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第十三話:もう一人の黒幕②

短めですが、楽しんでいただけたら幸いです。

「あぁ、俺だ。例の奴を確保した。そうだ、【フーマニタス商会】の社長書のセロスが【闇の軍勢】の間者だ。致命傷とまではいかない程度に斬り伏せた。早いところ誰か寄越してくれ。頼んだぞ、オルデブラン」


『さすが、仕事が早いな。わかった、早急にそちらに部下を手配する。悪いが到着するまで見張っていてくれるか?』


「どこまでこき使う気だよ。急ぎで頼むぞ?」


 わかった、とオルデブランからの返答を聞いて通信を切った。やれやれとシンヤは頭を振ってすぐ隣にいる黒装束の女、セロスに目を向けた。敵とは言え血だまりの中に放置しておくのは気が引けたので少し場所をずらして手足を縛って寝かしてある。まだ当分目は覚めないだろう。先ほどの一撃はそちらに重きを置いたからだ。


「副社長に続いて社長秘書までも裏切り者だったとはな。ザイグさんにはなんて説明したものか……」


 出会って日は浅いが、ザイグさんはこの街まで運んでくれた上に仮住まいもさせてくれている。その恩人が社長を務める商会で二人も裏切り者が出たとなればその心労は計り知れないことは想像に難くない。シンヤは真実を伝えるべきか頭を抱えたくなった。


「おうおう、またお前かよ!かなりの大活躍じゃねぇか、シンヤ!俺にも少しは手柄を分けてくれないか?ずっと選都の中に引きこもっていると身体が鈍ってしかたねぇ」


「またあんたか、ナスフォルン。あんたも大概暇なんだな」


「うるせえよ。俺だって好んで使いっ走りをしてるわけじゃねぇんだよ。つか毎度毎度お前は面倒事を起こしやがって。今度はなんだ?またフーマニタス商会の奴か?って彼女はセロスさんかよ!?社長秘書の彼女がまさか【闇の軍勢】だったなんてな。信じられないぜ」


 オルデブランに連絡してから五分足らず。やって来たのは顔見知りになりつつあるナスフォルンと数人の騎士達だった。


「俺はセロスとは一度きりしか会ったことないから以前の彼女は知らないが・・・・おそらく本物・・の彼女はすでに殺されているだろう。その証拠に見てみろ。今の彼女の顔、セロスに似ても似つかないだろう?」


 セロスに化けていた女性だがその顔はすでに別人のものとなっている。一番わかりやすいところで言えば耳が尖っている点。ランコーレと同じく長耳族の特徴だ。変化の魔導を使用して巧妙に化けていたようだが、気配遮断の魔導を無力化したのと同時に変化の魔導も無力化されている。そのことに彼女が気付いていたかは定かではないが。


「おっとりした美人だったが、こいつはまた切れ長のキツイ美人さんだこと。似ても似つかないな。俺も何度か彼女と話したことはあるが一体いつから入れ替わっていたんだろうな」


「さぁな。それは直接本人に聴くことだ。俺には関係ないことだ。そんなことよりザイグさんになんて説明したらいいかを考える方が俺には辛い」


「あぁ……ザイグさんな。この短期間に信頼していた二人に裏切られていたと知ったらさすがのあの人も落ち込むだろうな。まぁそれこそお前が気にし過ぎることはじゃない。その辺は俺からも話をしておくさ」


「助かる。俺じゃ限界があるからな。頼んだよ」


「おう!任せておけ!それじゃこいつは拘束していく。お前も早く帰って休めよ」


 そう言ってナスフォルン達はセロスだった別人の女を連れて中央塔へと帰還して行った。それを見送りながら、シンヤはため息をついた。


 長い一日だった。人類最強の男、オルデブランに呼び出されて話をして、その日の夜に目星をつけていたもう一人の黒幕と対峙した。しかも別人に化けていたとなれば益々人類軍が内側から壊される可能性が出てきた。


「まぁ、俺はサラに会えさえすればいいんだけどな」


 シンヤの目的はただ一つ。十年前に星に選ばれて選都に連れていかれた幼馴染と再会すること。そのために力をつけたのだが、人類全てを護るのは自分の役目ではない。それは騎士達の役目だ。


「さて、俺も帰るか。さすがに疲れた」


 首をポキポキと鳴らした。肉体的には疲労はない。これはどちらかと言えば精神的な疲労だろう。だがこれで一先ずは、カラカルの言うところの終着だ。オルデブランの依頼も果たした。あとは本来の目的である選抜武芸大会。これに出て優勝すること。あの男の言葉を信じるのであれば出場は問題ないが、何か企んでいそうなのが気がかりではあるが。


「ここで考えても仕方ないか。帰って寝よう」


 呟き、シンヤは仮住まいのザイグの邸宅へと歩みを進める。いい加減、彼の家からもお暇しないといけないな、家を借りるにはどこに行けばいいのか、カラカル辺りに聞いてみるかと考えながら。


最後までご精読いただきありがとうございました。

もしよろしければ感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。

よろしくお願いいたします。

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