第六十八話
学院に休みを貰い、グラストフへ来ている。馬車で1日の距離なのでそう遠い感じはしないのだが道が悪い。ユーリの魔改造馬車でも結構揺れる。普通の馬車なら尻が痛くて途中で引き返していたかもしれない。
道路の整備は優先課題だな。それに思ったより王都の周りが開けてないな。この辺はフラム侯爵の領地だったはずだが、侯爵は土地開発に興味が無いのだろうか?馬車で1日と言う事は野営が必要になる。町や村があれば泊めて貰おうと思って居たのだが、どうやらそう言った物は無さそうだ。多分南側にあるんだろうな。朝10時に出てもうすぐ18時。御者に野営をする事を伝える。
「護衛も居ませんが野営なんてして大丈夫ですか?」
「大丈夫。ここらの魔物はそう強く無いから。それに魔法で障壁を張るからね。」
まず、馬車を中心に半径4メートル程度の魔法障壁を張る。それから夕食の準備をする。準備と言っても火は使わない。アイテムボックスから出来上がった料理を出して行く。簡単な物で悪いけどと言ってパンと煮込み、サラダなどを出す。
「いや、野営でこれはご馳走ですよ。」
「そう?遠慮なく食べてね。」
このままのペースで行けば明日のお昼にはグラストフの町に着くだろう。
グラストフに着いたユーリはあまりの活気の無さに驚いた。一応宿場町なので宿屋はそれなりに繁盛している。だが、それ以外の商会や商店は寂れる一方であった。これを立て直すのは結構手間がかかるな。
とりあえず、手近な宿屋に入ってみる。
「いらっしゃい!泊りかい?それともご飯?」
「1泊頼むよ。食事付きで。」
御者にはお金を渡して他の宿に泊まる様に指示してある。ユーリは冒険者で通す事にした。年齢的に商人は無理があるだろう。
「食事つきだと銀貨1枚と大銅貨2枚になるけどいいかい?」
「構わないよ。」
そう言ってユーリはポケットを探るふりをしながらアイテムボックスからお金を出す。
「鍵はこれね。部屋は2階に上がって左の部屋202号室だ。食事は朝と夕の2回夕飯は17時から20時まで。朝食は7時から10時までに食べとくれ。」
「解った。体を拭くお湯とか無いのかな?」
「お湯は銅貨3枚だよ。使うかい?」
「頼むよ。ほら銅貨3枚。」
「じゃあ、湯が湧いたら持って行くから先に部屋で待ってな。」
そう言うとおばちゃんは奥へ入って行った。ユーリは階段を上がり202号室へ入る。値段の割には綺麗な部屋だ。でも一応クリーンを掛けて置く。平民の普段着に着替えて待っているとノックの音が聞こえた。
タライにお湯が入っている。
「ありがとう。ところで昼飯を食べたいんだがお勧めの店ってある?」
「町の中央へ行くと屋台が沢山出てるよ。その辺の下手な店で食べるより安くて美味いよ。」
「なるほど、それは良い情報ありがとう!」
ユーリはクリーンで体も綺麗にしたのでお湯を使う必要は無かった。では何故お湯を注文したか、それは湯を使う習慣がある事の確認と値段が知りたかったからだ。シャンプーや石鹸を売るのであればこの情報は必須だ。
宿屋のおばちゃんに言われた通りに町の中央へと歩いて行く。近づくにつれ良い匂いがしてくる。
この匂い?ベンマック商会に売ったハーブソルトでは?旅商人を通じてこんな所まで来ていたのか。
屋台は串焼き屋が多い。とりあえず1本買って食べてみる。塩味だったが、炭火で焼いてあるのでそれなりに美味しい。他にも煮込みなどもあったので食べてみた。ちょっと癖のある味だが不味くはない。王都の人間と同じだ。味覚はちゃんとしているが、調味料が無いのだ。それならばやりようは幾らでもある。
食はまだ良い。他の産業がほぼ機能していない。必要な物があれば旅商人から買えばよい。そう言う事で地場産業が育たない。この町ならではの名物、名産を何か考えないと行けないな。
中央広場でぐるっと360度町を見回してみた。背の高い建物は宿屋の2階建てが最大だ。おかげで結構遠くまで見渡せる。北を見ると山が見える。結構近くに感じる。あれが開拓に失敗した北の森か。この町の規模を考えると北の森の開拓はいずれ必要になるだろう。
近くにある屋台のおじさんからお菓子の様な物を買い、この町に公衆浴場は無いか聞いてみた。
「昔はあったらしいが、今は無いな。俺もここへ来て1年くらいしか経ってないから詳しい話は知らないけど、火事で燃えたって聞いたよ。」
ほう?昔は公衆浴場があったのか、だとすると風呂に入る習慣も全く無い訳では無さそうだ。
次に商業ギルドへ向かった。グラストフは小さな町なので冒険者ギルドは無い、しかし、商業ギルドは小さな町でも出張所と言う形で存在する。
ギルドの出張所に入ると旅商人が多いせいか結構賑わっている。ざっと見まわしてみるが通常業務の窓口は何処も空いている。どうやらこの町では商業は壊滅的なのかもしれない。この土地でアトマスさんの様な有能な人材が見つかるのだろうか?やはり王都で人材を探した方が現実的なのかもしれない。王都に戻ったらアトマスさんにでも相談してみるか。
だいたい調査は終わったが、思ったより悪い状態ではない。ユーリの頭の中では都市改造計画のプランがだいたい出来上がっている。上手くいけば1年かからずに人口を倍増出来るであろう。
結果に満足して宿屋に帰る。夕食の時間だと言うので食堂で頂く。やはり何を食べても塩の味がする。半分ほど食べて席を立ち自分の部屋に帰ってラーメンをすするユーリであった。




