第八十七話
ユーカとイルミを伯爵邸に招いた。応接室へ通すと大きさにまた驚く。
「で、何で伯爵になってるの?」
座るや否やイルミが噛みついて来る。
ユーリは、話についていけてないユーカも居るので、子爵邸の話から始める。子爵邸を賃貸で借りてイルミに家具を選んでもらった事や、その後戦争があり、それに無理やり参加させられた事、戦争で功績を上げて伯爵になり、この家を買った事などを順に話していく。
「で、新しいこの伯爵家の家具類を2人に選んでもらおうと今日招いた訳です。」
何故か2人に睨まれると敬語になるユーリである。
「用件は解ったけどなんで黙ってたの?」
「黙ってた訳じゃなくて、急に決まったんだよ。」
2人からジト目で見られるユーリ。スマホを2台出して2人に渡す。
「これがあれば今後こう言う事が無くなるから。」
そう言って通信機の使い方を教えて行く。新製品の魔道具に興味を惹かれだんだん機嫌が良くなってくる。
「これは面白いね。毎日ユーリ君に連絡していい?」
む?毎日?2人から?
「それより、2人は進路どうするの?」
「進路?」
「ユーカはもう14歳になったんでしょ?僕もイルミも来月には14歳になるし、そしたら、婚約になるよね?」
途端に2人の顔が真っ赤になる。
「学院は辞めたくないけど、15歳になったら結婚するから、どの道辞める事になるのかな?」
「卒業するのを待って、結婚でも構わないけど?」
「それもなんか嫌だな。」
こう言う時イルミはハッキリと物を言うので気持ちが良い。
「まあ、そんなに先を考えなくても良いから、とりあえず3年生に進級するかどうかが知りたいかな。」
「私はユーリ君が言う通りにしようかと。」
「あ、ユーカ、それはズルいよ~」
「じゃあ、イルミはどうするの?」
「私は・・・どうしようユーリ君?」
「僕はなるべく2人の意見を尊重したいんだけどね。」
「でも、相手がある事だから、一人では決められないよ。」
ユーカが泣きそうな声で呟く。
「そうなんだよね。」
イルミも同意見らしい。
「ん~、困ったな。とりあえず順番に行こうか?まず、進級するのは何のため?」
「魔法使いになる為かな?」
「だよね。でも2人は既に今年の卒業生より実力があるし、魔法師団でも十分やって行ける。宮廷魔導士も夢じゃない。学院に固執する意味は無いと思うよ。でもね、友達を作るのなら学院は貴重な場所になる。」
「確かにそうね。」
イルミの言葉にユーカも頷く。
「一方、14歳で学院を辞めて花嫁修業をする場合。一応貴族の夫人としての教育を受ける事になるね。でも、これは15歳で結婚しても同じ事をやらされるから早いか遅いかの違いだけだね。ただし、1つだけ利点がある。僕と行動する時間が増えるって事かな。」
「なんでそれが利点なの?」
「僕なら魔法も教えられるし、商売も教えられるよ。」
「確かに利点だわ。」
ユーカとイルミが真剣に悩んでいる。
「実はね今度面白い商会を始めたんだ。物を売らない商会なんだけど、興味ある?」
「なにそれ?」
「まあ、学院販売部みたいな物なんだけど、販売は全部人任せで、商品の開発だけをする商会なんだ。」
「口コミの無い学院販売部って感じ?」
「そうだね。ただ、今までは学生をターゲットに商品を作っていたけど、今度はもう少し年齢層の高い所を狙って商品を開発する事になるよ。」
2人がしばし黙り込む。
意を決したようにユーカが手を上げて発言する。
「それっておやつは出ますか?」
って、そこが重要なの?
「僕が居る時は出せるけど、僕は今後領地の開発も行わないといけないので毎日確実とは言い切れないかな。」
「マジックバッグ」
「え?」
「マジックバッグがあれば毎日おやつが食べられる。」
「解りました。アイテムボックスを付与したストッカーをキッチンに用意するよ。それでどう?」
「私はそれでOK。イルミはどうする?」
「報酬は?」
「成果が出るまでは月に金貨1枚。成果が出始めたら歩合制だね。イルミは雑貨屋イルミもあるから、かなり儲かると思うよ。」
「やる。」
「解った。じゃあ明日にでも商会に連れて行くよ。時間は今日と同じで良い?」
「「うん!」」
2人が良い返事をした所で、話題を元に戻す。
「ところで、この家の家具や調度品なんだけど、2人で良さそうな物を選んでくれないかな?お金は気にしなくて良いから、良さそうな物を買ってこの家に運ぶ様に店の人に言ってくれればよいからね。2人の事は執事のフロッシュさんに話してあるから、それで通じるよ。あと、少し現金も渡して置くので小物で良い物があったらそれも買って置いて。」
「解った。じゃあ、何が足りないか、家の中を見せてくれる?」
「構わないよ自由に見て回って。」
イルミとユーカが、あちこち見て回ってる間にユーリは一服する。今日はコーヒーの気分だ。
20分程すると2人が戻って来た。
「この家大きすぎ!全部は無理だから、まず、1階から始めるわ。」
「ですね。それからお風呂に見慣れない物があったのですが何でしょう?」
「見慣れない物?」
「なんと言うかホースの様な物の先に持つところが付いた様な物です。」
「ああ、それはシャワーだよ。新しい商会にも付いているからそこで体験すると良いよ。」
「シャワー?」
「体や頭に着いた泡を洗い流す道具だね。」
「シャンプーや石鹸と相性が良さそうな道具ね。」
すぐにそこに直結するのはイルミの頭の良さを証明している。
「とりあえず今日は買い物に集中してね。商会は明日連れて行くから、仕事の話はその時に。」
「解りました~」
「じゃあ、馬車を貸すから買い物したらそのまま家に帰って良いよ。」
「そう言えば、あの馬車も何気に凄くない?」
「まあ、ちょっとばかり改造したからね。その内販売するかもね。」
2人を見送り、何かあったら通信機で連絡する様に伝える。
そう言えばグラストフの領主邸の執事が決まったって言ってたな。フロッシュさんに尋ねてみると、既に使用人もだいぶ揃って来ている様だ。これは一度会いに行かないとな。ちなみに名前は、マードルさんと言うらしい。フロッシュさん曰く若いがかなりの切れ者らしい。会うのが楽しみだ。
明日は午後にバート商会に行くので午前中にグラストフへ行こう。




