第四話
教会に行く日になった。父上は仕事で行けないが、母親のミレーネが連れて行ってくれることになった。シルビー姉上も一緒だ。3人で馬車に揺られ40分位で教会へ着いた。
「母上、洗礼ってどんなことをするのですか?」
「大したことはしないわ。聖水を頭に振りかけて、その後、神父様が頭に手を置いて決まり文句を言っておしまいよ。数分で済むわ。」
「ステータスとかは見れないのですか?」
肝心のステータスの話が出て来ないのでユーリは焦った。
「あら、ユーリはステータスが気になるの?」
「はい、一度見てみたくて・・・それに無料だって聞いたので。」
「なら、洗礼が始まる前に見てくると良いわ。30分位時間があるから、私とシルビーは控室で待ってるわ。」
「ありがとうございます!行ってまいります。」
ユーリはこのチャンスを逃したら後が無いと分かっていたのですぐさま走り出す。
ステータスボードの場所はすぐに分かった。教会にあまり相応しくない格好の連中が集まっていたからだ。多分、冒険者だろう。時間もあまりない事だし、最後尾にさっさと並ぶ。この人数なら10分は待たされないだろう。
順番が来て、ステータスボードの前に来ると、受付のお姉さんが、ボードの下の石を触るように言う。なんでも、この石に触ると頭の中に自分のステータスが浮かび上がるそうだ。ユーリは意を決して石に触れた。
そして浮かび上がるステータス。
体力や素早さ等軒並み低い数字が並んでいる、ほぼ全て2桁だ、が、1つだけおかしな数値がある。魔力量だ、何度数えても3百万ある。ユーリはフラフラとその場を離れた。この時ユーリは魔力量の多さに気が動転して、大きな間違いを犯していた。6歳のユーリの魔力量以外の数値、これが全て2桁と言うのは規格外の数値なのだ。年齢が1桁ならステータスの数値はすべて1桁になるのが通常なのである。
ユーリはぼうっとしながら洗礼を受け、ぼうっとしながら帰宅した。
そして、夕食の時間、皆が集まり、ユーリの洗礼の話になる。父上は既に母上から話を聞いていたらしく、ユーリがステータスボードを見た事を知っていた。
「がっかりしたろう?」
父上は自分も経験があるような事を言いながら話しかけた。
「はい、全ての数値が2桁でした。」
「全てが2桁だって?」
「はい、きっちりとした数値までは覚えていませんが、全ての数値が2桁だったのは覚えています。」
父上はナイフとフォークをテーブルに置いている。周りを見ると家族全員、それに使用人までが時間が止まったように固まっている。
「一番高かった数値は覚えているかい?」
父上が再起動したようにたっぷり間を開けて聞いてきた。
「えーと、体力が一番高くて42でした。次が知力で35です。」
「神童だな。」
「え?」
「ユーリは理解していないようだが、通常年齢が1桁ならステータスは全て1桁になる。学院に入学する12歳の受験生でも、一番高い数値が15あれば天才と言われる位だ。ちなみに体力42は冒険者でもDランクに相当する。」
父上の話を聞いて顔面が蒼白になるユーリであった。
(やっちまった・・・)
しかし、これで驚かれたのであれば、魔力量3百万は絶対に秘密にしないといけない。もし、誰かに知られたら、国に囲い込まれたり、最悪ユーリを奪い合って戦争が起こるかもしれない。
(ちょっと待てよ、魔力量が3百万も必要な創造魔法って、どんな魔法なんだ?こっちも問題だ~)
翌日からユーリは創造魔法の研究に勤しむのだった。幸いな事に、魔法についての知識は転生時に強制的に刷り込まれていたので、研究は労せずに進んでいった。問題は、これを何時使うかだ・・・
(まずは危険性の少ない魔法を一つ作ってみよう。成功したら、次のステップを考えよう。)
ユーリの魔力量なら、まず魔力切れは無いだろうが、魔法を一つ作るのだ、どの位の魔力量を消費するか判らない。生活魔法にしようかとも思ったが、あれは実際には魔法では無くスキルらしい、そこで、ステータス表示の魔法を最初の実験に選んだ。
「クリエイト、ステータス魔法!」
そう唱えると、頭の中に教会で見たステータスと同じものが浮かんでいた。魔力量を見ると100だけ減っていた。
(これで、消費が100なら他の魔法も行けそうだ。どんな魔法を作ろうか?)
ユーリは魔力量の消費が少なくて安堵していた、と、同時に他にどんな魔法を作ろうかとワクワクもしていた。
神様の刷り込んだ情報によると、創造魔法とは想像力の魔法であるらしい、イメージが鮮明なら鮮明なほど魔力量の消費が少なくなるらしい、逆にイメージが曖昧だと、魔力量の消費が増えたり失敗したりするらしい。