、ザイグ……!?無事だったのか?!よく帰ってきたな。安心したぞ」
「おぉーヘイト!!私が留守をしていた間に商会の切り盛りありがとう!大事はなかったか?」
「あ、あぁ…特に何もなかったよ。安心してくれ」
「業務に滞りはありません。社長の捺印が必要な書類が溜まっておりますのでそちらの処理をお願い致します。それよりも…気になっていたのですがそちらの若者は一体何者ですか?」
「そうだったそうだった!皆に紹介しよう。こちらの彼はシンヤ君と言ってね。私の命の恩人なんだ!選都への帰り道に出会ってね。なんでも旅をしているそうで目的地が同じだったものだから一緒に行こうと私から誘ったんだが、そしたらその夜、運の悪いことに野盗に襲われたんだがなんと彼が撃退してくれんただよ!まさに命の恩人という奴だよ、シンヤ君は」
予定通り(・・・・)の紹介を受けるが、予想以上に大げさにザイグが話し、予想外にも事務員が立ち上がって拍手をするものだからシンヤは小っ恥ずかしくなって頰を掻きながら頭を軽く下げた。
顔を上げると可愛い殺気を感じてその方向に視線を向けるとヘイトリッドがいた。あまりの単純ぶりにシンヤは内心で笑いを堪えるのに必死だった。腹芸が出来ないのか、この男は。
「ザイグさん、皆さんのお仕事の邪魔をしてはいけませんから俺はこの辺りでお暇させていただきます」
「そうですね。私も長旅の疲れがあるから今日は家に帰ることにしようかな。妻のかも見たいしね。じゃあヘイト、すまないが宜しく頼むよ」
「お、おぅ。ゆっくり休めよ、ザイグ。奥さんにもよろしくな」
動揺で上ずりそうになる声を理性で押さえつけて平然を装い、ヘイトリッドは手を挙げて応えた。
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