第四十六話
季節は廻り、ユーリ達は2年生になった。
通常、1年生から2年生に進級する場合、Aクラスの庶民の数は激減する。しかし、今年は例年と様相が違った。なんとAクラスの庶民の数が10人に増えていたのだ。これは明らかにユーリの作った参考書の影響だろう。1年の学年末に進級テストがある。そのテストの結果が通常ではありえない平均数値を叩き出していた。これは1年生に限らず、5年生までの全ての生徒にも言えるのだが、例年より魔力量が多く、座学の点数も良い。特に魔力量に関しては顕著で、新2年生は卒業生より高い平均値を出している。
例年の卒業生の魔力量の平均は300程度。しかし、今年の新2年生は既にそれを上回る数値を叩き出している生徒が多数居る。特に庶民に多い。中には500超えのバケモノも居ると言う話だ。まあ、ユーリたち4人は事前にユーリの魔法で魔力量を偽装したのだが。結果、1~5年生の中で2年生が一番魔力量が多いと言う事になってしまい。教師陣は頭を抱えるのであった。更に他の学年でも生徒によって魔力量に大差がついてしまい。一律に教えるのが難しくなってしまった。
「ねえ、ユーリ。今年も参考書販売するの?」
最近平民3人組はユーリを呼び捨てにしている。それだけ仲間意識が高くなったのだとユーリは嬉しく思う。
「いや、今年はやめて置こうかと。なんか効果が高すぎて色々問題が起こってるらしいし。」
「勿体ないね。他の商品は販売続けるんでしょ?」
「そうだね。また新製品も考えないとね。」
そんな、話をしていると、ユーリに校長室から呼び出しが掛かった。
「校長から呼び出しって、何したの?」
「いや、何もした覚えは無いけど。」
校長室へ急ぐと、校長の他にも教師が何人か居た。
「何の御用でしょうか?」
「あ~、ユーライナ君。ちょっと聞きたいのだが、今年も参考書の販売はするのかね?」
「いえ、今の所考えていません。ちょっと効果が大きすぎる様なので。」
「それなら、学校に販売しては貰えないだろうか?」
「学校へですか?」
「副読本として1年生全員に配りたい。他の学年でも教師が読んで参考資料としたいと言っている。」
「何冊くらい必要なんですか?」
「出来れば300冊は欲しい。」
ユーリはマジックバッグを出し校長の机の上に置いた。
「魔力操作の参考書ですよね?この中に300冊入ってます。バッグは後で返して下さいね。」
「すまんね。ところで、学年末テストのアレは実力かね?」
「あ~、そう言う事にして置いてくれると助かります。」
「ふむ。解った。そうして置こう。」
これで貸し借り無しって事だろう。校長、意外と食えない男である。
校長室から戻り教室へ入ると3人組が駆け寄って来た。
「なんだった?」
「参考書を教科書に使いたいそうだ。」
「へぇ。以外に校長も見る目あるね。あれはこのまま埋もれさせたら勿体ないからね。」
「ところで、新しくAクラスに上がって来た平民だけど、みんな商会関係者?」
「7人中6人はね。1人は確か、貴族の妾腹の子だったと思うよ。」
「へぇ。流石に情報には敏感だね。」
ユーリは商会の子供たちとなるべく接点を作って置きたいと考えている。そこで、部活動を発足させようと考えている。
「部活動って認められてるよね?」
「そうだね、確か部員が5人以上で、教員会議で承認されれば活動できるはず。」
「部員5人か、今の所4人だから、最低一人は勧誘しないとな。誰か候補居る?」
「ん~、6人とも中規模商会の子供だから、私は面識ないんだよね。ユーカは?」
「私は、リット商会のキルケさんとは家が近いので多少の面識はあります。」
「僕はゾーン商会の息子とは面識がありますが、本当に数回会った事がある程度ですね。」
「なるほど、そうなると総当たりで全員に勧誘掛けるしかないな。」
ユーリたちは4人で6人に勧誘を掛けて回った。結果2人が入部してくれる事になった。こうして2年になっても学院販売部は継続する事になるのだ。
正式な部活として認められた事で1つだけ恩恵があった。それは部室を貰えたことだ。今までは、地下の練習場で会議をしていたのだ。これからは教室のある棟で堂々と会議が出来るし、部室を販売場所として使っても問題が無い。
ちなみに地下の練習場は新部員の2人にも開放した。
新部員は女子1名、ユーカの知り合いのキルケさん。それから男子1名、調理器具を扱っているメルア商会のアルトの2名だ。もう少し部の名前が知られて来たら1年生からも部員を募っても良いと考えている。
「キルケさんとアルトは僕の書いた魔力操作の参考書買ってくれたんだよね?」
「はい、あれのお陰でAクラスになれました。他にもリップとか鏡も買いましたよ。」
「僕も参考書は4冊全部買いましたよ。あと石鹸とシャンプーも常用しています。」
ありがたい事である。やはり商会の子女だけあって流行り物に敏感なんだろう。
「と言う事で、2人に新入部の儀式をして貰います。」
「儀式、ですか?」
「大丈夫痛くないし、後で良いことあるよ。はい、放課後に全員練習場へ集合!」
「って、ユーリ、まさかアレをやるの?」
「そうだよ、不公平は良く無いでしょ?」
「そうだけど、大丈夫かな?」
会話を聞いて、何をされるんだろうとビビる新入部員2人だった。




