第四十四話
ユーリの知らない所で、教師たちはユーリを特待生として特別クラスに編入させる事を計画していた。もちろん特別クラスには平民3人組も一緒だ。
明らかに他の生徒達より魔法が上手く、現段階で卒業生と同じレベルにあると思われている。まあ、事実、王宮魔導士より力はあるのだが。
教師たちは秘密裏に話を勧めていたが、やはり何処からか噂が流れだす。
ユーリたちは露骨に嫌な顔をする。
「なんか不味い事になってるなぁ。どうにかならないかな?」
「そうですね、特別クラスなんて行ったら、国に抱え込まれるのと変わらないですよ。」
ルーカスが珍しく憤慨している。
「実際、特別クラスに入ったら、強制的に将来を決められてしまいそうだね。女性陣2人は嫁ぎ先とかも決まっちゃうんじゃない?」
「それは困るわ。私は商会を継ぎたいのに・・・」
「私は貴族に嫁げれば親が喜ぶかも。」
「なんとかこの計画を止めないと。」
「でも、どうやって?」
そう、それが問題だ。ユーリはいざとなれば学院を辞めるつもりだが、他の3人を巻き込む事は出来ない。この手は使いたくなかったが、父上を頼るしか無いかな。
その日、学院から帰ったユーリは久しぶりに父上の書斎を訪ねた。
「父上、お話があるのですが、よろしいでしょうか?」
「ユーリが話とは珍しいな。また陛下に何か献上するのか?」
「いえ、ちょっと学院で不味い立場になってしまいまして・・・」
「何かやらかしたのか?」
「そう言う事ではなく、特待生にされそうなんです。」
「ん?それは悪い事なのか?」
「僕にとっては非常に不本意ですね。国に抱え込まれるのと同じですからね。」
「ふむ。確かに国に利用されるのは面白くないだろうな。」
「自分の将来は自分で決めたいです。」
父上はこう言う所は話が分かる男だ。子供の未来をちゃんと考えてくれる。
「やはりユーリは商人になりたいのか?」
「商人もやりたい事の一つですが、商人だけに収まるつもりはありません。」
「ほう?大きく出たな。まあ、好きにやってみろ。学院卒業までは俺が面倒見てやる。卒業したら、自分の力で生きてみろ!」
「そのつもりです、父上!」
父上が何をどうしたのかは知らないが、ユーリの特待生問題は綺麗に無くなっていた。伯爵家には結構な力があるようだ。多分聞いても、知らなくて良い事だと言われるだけだろう。
これでとりあえず、退学だけは免れた様だ。あとは4年間どう過ごすか、卒業後に繋がる事をしなければと強く思うユーリであった。まあ、アトマス商会からの報酬だけで、伯爵家と同等程度の収入はあるのだが、その時のユーリはまだ知らなかった。もっと稼いで将来自分がやりたい事を見つけた時に後悔したくない。それが今のユーリの思いだった。
数日後ユーリはイルミの父親に招待されて、ベンマック商会に来ていた。ここはイルミの父親が会頭を務める商会で、なんと塩を扱う数少ない大商会の一つだった。塩の価格は国から大銅貨3枚と決められている。これ以上で売っても以下で売っても罰せられ、塩を売る権利をはく奪されるらしい。
「へぇ。凄い品数ですねぇ。この規模になると店員さんも相当勉強しないとお客さんに対応できませんね。」
「そんな事無いわよ。店を区画で区切ってあるの。客からは見えないけど、品物によって対応する店員が変わるのよ。」
「なるほど、そう言うシステムになってるんですね。」
「どう?ユーリ君から見て気になる物はあるかしら?」
「そうですねぇ。塩って加工しても価格は変わらないんですか?」
「塩を加工する?」
「そう、例えばガーリックソルトやハーブソルトにしたら値段はどうなるんでしょう?」
そこへイルミの父親が割って入る。
「その、ガーリックソルトとかハーブソルトって言うのはどういう物なんだい?」
ユーリは現物を見て貰った方が早いと思い、2つの筒状の入れ物を取り出す。
「こう言う物なんですけど、焼いた肉とかにかけたりして使います。」
そう言って、焼いた串肉を数本出す。そして、2つのソルトを振ってからイルミとその父親に渡した。
「これは、これだけで味付けが完結するのか・・・」
「塩だけより全然美味しいわ。」
「これ、1瓶50グラム位なんですけど、塩は半分しか使ってません。お父さんなら幾らで売ります?」
「ん~、1瓶銅貨5枚って所かな。」
「悪く無いですね。でも問題は、塩の価格なんですよ。塩の価格で売ると銅貨1枚にもならないんです。」
「確かにそうだな。これを国の塩担当者に提出して適正価格を算出して貰うって方法もあるが、かなり時間が掛かるぞ。」
「そこでですね、瓶に初めからハーブだけ、ガーリックパウダーだけ入れて販売するんですよ。で、瓶に線を引いて置いて、この線まで塩を入れて良く振ってからお使い下さいって言う風には出来ませんか?」
「なるほど、そうれなら法に引っ掛からずに売れるな。これはますます家の婿に欲しいな。」
「え?」
「なんだ?イルミから話は聞いてないのか?」
どうやら、イルミの父親はユーリを婿に迎えたいらしい。イルミもどうやらその気があるらしい。
「ところで、こいつは卸して貰えるのかい?」
「いいですよ、1瓶銅貨1枚でどうでしょう?」
「じゃあ、1万個ずつ頼むよ。」
ユーリはマジックバッグを取り出し。中に2万個の瓶が入ってると伝える。
「マジックバッグはあとでイルミに持たせて下さい。学院で引き取りますから。バッグだけならポーチに入るでしょ?」
「解った、それでいい。で、本題なんだが。」
どうやらここからが本題らしい。




