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X.en.トリガー 罰と交錯の引鉄  作者: そうのく
X.en.トリガー 
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第八章

「予想された通り戦闘は長期化し、かなり激しい物になったようです」

 サナが、その報告に耳を傾ける。


「多勢と不利な状態でしたが、ヤタノハ・クシビは独自魔術で消耗戦となるはずの状況を保っていたようです。結果、戦闘は長期化し、お互いが生命危機状態になるまで戦闘が及んだものと思われます」

 その言葉を聞いて、サナは息を飲んだ。アヤメが言っていた事は本当だったのだ。


 目の前には、報告を元にした戦闘経過のシミュレートデータが広がっている。


「最後に残った術士兵も、武器を捨てて逃亡……これで戦闘が終結したようです」 

 ヤタノハ・クシビの戦闘経過の報告を聞いているが、説明される一言一言に驚愕するしかない。


 あれだけの人数の兵士を、たった一人で全滅させている。


「報告にあるだけでも、ヤタノハ・クシビの高い戦闘能力が伺えます」

 報告をしてきた調査員も疑問に思っているようだった。ヤタノハ・クシビの戦闘形跡を確かめるほどに、信じがたい部分がより濃く浮き出てくる。


 術士一人を殺めることなど、簡単にできる程の力が……。


「わかりました……。アヤメ隊員には後で私が伝えます。」

 次に、サナは深刻な表情で尋ねる。


「それと……重傷を負った者の様態は?」

 その質問に、息を飲まずにはいられなかった。


「一番重傷を負った術士ですが、只今集中治癒室で治療を行っております。様態は未だに不明のままですが……。」

「そうですか……」

 その返答に俯くサナ。現状は変わらない状態が今も続いてるようだった。


「報告、ご苦労様。ありがとう」

「いえ。では、失礼いたします……」

 調査員が頭を下げて立ち去ると、サナはその場で顔を伏せて考え込んだ。アヤメには後からこの事を伝えよう。しかし、それだけではショックからは立ち直れないだろうにも思えた。もっと根本的な問題を解決せねばならない。


「だけど……」

 ヤタノハ・クシビ――正規の英装術士兵団から逃げおおせている大逃亡者の異名を持っているが……。

 本気になれば、自分達が返り討ちに合うのではないかとさえ思えてくる……。

 実際、過去にも交戦の経験はあるようだが、目立った負傷者はなく……。警護術士隊のマルチロイドが破壊された程度に留まっている。


「でも……」

 他にも気になる点がいくつかある。戦闘をしていた術士は、非合法の行為を行っている者達ばかりだった。捕まえた術士に限っては、こちらで数人の処分を下すこともすでに決定している。


「…………」

 一体なぜそんな術士達と戦闘を行っていたのだろうか……。違法術仕同士でのつぶし合い――珍しいことではないが……賞金狙いか、それとも何か恨みを買っていたのだろうか。


 では、彼の目的は?


 彼は何をする為に動いているのだろう……。

 アヤメを庇い、こんな事をした彼の目的は……。


「………。」

 色々と考えるサナだが、それでも結論は出てこなかった。

 それに、今は今後の処分の事も気になっていた。

 このまま重症を負った術士が死んだとすれば、危険レベルが上昇する可能性がある。


 そうなっては、もう手の施しようがない。











 サナが兵団本部の廊下を歩いていく。休憩室まで行くと、そこではアヤメがじっと俯いたまま座っていた。

「アヤメ。お疲れ様……」

「うん……。」

 サナが尋ねると、アヤメは小さく頷く。


 今は負傷した術士の治療が行われている最中だ。アヤメは状況の進展と報告を、ここでじっと待っ

ている。


「大丈夫よアヤメ……。彼もあなたを庇ってくれたんだし……。きっとまた昔みたいに仲良くなれるわ」

 励ますサナにアヤメが黙ったまま頷くが、やはりどこか元気がない。むしろ自責の念を感じているようだった。ずっと心がここにあらずと言った状態だ。


「………。」

 苦悶するサナ。自分の励ましに説得力が無いのは解っている……。人一人を殺してしまったかもしれないのだ……。今は重要な瀬戸際だ。


 アヤメの様子は、朝から眠ってもいないのではないかと思う程に衰弱している。


 あれだけの事があれば、誰でもショックで眠れないかもしれない……。それが大切な人間であったのならば、尚更だ。


「アヤメ、少し眠ったらどう? 報告なら私が聞いてあげるから」

「ありがとう、サナ……。でも大丈夫。ここで少し休めば、また元気になるから……」

 そう弱々しく笑みを浮かべるアヤメだが、サナには無理をしているようにしか見えなかった。涙の痕が色濃く浮かんでいては――。


 ずっとここで泣いていたのだろう。


 こんなアヤメは初めて目にする……。あのいつものような元気な姿は見る影もない。


 自分の知る限り、アヤメは落ち込んでもこんな暗い表情をすることはなかった。どこか声を荒げたり、別の所で躍起になったりするのだ。


 だが、今のアヤメは、まるで人が変わってしまったかのようだ……。

 こんなアヤメを見ていると、こちらまで心が痛くなってくる……。


「………。」

 今も治癒が行われているが、術士の状態は不明のままだ。かなり深刻なダメージを負っていたとも聞いている。

 しかし、今は祈る他にない。これで危険度合のレベルが底上げされれば、重い刑罰は免れない。

 術士が、もし手遅れだったら……。

 そうなっては、もう仲良くなることができなくなる可能性だってある。


 そして何より、彼には一生人殺しの汚名が被せられる事になる。


 今のアヤメには、やりきれない思いしかないだろう。

 彼が何を思ってアヤメを守ったのは分からないが……それでもアヤメは無事だった。


「………。」

 アヤメの隣に座り、じっと同じように待つサナ。これで術士が手遅れだったら、本当に杭しか残らない結果になってしまう。

 もし彼が人殺しとなったなら、警戒レベルが底上げされ、彼には常に英装術士の追手が蔓延る事になるかもしれない。


 今は、その最悪の事態は避けられる事だけを祈るしか――。


「――!」

 すると、調査員の一人が治癒室から出て来るのを目にするアヤメとサナ。

 他の上官達と、すでに話を終えた後だろうか――。


「あの、術士の状態はどうなりましたか?!」

 急いでアヤメが尋ねる。サナも緊張した面持ちで返事を待った。


「刺し傷は僅かに急所を外れていました……。術士は無事に生きています。今は様態も安定して、回復の方向へとむかっています。」

 調査員の一人が伝えると、アヤメは震えながら確認するようにゆっくりと口を開く。


「じゃ、じゃあクシビは……人を殺していないんですね……? 上官達はなんと……?」

「今回の件では、ヤタノハ・クシビの危険レベルも一定を下回っているようです。負傷した違法術士も、じきに回復の方向へと向かうそうです。」

 その報告を聞くと、アヤメは倒れ込むようにして床に座り込んだ。


「アヤメ……!」

 サナが支えるが、力の抜けたアヤメからは、安堵の涙が目に流れていた。


「うっ……うっ……」

 顔を覆って泣き出すアヤメ。昔から約束していたことを思い出す。

 もう、どうなるかと思った……。


 せっかく術士になれたのに――今までずっと抱いて来た同じ夢だったのに……。

「アヤメ……。よかったわね。まだ彼は人を殺していないわ……」

「うん……」

 胸をなでおろすサナと、泣き崩れるアヤメ。術士が生きていた事で、無事に危険レベルも一定を下回った。

 これでクシビは大丈夫だ。


 大切な人を、自分のせいで人殺しにしてしまう所だった……。












 詳しい話は後ほど行われた。あの場で戦闘を起こし、倒れていた術士達からは全ての証言を得ていた。

 上官達も同席し、さらに詳しく調査を進めている。

 違法術士ではない正規の賞金稼ぎも複数存在し、彼らは違法術士と関わっていた為、警護術士隊に逮捕される事となった。

 かなり大きな騒動となり、調査にも大規模な人数が動員される事態となっていた。

 逮捕された違法術士兵の一人一人から今回の戦闘の証言を詳しく聞き出され、サナとアヤメは今しがた行われている調査報告を待機室で待っていた。


「まったく……正規の賞金稼ぎが違法術士に雇われるなんて……前代未聞ね」

 サナは呆れて物も言えないようだった。


「アヤメの彼に同情するわ。市民を守る側の人間が、お金を目当てにここまでするなんて……」

「うん……」アヤメは覚束ない表情のままだ。

 サナは憤然としたまま報告を待つ。正規の立場の人間が、違法術士と手を組むなど信じ難い行為だ。違法術士の彼は身を挺してアヤメを危機から守ったというのに……。


 そのアヤメは、今も心がここにあらずの状態だった。


 ――何か……事件に進展があっただろうか。


 アヤメは、そんなことを思いながら時間が過ぎるのを待つ。そして、会議室から隊員の一人が出てくるのを見かけると、アヤメとサナはすぐに立ち上がった。


「何か報告はありましたか?」

 隊員の一人にアヤメが尋ねると、その隊員は資料に目を通しながら答えた。


「はい。他にもいくつか新しい証言がありました。捕らえた違法術士から、裏の違法組織が複数上がっております」

「そうですか……」アヤメが表情を俯かせた。やはりクシビはそんな組織にも狙われているのだろうか……。

「それと、ヤタノハ・クシビの逃走ルートについても多少ですが判明しています」

「本当ですか?!」

 その報告に、アヤメとサナが驚く。詳しく聞かなければならないと思い、会議室へと急いだ。


 会議室へ入ると、上官は複数の調査員と談義を行っている所だった。


「上官、ヤタノハ・クシビの逃走ルートらしきものが判明したと言うのは本当ですか?」

 アヤメは、急いでそのことを尋ねる。


「ああ、本当だ。捕縛した術士と治療を施した術士が全て話しくれた。これから調査員を向かわせて調査を行う算段を立てていた所だ」

 上官が答えると、アヤメはすぐに申し出る。

「その調査に私も参加させてください!」

「お前がか? 本来の任務に支障が出ない程度になら構わないが……。お前はヤタノハ・クシビに対して強い執着があるようだな。」

「は、はい……」

上官のその言葉に、アヤメは声を落としながらも頷いた。アヤメがヤタノハ・クシビを追っている事は兵団内でも有名だ。なにせ訓練生時代の同期なのだから。


「ヤタノハ・クシビの余罪は今後に回すことにした。いくら大きな戦闘を起こしたとはいえ、今の状況では動けないからな」

 それを聞き、アヤメの表情が変わる。


「あ、あの……! ヤタノハ・クシビは私を庇って危険な行為を行ったのです。過失があるとすれば、私にも――!」そう言って身を乗り出すアヤメ。

「馬鹿を言うな。お前の過失など判断の対象にはならない。まったく、呆れた物言いだ」

 思わず頭を掻く上官。昔からこの飛び抜けた性格は性分なのか……。


「今回の件は念入りに調査をしてからだ。相当に荒い戦闘になったようだからな。一歩間違えば、死人が出ていた」

「……申し訳ありません」

 その言葉に、アヤメは俯いて謝るしかなかった。何と詫びたら良いのか分からない。


「アヤメ隊員。事が片付いた後に君にもいくつか証言を聞かせてもらう予定だ。」

「は、はい……」緊張しつつも、応じるアヤメ。

「……まあ、お前が今回の件で自責の念を持っているのはわかる。だが、何事にも細心の注意は必要だ。同期の人間を追い掛けていたとはいえ、注意を怠れば、また次の問題が起こりかねない」

上官の言葉にアヤメは耳を傾けていた。


「情の赴くままに行動をするなら尚更だ。英装術士ならば、それ相応の振る舞いを心掛けるようにな」

「はい。申し訳ありません……」


 アヤメが頭を下げると、上官の許可を得て現場へと向かった。今回の件で酷い事をした。このような思いはもう二度としたくなかった。










 捕まった違法術士の証言から、ヤタノハ・クシビは都市部付近の通路を使って逃げて行ったと思われた。

 ヤタノハ・クシビを追っていたらしく、その足取りについても前々から詳しく調べていたようだった。

「………」

 手渡された資料を見ながら、深刻な表情をするアヤメ。クシビは、いつもこんな敵と戦っていたのだ……。

 裏の賞金首リストにも上がっており、命を狙われる存在となっている。


 ――そんなんじゃ、先に他の奴に撃たれちまうぞ。


 そんな事を言っていたのに……自分はこんな状況にまで追い込まれている……。

 アヤメは、手渡された資料を見終えると、そのまま指定されたヤタノハ・クシビの逃走ルートへと向かった。

この違法術士の報告から、痕跡を見つけて残存魔力を辿れば、クシビの足取りを掴めるかもしれない。


 指定された場所では、すでに多くの警護術士隊の調査員が捜索を行っていた。


「お疲れ様です。警護術士隊のみなさん」

「サキノジ英装術士長、この度の調査へのご強力、感謝いたします」

「いえ……。私は自分の意志で申し出たのよ。お世話になるのはこちらだわ」

 静かにそう挨拶を交わすと、アヤメは暗い路地の隅々を探っていく。


 せめて、自分に今できる事はしておかなければならない……。

 クシビを探さなくては――。またクシビに会って、せめて話を聞かなければ。


 アヤメは魔力の残存を辿り、報告にされた場所の周辺を警護術士隊と共に探っていった。

 長い時間が過ぎて行き、それでも成果は見られない。


「魔力の残存は見つかったか?」

「いいえ、こちらは何も」

 そんな声が辺りに響く。浅い魔力の残存が見分けられるのは、相当に細かい作業だ。アヤメも必死に魔力を辿っているか、中々に見つからない。


 クシビは、いつもこうした痕跡を残さない。特殊な魔術で、残存魔力すら消していく。

 だからこそ、こうして都市部を騒がせる術士となっているのだ――。

 だが、あの時の戦闘は激しかった……。その痕跡が僅かでも残っているとしたら……。


「ヤタノハ・クシビの物と思われる反応がありました!」

 その時、発見を知らせる声が響く。アヤメや他の調査隊員達も驚いて声のした方を振り返った。

 クシビの足跡と思われる反応が見つかったのだ――。


「――!」

 急いで駆け出すアヤメ。すぐに声のした場所へと全員が集まった。


「そんな……」

 しかし、その場所を見た時、アヤメは思わず声を漏らす。

 ヤタノハ・クシビの痕跡を目の前にして呆然とする。


 そこには――薄い血痕だけが残されていた。


「血痕の周辺に残存魔力の反応があります……。これは間違いなくヤタノハ・クシビの物です」

 発見した隊員の言葉に、アヤメの表情が変わる。あの時の惨状が脳裏に蘇り、体が震えそうになる――。


「ここで倒れたのか?」調査員の一人が聞くと、見つけた隊員が否定した。

「いえ……。ここで倒れたのは事実ですが、戦闘の痕跡が見られません。この場で力尽きたのなら、そこに遺体があるはずですが……」 

「――っ!」

 遺体と言う言葉にアヤメは反応する。想像した恐怖で思わず目を背けそうになる。

 クシビの――遺体……?


「測定時からして、ちょうど大規模な戦闘があった直後だと推測されます。その時、既にヤタノハ・クシビは重傷を負っていたものと思われます」

「そんな……!」

 アヤメが声を上げる。じゃあ、クシビはあの時すでに倒れるほどの重傷を負っていたのだ。


 なのに、私を庇ったから――。


 愕然とする思いだった。普通に話していたと思ったクシビが、すでに倒れるほどの重傷を負っていて――。

「サキノジ隊長?! 大丈夫ですか!?」

「ごめんなさい。大丈夫だから……」

 アヤメの反応に、調査員達も心配する。周りも流石に気の毒に感じていた。

 そのまま、隊員が話を続ける。


「ですが、残存魔力だけがここでバッタリと途絶えています」

 その違和感のある言葉を述べて、さらに調査員二人が話し合う。


「転移魔法を行使したという可能性は?」

「考えられますが……。推測される負傷状態から転移魔法を行使する余力があるのは考え辛いかと……」

 調査が進むにつれて、あり得ない見方が広がった。他の隊員達も不自然に気付いていく。


「じゃ、じゃあ……。クシビはここで倒れて……消えたという事……?」

 慎重に質問するアヤメ。それに、調査員の一人が半信半疑のまま答える。


「残存魔力による行動推測の結果では、そのようになりますが……。」

 今までに無い出来事に、周りの調査員達も戸惑っていた。


 何が起こったのかを詳しく調べる為、周りのデータについて議論が交わされている。しかし、どれもこれも手掛かりになるような物はなく、目の前の痕跡だけが残されている。


「そんな……。どうして……」

 もしかしたら、死んでいるのかもしれないと思うと、アヤメは震えを抑えきれなかった。

 あれだけ傷を負っていたのだ……。もし残党に襲われたのだとしたら、無事ではすまない。


 しかし、戦闘の痕跡は無く、仲間の誰かが持ち帰ったとしても、こんなわかりやすい血痕や痕跡だけを残していくはずもない。

 クシビの仲間じゃない誰かが助けた可能性は――。


「………。」

 隊員達やアヤメは色々と考えてみるが、やはり理由は思い浮かばなかった。

 クシビは、ここで倒れて――その痕跡を残したまま、消えた。

 それは、今までに前例の無い検証結果だった。


「引き続き、捜査を続けます。この僅かな血痕から、さらに周りを探索していきます」

「……わかりました。私も続けます」

 そう伝えると、アヤメと調査員達は、捜索を再開した。









「シズネ、クシビは見つかったか!?」ヒマリの焦った声が響く。

「いえ……。まだです。情報屋の方にも急いで探してもらっていますが、未だ足取りは掴めていません」

 店内では慌ただしい状況が続いていた。


「まさか連絡もせず姿を消すとは……。あやつめ、まったく何をやっておるのじゃ……!」

 怒るヒマリ。未だ多くの作業が立て込んでいた。


「ぬぬぬ……どこかをほっつき歩いておったら只では済まさぬぞ……!」

 急いで地図周辺を探っていくヒマリ。クシビが何かしらの異常に巻き込まれたのは明白だ。しかし、そうそう簡単にやられる奴じゃないというのも十分によく知っている。


 一体、何が起こっているのか――。


 先日、クシビが姿を消した。

 何が起こったのかはわからなかったが、戦闘の痕跡と思われる物が外放区の一部で見つかっている。

 すでに警護術士隊の調査員が調べている状況だ。だが、クシビの足取りだけがバッタリと途絶えている。


「シズネよ、術式と地図をもう一つ用意してくれ。言の葉の消耗が激しくなってきた」  

「わかりました……」

 ヒマリは急いで独自魔術を使って都市内を探っていく。クシビの残存魔力でも残っていれば足取りを追えそうなものだが……。

 あやつが音沙汰なく姿を消すなどただ事ではない。下手なヘマをしおったな……! 


「く………!」

 ヒマリが街の隅々、外放区の端々まで魔力を行き渡らせるが、それらしき反応は見当たらなかった。



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