第13話
「うわー」
私は今日、美咲を通してマジよくわかんない頼みを受けた。廃墟にある祭壇の、人形を一つ取ってきてほしいとか。報酬はなんと10万。援交するより楽そうだし? 美咲の言い分では、人形を取ってくるだけなら危険もなさそうっていうし。てかなさそうってなんだし! まー、美咲真面目だし、美咲が言うなら大丈夫そうだし、私は軽く引き受けた。美咲はいつかのように、心配そうな目で見てきたけど、ま、大丈夫っしょ。何かあっても、人形とってこれば10万出るっていうし。死ぬようなことはないだろうし。つか自分で頼んで自分で心配するとか意味分かんないし!
とりま、ス○ホを頼りに廃墟に行って、エレベーターに入って、13階に降りようとしたときだ。
奥にある祭壇から何かを持ち出さなければならない、なんて意味不明な命令が、私の頭に届いたのは。
マジよくわかんないんですけど。
あ、祭壇の位置がなんとなく分かる。
ラッキー。
私は美咲の要求通り、さっさと祭壇のある部屋に一直線で走り抜けた。
玄関口のドアを開けて、そのまま奥へ。
「これっしょ」
祭壇の一段目にある人形達の一体をさっとひったくり、バックに押し込んで、また私は走り始めた。
なんか一週間以内に死亡がなんだって聞こえた気がするけど無視。どうせすぐに渡すし。渡せばなんとかなるっしょ。
すぐに走り出したから、エレベーターまでの往復ダッシュになるけど、これでも一応中学まで陸上やってたかんね。こんなことで息が切れたり、立ち止まるほどやわじゃない。やわじゃないけど、玄関口のドアをくぐったその時だ。
ガコン
「ん?」
思わず、私は立ち止まって、振り向いた。
物音がしたら、そりゃ振りむくっしょ?
こんな廃墟から、どんなホームレスが出てくんのかって目を凝らしたら――
「ァァァァ」
――ふぁ?
やばッ!
頭ついてないし!
写真を撮ってツ○ッターに上げるか一瞬迷っちゃったけど、結局私は走り出した。エレベーターに向かって猛ダッシュだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
私はエレベーターのボタンを連打する。
後ろを振り向くと、まだ玄関口から出てきてすっごくゆっくり歩いてくるデケェ顔なしお化けがいて――
パシャリ
――よしっ!
同時に開き出したエレベーターに滑り込み、閉のボタンを連打。
「ふー」
ツ○ッターに上げたらバズるかな?
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「って思ってたのに見てよこれ!」
マジありえねーし!
そう言いながら、私は真っ暗な写真データを美咲に見せる。
私は今、美咲の家に直行し、人形を渡す前に廃墟の中がどうだったか説明させられていた。
「写真取る余裕があったんですか……」
「余裕なんてないない!
マジやばかったし!」
パねーわ。
あれきぐるみじゃねーっしょ。
口止め料もらっちゃってるから喋らないけど!
そんな感じで私は何があったかを洗いざらいはいていく。
「つまり、玄関口から出るまでは現れなかったんですね」
「そうそう!
出る前に現れてたらやばかったわ!
あんなでっけーの倒せる気しねぇし!」
危険はないって確かに後から現れるならあんなおっせぇお化けが私に追いつけるわけないけどさ!
「ありがとうございました。
10万です。人形を」
「あぁ!
後、その口調やめろし」
「バイトみたいなものですから」
あー。バイトじゃしゃあない。
私は人形の代わりに10万をもらって席を立った。
「んじゃ、またなんかあったらよろー!」
「あ、最後に一つ」
「ん?」
一週間以内に死亡するの呪いなら解呪されたっぽいよ?
「廃墟の中、どうなってたか覚えてますか?」
「は?
怪物がいたって話たっしょ?」
「っ!
ありがとうございます」
「ん。
じゃ、またー!」
なんでまたそんなこと?
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呪いの人形でも、別に記憶は消えなかった、か。
私は美咲から電話で伝えられた情報を整理する。
ということは、記憶が消えるのは呪いの人形を渡された場合のみ?
美咲と考えた計画通りに話が進めば、次でその検証も同時に出来るけど……。
今回になって二段目ではなく一段目を取りに行かせたのは玲奈の攻略情報と美咲の記憶が消えていないことから、新たな手順を試すことにしたからだ。それは、一人目に呪いの人形を取りに行かせて、二人目にその呪いの人形を保有させ、攻略情報を伝える。それを元に二段目のアイテムを取りに行かせる手順である。
この手順の問題として、人形を取りに行くのは安全なのか、攻略情報を聞いても謎空間が変化したりしないか、結局二段目を取りに行かせる際、呪いの人形を置いてくることになるので、掛かる費用と時間を増やすだけの価値はあるのか。
ただ、美咲に言わせれば私達にとって一番問題なのは、廃墟に向かわせられる人間の数が限られていること。これをどれだけ減らさずに効率よく、呪いのアイテムを回収していけるかどうかはとても大事になってくるとか。最悪、呪いの人形を取りに行かせた勢から同じようなことをさせられる人間の心当たりを聞いてスカウトしていくという方法も将来的には取ることになるかもしれないと。この方法はどうしても信頼性が落ちるから取りたくはなさそうだったけど。
そして、今回の情報によって、この事情は少し変わった。呪いの人形を取りに行ったものの記憶が消えないのであれば、呪いの人形をこちら側で保有した上で呪いの人形を取りに行ったものに攻略情報を伝え、二段目のアイテムを取りに行かせることができる。これなら時間効率は大分上がるだろうし、呪いの人形を私に回せば、恐らく死亡期間の延長一週間分にもなる。もちろん、呪いの人形に良子の心を変化させることなんて出来ないだろうから、死亡期間の延長面で問題なくとも、二段目の収集は続ける。
というか、これでいいなら、常に二段目の収集前に呪いの人形収集を義務化すればいいのか。そうすれば呪いの人形も手に入るし、攻略情報も渡せるし、その人にとっても二回目の廃墟攻略になるからある程度の冷静さや余裕を持って攻略に挑めるはず。
その辺り、また明日美咲の家で話し合おう。
「ふぁ~」
今日はもう眠い。
良子と一緒に20分程寝たら起こされてオカルト話に付き合って、また20分ほど寝て起こされてを繰り返したから頭がボケボケしている。良子はとっても満足そうだったので別にいいのだけど、なぜか一緒に布団に入ってゴロゴロするのが気に入ったらしい。その調子で性欲全開の私も受け入れてくれないかなぁ……Zzzz




