表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/30

第18話


 結局、遥には流されてしまったが、これは悪くない結果でもある。美咲が忙しくなるほど呪いの品収集は順調になるけど、その分私の相手が出来なくなるという欠点が補えるというものだ。遥自身も金目当てみたいな所ありそうだし、美咲と出来ないときに遥とする関係くらいでちょうどいいでしょう。買ってほしいものがあるなら買えばいいし。


「スンスン」

「ん?」


 昨日良子が挑発してきたように、今日も後ろから良子を抱きしめるような格好でオカルトドラマを見ていると、なぜか良子が私の匂いを嗅いでくる。

 目覚めたのかな?


「……増やしたの?」

「ぶっ」


 遥と学校で致したのだ。もちろん家に帰ってからシャワーを浴びた。けど、なぜか増やしたことを気づかれました。


「学校では中島さんと会わないって言ってたし。

 それでもシャワー浴びてきたってことは、中島さん以外とシてきたって事でしょ」

「~~~~」


 怖い。

 良子が名探偵だ。


 しかし、私の顔を覗き込むように、呆れた目で見上げる良子の顔は素晴らしかった。

 思わず抱きしめる。


「うぁ……」

「あー、一生こうしていたい」


 好きな人と一緒にいたい。それだけの感情なら良子も無碍にはしない。というか良子もまんざらではないみたいだしね。……性的な感情を持ってくれないだけで、触れ合いそのものは、むしろ良子も好むところである。それはこの前何度も布団に潜って抱き合っていたことからも分かった。


「あ、ドラマ終わった。次の……」

「待った」

「?」


 流していたオカルトドラマが終わり、次のに切り替えようとする良子にストップを掛ける。


「良子、この前買った服、届いたよね?」

「あー」


 私は部屋の隅に置かれていたダンボール箱を指して言った。


「着ない?」

「……外いくの?」


 外に行きたくなさそうな良子。本当に引きこもり気質だよね。


「ここで着ればいいじゃん!」

「……別にいいけど」


 がそごそとダンボールを開いていく。

 ここで着なきゃ、これだけの数の服、多分一生着ないよ?


「どれがいいかなー」

「全部着せるんでしょ?」

「堪能したいし、一つ着せたら、ドラマとか雑誌一つ終わるまでそのままでいて欲しいしー…………最初はこれ!」

「……派手だ」


 私は赤を基調としたドレスを選ぶ。

 両肩が出ていて、ちょっとエッチ。


「早く早く!」

「はいはい」


 今着ている服を脱いで、先に短パンも脱ぎ捨てる。

 色気もへったくれもない脱ぎ方に、私はイタズラしたくなった。


「えいっ」

「ひゃ!」

 

 後ろから抱きついて、お腹を軽くくすぐる。


「もうちょっとお淑やかにー!」

「くすぐったいっ!

…………それ、彩花が発情するだけだし」

「ぬぅ。

 でも、良子も抱き合うのは嫌いじゃないでしょ?」

「……この格好は流石に恥ずかしいんだけど」

「~~~~」

 

 下着姿で恥ずかしがって頬を染める良子が私にクリティカルヒット。


 かーわーいーいー!


「キスしていい?」


 その言葉に、良子は無言で私の頬を片手で摘む。摘んだ手をそのままに、振り返った。


「あ、別にそんなつもりじゃ」


 また怖がらせてしまったかと若干強張ったその時だ。

 俯いたまま私の顔の横に、正面からハグされて――


「ちゅっ」

「――――へ?」


 良子が、私の頬に……!?


「…………」

 

 真っ赤に染まって無言で離れた良子を尻目に、私は良子のベットに顔から突っ込んだ。


「~~~~」


 ぽふぽふと布団を叩く。


「……何やってんの?」

「だって、良子が、良子が」 

「なんでこれくらいで恥ずかしがってるの……」


 中学生の時、私の唇を不意打ちで奪ってくれた彩花が、と良子が続ける。


「良子がしてくれるとは思わなくてぇ」

「……はぁ」


 ん!?

 私の上に、温かい重みを感じる……。


「り、良子?」

「やらしーことはできないけど、私も彩花のこと大好きだからねー」

「…………うぅ」


 涙が出てきて、私はなかなか顔を上げることが出来なかった。




「結局着せ替えはするんだ」

「もちろん!」


 誤魔化されたりはしないんだからね!


=================================


「ふー」


 なんとか一日で人形一つと、それと引き換えに二段目の呪いの品一つを手に入れる事ができた。

 うまく行けば、土曜の午前に一つ、午後始まって夕方付近までで一つ、夜終わるまでに一つ手に入る。つまり、土曜日中に廃墟にある二段目の呪いの品をすべて回収できることになる。

 私の収入もこの2日で32万入ることに。うまく行けばだけど。

 これだけあれば、定期テストまで勉強に集中できる、かな。

 

「…………」


 彩花の性欲解消も佐々木遥って子がしてくれるみたいだし。

 

 ……やっと嫌悪感が薄れてきたところだったから、なんだかなぁという感じだけど。


 佐々木さんとの接触は、一応メールで報告が来ていた。曰く、こちらのお金が足りないようなら私とするのを優先してくれるらしい。バイト辞めたのは、彩花からのお金があるからだし、そうでなくては困るけど。


 一応、呪いの品を集め始めたこの時期に? という疑いを抱かなかったわけではない。


 ただ、その経緯から考えて、私はあまり佐々木さんを疑ってはいない。もちろん、お金目当てであることを疑っていない、という話だ。良子に100万以上貢いでいたところを見られていたという話だし、特に不思議ではないだろう。


 しかし、佐々木さんが百合であるかは大分怪しいと見ているけど。


 今回もクラスまで来て白昼堂々と彩花を呼び出してたみたいだし、そんなふうに行動的な百合は、彩花みたいに噂になるもの。私はクラスの人と特に仲がいいという事はないけど、クラスや学校に関係のないコミュニティは築いている。主にバイトやお金関係のものだけど、少なくともそんな人の噂は彩花以外聞いたことがない。佐々木さんがお金に困っていたり、売春していたりという話は聞かないし、恐らく女同士なら特に抵抗や嫌悪感もないからお金のために彩花をターゲットにしたというだけの話だろう。


「ん」


 メッセージが飛んできた。

 佐々木さんについて、一応同じ部活に所属してる知り合い2人に聞いてみたが、特に変わったことはないようだ。特にいい記録を残しているわけでもなく、数人の中がいい友達がいて、帰りにそのへんで遊んでいたりする、普通の学生。

 

 なら、後心配するべきは彩花のお金の総量。今までの話から、なぜ彩花があんな大金を持っているかは見当がついている。十中八九呪いの品関連だろう。呪いの品をどこかに売っているのか、呪いの品を利用してお金を稼いでいるのか。下手をすれば、あの廃墟の三段目、それも彩花が持っているのかもしれない。まぁ、他の場所もあるみたいだし、廃墟産の物で、とは限らないけど。……正直、玲奈ですら危うかったあの二段目より高い難易度って、彩花にはクリアできる気がしないのよねぇ。

 

 話が逸れたけど、だから私は普通の方法で彩花のお金が尽きることはないだろうと確信していた。


「変な契約でも結ばされなきゃ良いけど」


 私はそこで思考を打ち切って、勉強に戻る。

 

 佐々木さんのお陰で取れた、勉強時間に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ