第19話
「こんな感じかな?」
私はこの前良子と一緒に服を見に行ったときに買った服の一つを着て、出かける準備をしていた。佐々木さんとデートすると考えるとあまり気がのらないのだけど、少し買い物してイイトコにいくという話だから、結局OKしてしまった。シた後だったから断りづらかったし。……なんというか、美咲とするより援交感が強い。家デートじゃないからだろうか。
ガマ口財布を持って、ついでに水鉄砲も入れる。美咲曰く、自衛手段は常に携帯しておけとか。水鉄砲の性能については伝えてないし、そもそも呪いの品二段目以降に特別な力があるということ自体伝えていないから、ソレについて話しているわけじゃないだろうけど。お金を持っている私は、何かしら自衛手段があると勝手に思っているのだろう。……たぶん。
「行ってきまーす」
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「待った?」
「いえ、いま来たところですよ」
そう言って、お約束を返してくれる遥。
わざわざ約束時間ギリギリの5分前に来たのはこれがやりたかったから、なんて言ったら怒るだろうか。約束時間前なのには変わりないので良いと思うけど。
「実際いつから待ってたの?」
「7時過ぎですね」
早いわ!
今8時前だよ。
「ご、ごめんね?」
「いえいえ、払ってもらう側が遅れてしまうとあまりにも気まずいので」
「…………」
別に、シてくれるんだから遥とは対等だと思っているんだけど。
……いや、そもそも奢る約束自体はしてないんだっけ。
私の中では買ってあげる代わりに、サせて貰う予定だったてだけで。
「では、行きましょうか」
そう言って、遥は自然に私の手を取る。
「……はい」
ちょっとニヤけた。買い物の後直ぐスると言われているだけに、その手の感触を意識してしまう。
先導される間、彼女のボリューミーな体に眼が行った。胸元の開いた黒いブラウスに太ももが剥き出しの短すぎるスカート。私を誘惑するかのようなその姿に、思わず手が伸びそうになってしまう。
「彩花さん」
ビクゥッ!
「な、何?」
遥が、私の手を握り直す。絡み合うような恋人繋に。
「情熱的な眼で見てくださるのは嬉しいのですが――」
「っ」
遥の口が私の耳元に来る。
「――もう少し、待ってくださいね?」
囁くその声が、私の頭を蕩けさせた。
「……はい」
それから夢見心地で、いつの間にか着いたブランド店では、30万のバッグを買わされた。
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…………詐欺にあった気分だぁ。
ホテルでぽけーっと遥がシャワーを浴びるのを待っていると、正気に戻って来た。まー、遥とは学校でも遊べそうだし、30万は良子と比べても5×4と最初の10で5回分だし、すぐに元は取れるでしょう。
ガチャ
「おまたせしました」
「っ!」
バスタオルを撒いた遥がそこにいた。元々エロい体をしていたが、体のラインがしっかり出ていると、もう淫らとか、そんな感想が浮かんでくる。
「あ、彩花さんはいいですよ。
来る前にシャワーを浴びてきたでしょう?」
「ははは……」
はい。
すぐだって言ってたし。
「彩花さんは、こういうの初めてですか?」
そう言いながら、ベットに座る私の隣に腰を下ろす。
「えっと、最近忙しいみたいだけど、お金の関係を結んでいる人が一人……」
「まぁ!
それで昨日も私の誘いですぐ濡らしてらしたのね」
「~~~~」
口に出されると恥ずかしいな。
「本命の良子さん以外と複数の関係を持つなんて、イケない人ですね」
遥の手が私の膝と背に回る。
「~~~~!
り、良子と毎日イチャついてるから、すぐムラムラしちゃって……」
それぞれを撫で回しながら、遥は口も動かす。
「そういえば、断られたのにまだ仲はいいとか」
「はい。
私がエッチな気分でなければ、ハグとか、最近はほっぺにキスまでしてくれて……」
「…………へぇー。
そうだとしても――」
「へ?」
ポフン、と私を遥が優しく押し倒す。
「――私の前で惚気けられるのは、いい気分じゃないですね」
私も一応百合の端くれですから、そんなふうに続けながら、私は唇を奪われた。
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「そんな感じで、すごかったんだよー!」
「はぁ」
若干不機嫌な良子に、午前中はどうだった? って聞かれたから思わず語ってしまった。遥の体と言葉責め、どれもエロくてすごかったと。
「胸もお尻もおっきくて、あれ絶対遺伝だよね!」
「……どうせ私のはちっさいですよー」
拗ねてしまった。
私は良子のなら、あんな演出されなくても発情しちゃうよ?
「私は良子が好きなんだよ?」
そう言いながら、良子にえいやっと後ろから抱きつく。
「むぅ」
「良子がその気になってくれたらー」
私は良子のお腹を人差し指でくるくると撫でる。
そのまま言葉を続ける前に、遮られた。
「……そういうことをされたの?」
ぬ。
ぬ、だ。
自然とされたことをしてしまった。
別にエッチな気分でした訳ではなかったから怯えられていることもないけれど、怒られているのは分かる。
不味ったなぁ。
「良子でムラムラするから、それを発散するために仕方ないんだよぉ!」
私はぎゅーっと抱きついて、誤魔化しに掛かった。
「…………」
しかし、じーっと横目で見られて、私は観念する。
「ごめんなさい」
「ん」
良子はそれだけ言って、私に体重を預けた。
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「あー、疲れた」
勉強に疲れた、というより気疲れが大きそうだ。今日一日で、人形と二段目の品を三回ずつ取りに行かせたのだから。
会った人数も6人……いや、突然襲来した玲奈合わせて7人か。余った時間はすべて勉強に当てはしたものの、説得の言葉や話の流れを考えて、覚えて、実行するのに神経を使いすぎた。勉強はあまり進んでいない。元々土曜は丸々バイトに使っていたのだから文句はないけど。
「ん?」
私宛にメッセージ?
「…………はぁ」
私は時間外労働手当が出ないか、彩花に相談するべきだろう。




