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若き女騎士の鏡像

作者: 霞弥佳
掲載日:2019/07/30

鏡は嫌い。

貧乏よりも嫌い。

醜男に抱かれるよりも、もっと嫌い。


私の顔がこの世に二つと存在するなんてことが耐えられない。

私の白眉の美貌は、美醜で優劣を判断する社会における至上の財産。

神より賜りし天恵……否、きっと神すら羨み跪く。


そう。

その様さえ見せつけてくれればよい。

坊主よ、手を合わせよ。

農奴よ、我が寵愛に応え命を燃やせ。

帝よ、身の程を知るとよい。


それこそが、私の平安。私の心の平穏にして、あるべき原風景。

妬みと嫉み、大いに結構。持たざるものの僻みほど、私を潤すものはない。


私が、私こそが鏡である。

愚衆が己が理想を仮託し押し付け、そうして世に生を受けたのが私である。

私は理想である。民衆の理想である、美と愛の化身ウェヌスの写し鏡に他ならぬ。


下民どもの信仰と憧憬は、鏡を見るより確かなものだ。

銀の十字を胸元に、無様ッたらしく泣き腫らし、私に向けて首を垂れ、私の爪先に接吻する。

私は、そう信じられるに足る存在。

私以外は、そうせずにはいられない存在。


それで十分。

異論など絶無。

是非もなし。


故にこそ、私の貌を不躾にも模倣する鏡など不要である。

貌など見ずとも、私の魂は美を受容している。

この御霊と、美の神髄とが不可分となった私に、主観以外の評価基準など無用。


聖女は、二人として要らぬ。


勇者は、二人として要らぬ。


魔王は、一人として要らぬ。


鏡など、一欠ひとかけたりとも要らぬ。

すべて砕いて灼き溶かせ。


この地上に、私は二人と必要ない。

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