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第百六話

 いつも通り6時に目が覚める。エリシアさんはまだ寝ているのでベッドの上で考え事をする。


 ひょんな事からパーティーを組んでしまったがこれから先戦闘力を上げるには1人では厳しいだろう。また、この国の住人と一緒に居た方が。知識や地理面で助かる。そう言えばお金の種類は一緒だったが価値はどうなんだろう?


 そう言えばエリシアさんはBランクの冒険者と言ってたがどの程度の強さなのだろうか?エリシアさんのレベルは41だった。レベルと言うのも初めて知った。この国では一般的な指標なのだろうが、他の大陸ではどうなのだろう?


 そんな事を考えつつエリシアさんの寝顔を見ていたら。エリシアさんがむくっと起き上がった。


「女性の寝顔を見るのはあまり関心しないな。」


「すみません。何となく気になっちゃって。」


「まあ、いい。そろそろ食事の時間だろう?下へ降りるか?」


「そうですね。冒険者は寝坊が多いので早い時間は空いてますから。」


 自分とベッドにクリーンをかけて1階へ降りる。


 食堂では早めに出かける冒険者が数人テーブルに着いているだけで空きテーブルが多い。昨日と同じテーブルに着き。食事と果実水を2人分頼む。


 今日のメニューはサイコロステーキな様な物と野菜のスープ、ハムエッグとパンだ。朝からかなりヘビーなメニューだが、皆平気で食べている。中にはお替りしている者も居る。


 果実水を冷やすとエリシアさんが興味を持ってゴクリと一口飲んで驚いていた。相変わらず塩味だらけの料理だが、2人で食べる食事は美味かった。


「手早く食べたらギルドに行くぞ。Bランクの依頼はCランクパーティーにとっても美味しい依頼だから取り合いになる。」


「解りました。」


 なんとか全てを胃袋に収めて、リュートは部屋に先に戻ろうと席を立つと、同時にエリシアさんも席を立つ。


 階段を上がり部屋の前に着くと、エリシアさんが先に入ろうとしたので。


「僕はここで待ってます。」


「構わん、入れ。」


 そう言われた。部屋に入ったエリシアさんは、さっさと着替えを始める。


「だから、人前で脱がないで下さい。」


「リュートは少し女の裸に慣れる事が必要だ。冒険者なら依頼で長期の移動も少なくは無い。2人ならテントは1つ。1枚の毛布で寝る事だってある。」


「そうかもしれませんが、今は宿屋ですし。」


「私が構わないと言って居る。性欲があるのは男だけではない。女にも性欲はある。冒険者なら女性が我慢できなくなった時受け入れるだけの覚悟は持て。逆に君が我慢できなくなったら私が受け止めてやる。」


「ん?それって、男女の冒険者パーティーってもしかしたら、夫婦や恋人の様に周りからは思われてるって事ですか?」


「私とでは嫌か?」


「いや、そんな事はないですよ。エリシアさんは美人ですし。僕より強いですから。」


 と、うっかりエリシアさんの方を見たら、少し小さめだが形の良い胸が見えて、慌てて目を逸らす。


「君も早く着替えろ。それから敬称は止めた方がいい。冒険者は基本敬語を使わない。私と君の場合。敵にどちらが強いか悟られてしまうのはマイナスになる。」


「なるほど、だから冒険者は荒くれ物の様な言葉使いなんですか?」


「まあ、自分を強く見せるのは人間の本質だしな。」


 リュートは覚悟を決めて冒険者モードに着替える。エリシアさんは既に着替え終わっている様だ。


「では、ギルドに行こうか?」


 そう言ってエリシアさんはドアを開けて出て行く。リュートは忘れ物無いことを確認して、後を付いて行く。


 ギルドはすぐ隣なので、忘れ物をしても取りに戻る時間はあるのだが性格の問題かな?


 ギルドに入ると掲示板に向かう。この掲示板に依頼が貼り出されるのだ、基本貼り出す時間に決まりは無いのだが、8時から10時の間が一番量が多い。これは朝依頼を受けて夜までに帰って来る冒険者が多いからだ。


 Bランクの依頼は多くない。エリシアさんはパッと見てすぐに1枚の紙を剥ぎ取り受付に向かう。


「今日はこれにする。メタルリザードの討伐だ。君の力量を測るのに丁度良い。」


 そう言って受付に紙を渡す。


「パーティーでの討伐ですか?」


「ああ、そうなるな。」


 エリシアさんが答えると。パーティーならパーティー名が必要だと言われた。


「パーティー名か。じゃあ、『竜砕き』とでもしておいてくれ」


「解りました。パティー名『竜砕き』メンバーは2名、エリシアさんとリュートさんですね。」


 エリシアさんとリュートが頷くと受付嬢が何やら書き込んでいる。


「登録が終わりました。依頼は受理されます。メタルリザードを最低2体確保して下さい。それ以上についてはギルドで買い取ります。」


「解った。では行くぞ!」


 エリシアさんに付いて行く。何人かの冒険者が振り向き。ソロ専のエリシアが男を連れてると驚いているがエリシアさんは無表情だ。


 ギルドの外へ出ると、エリシアさんはホッと一息つく。


「エリシアさんって有名人なんですね。」


「敬称は禁止と言ったはずだ。この町で唯一のBランクだからな。」


「メタルリザードって近くで狩れるんですか?」


「近いと言えば近いかな、北西に5時間程行った場所に生息地がある。往復で10時間戦闘に2時間と考えて12時間で帰って来られる。今が8時だから、20時には帰って来られる。」


 じゃあ、ちょっとした食料を持って行った方が良いのではと提案したら要らないと答えられた。すぐに出発するらしい。


 目的地に向かう間に剣術の勉強をする。


「騎士の剣、剣士の剣、冒険者の剣、何が違うと思う?」


「なんでしょう?役割が関係してくるのでしょうか?」


「うむ、良い線を行って居る。騎士の剣は守りの剣だ。防御と言う訳では無く、主君を守るための剣と言う意味だな。だから、騎士は敵を後ろに逸らさない様に戦う。剣士は対人を想定した剣だ。なので剣技に虚実が混ざって来る。まあ、これは覚えなくともよい。最後の冒険者の剣、いわゆる戦士の剣だな、君が覚えるのはこれだ。戦士の剣は1対複数を基本としている。出来るだけ効率よく、出来るだけ迅速に敵を倒す。これが戦士の剣だ。」


「えっと、敵が複数だから、敵に攻撃の隙を与えずに自分が優位に立つように立ち回れという事ですね?」


「まあ、言うは易いが実践は難しいぞ。」


「解りました。えっと、エリシア。」


「それでよい。」


 前回はすぐに北へ曲がったが今回は2時間以上西へ歩いてから、ようやく北上する道へと曲がった。この辺りも木が多いが地面が固い気がする。出て来る敵もこの間の森とは違って見た事の無い物が多い。


 リュートはサーチを掛けながら歩いているので、敵の発見が早い。その為対処も早いので、予定より早く着くかもとエリシアが言っていた。


 そんな時、リュートのサーチに大きめの群れが引っかかった。


「右方向から10匹以上の群れが来ます。」


「この辺りで群れと言うと、フォレストウルフかな」


「強い魔物なんですか?」


「1匹ずつなら大した事無いが、群れだとちとやっかいだな。」


「魔法で数を減らしましょうか?」


「それが君の戦い方なのだろう?」


「ですね。」


 フォレストウルフの群れが近づくのを息をひそめて待ち、なるべき引き付けてからロックバレットをマシンガンの様に横なぎに発射する。フォレストウルフは14匹居たようでその内8匹を戦闘不能にした。残りの6匹も手傷を追ったようで逃げて行った。


「魔法使いとして考えてもBランク位の戦闘力があると思うぞ。」


「そうなんですか?でも、魔力量は少ないですよ。」


「パーティーならそれは補えるから弱点にはならないな。」


 2人でフォレストウルフに止めを刺しながら会話する。ちなみに死体は全てマジックバッグに入れている。


 それから1時間大した魔物にも合わずに目的地に着いた。予定よりも1時間弱早く着いたそうだ。


 15分程の小休止をとってからメタルリザードを探し始める。


 休憩時に魔法で冷たい水を出してあげたら、物凄い喜ばれた。


 目的のメタルリザードはすぐに見つかった。生息地と呼ばれるだけあって。サーチを掛けるとあちこちに反応がある。


「普通は見つけるのに1時間は掛けるのだがな。」


「で、あれってBランクだから強いんでしょ?どうやって倒すんです?」


 メタルリザードはその名の通り、全身の鱗が金属で出来ている。通常の武器では刃が立たなそうだ。


「ふむ?君ならどうする?」


「そうですね、バインドで動きを止めて、エリシアのバトルアックスで首を落としますか?」


「60点だな。その方法でも倒せるが、素材が傷ついてしまう。メタルリザードの弱点は腹だ。腹部は柔らかいのでそこを攻撃できれば簡単に倒せるぞ。」


 いや、巨大なトカゲと言うかワニの様な魔物の腹をどうやって攻撃するの?しかも、かなり素早いし、顎と尻尾は危険だと言う。


「土魔法と氷魔法が使えるんだったな?」


「まあ、そこそこは」


「だったら下から攻撃出来ないか?」


 下から攻撃?ロックパイルを突き上げる様にすれば良いのかな?


「やってみます。」


 そう言って、ロックパイルをゼロ距離で上に突き上げる。メタルリザードが悲鳴を上げて1メートル位浮き上がった。瞬間エリシアのバトルアックスがすくい上げる様に下から心臓を貫いた。


「やはり君は便利だな。その調子で次も頼む。」


 作戦が上手くハマったのか1時間で7匹のメタルリザードを倒した。


「これくらいで良いだろう。今帰れば明るい内に危険な場所を抜けられる。」


「解りました。全てマジックバッグに仕舞ったので荷物も軽いので行きより早く帰れますね。」


 まだ、午後1時を回った位だ。急げば5時過ぎ位には町に着くだろう。


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