第二十話
結果から言うと、リバーシのテストは大成功だった。ルーネさん曰く、客が長時間留まる事が増えたおかげでドリンクの売り上げが2倍になったそうだ。リバーシはルールも簡単なので客同士で教えあう為、ルーネさんが苦労したのは最初の数人だけだったそうだ。また、リバーシを売ってくれと言う客も多く『売り物じゃない』と断るのが大変だったそうだ。そう、異世界でリバーシが受けない訳は無いのだ、異世界と言えばリバーシ、リバーシと言えば異世界と言うくらいテンプレなのだから。
「お客様から問い合わせがあったら、アトマス商会で三日後に販売開始します。とお伝えください。」
「分かったわ。で、借りたリバーシはどうしたら良いの?」
「あれは差し上げますよ。そのまま使っても良いですし。誰かにあげても良いですよ。」
そう言うとルーネさんは嬉しそうに笑った。
「私もリバーシ販売の行列に並ばないとイケないのかと思ったわ。」
「買うつもりだったんですか?言ってくれれば卸しますよ。『銀の猫亭』でも販売しますか?」
リバーシは簡単に真似出来る商品だ、それ故、既に特許も取得してあり、販売も早めが良いと言うので三日後に設定した。価格はアトマスさんと相談した結果、庶民用を大銅貨2枚、貴族用を銀貨6枚にした。最初大銅貨1枚と言ったらアトマスさんがこの世の終わりみたいな顔をしていたのが印象的だった。
この世界では特許は商業ギルドが仕切っている。特許のある商品を他の商会が販売するには売り上げの30%を支払わないとイケない。そうなると1からリバーシを木工職人に頼んで作って販売するよりアトマス商会で仕入れた方が安く上がる。
レイモンド商会等は流石で、アトマスから話を聞いた時点で、5000セットを仕入れたいと依頼して来た。既に渡してあるが、王都ではなく地方で販売するらしい。その方が更に高値で売れるのだそうだ。仕入れ価格は銅貨8枚、販売価格は大銅貨5枚だそうだ。
アトマス商会は今の所王都以外で商売をする気は無いと言うか、そこまで手が回らないのを見越しての判断だろう。
レイモンド商会は海外への輸出も考えているらしい。また少ししたら大量発注が来るだろう。
国王陛下への献上は既に父上に頼んである。今日明日にでも陛下の元へリバーシが届くだろう。
あとは、三日後の販売開始に向けて、マジックバッグの中に1万セットのリバーシが準備されていた。幾つ売れるか解らないので多めに作ったのだが、多かったかな?まあ、腐るもんじゃないし。
準備は進み、軽食販売の売り子達も宣伝をしてくれているし、ユーリが魔法で作ったポスターも店舗の壁に貼ってある。実物もショーウインドウに飾ってある。
そして、いよいよ発売日がやってきた。とにかくこの世界の人々は娯楽に飢えている。それを証明する様に、アトマス商会開店の9時前に既に500人近い行列が出来ている。『銀の猫亭』での宣伝効果がかなり高く、更にそこからの口コミでだいぶ広まったらしい。
「お客さんを待たせるのは良くありません。早速開店しましょう!」
ユーリの言葉と同時に店のメンバーが全員動き出す。女性陣4人は販売、護衛は列の整理、ユーリとアトマスは専用ブースでお客様に遊び方を教える係だ。
結局、この日は終始列が途絶えず、食事も交代で取りながら、実に1万5千セット以上の販売をした。
これが更に噂を呼び、連日商会の前に行列が出来る日々が5日も続くのであった。
更に家に帰れば、父上に呼び出され、貴族用のリバーシを20個用意して欲しいと言われ、流石のユーリもダウンするのであった。
この日からリバーシで遊ぶ姿が王都のあちこちで見られる様になった。料理店や喫茶店に入れば必ず置いてあるし、リバーシを抱えて友達の家に遊びに行くのが子供たちの間でブームになった様だ。家で家族で遊んで強くなれば、他の人と対戦したくなる。そこで、人が集まる場所へリバーシをしに集まる。特に『銀の猫亭』は強者が揃っていると言う事で、挑戦しに来る客が絶えず、店の売り上げにも貢献しているらしい。
ブームは子供だけでなく大人の間でも広がり、大会も各地で開かれる程になった。当然貴族の間でも流行し、王都以外の地方からも問い合わせが来るようになった。これにはユーリもアトマスも吃驚したが、レイモンド商会に情報を渡し事なきを得た。
あれから一週間経つが相変わらずリバーシは一定数出ている。これは、王都近郊の町から買いに来る旅商人の仕入れの様だ。王都では既にかなりの数で回っているが、まだ地方では需要が追い付いていない様だ。
軽食販売も再開し、アトマス商会は普段の様相を取り戻しつつある。リバーシ販売でかなり儲けたので売り子達や護衛にボーナスを出す事も考えている。
ちなみに、アトマス商会の売り上げは日本円で一日平均1千万円、週1日は休みなので月平均2億6千万円に上る。全てユーリの魔法で商品は賄っているので純利益が2億6千万円だ、売り子と護衛の賃金がそれぞれ月に6万円、6人で36万円だ。アトマスは会長なので月に金貨10枚、日本円で100万円渡している。成人したてのアトマスには。貰いすぎだと何時も言われるが会長なので何かとお金は必要になると言って貯金させている。そして、残りの2億5千万円以上がオーナーのユーリに入ってくる。正直使い道が無い。
(早い所オーナーをアトマスさんに押し付けよう。)
そう決意するユーリであった。




