第十話
今日の朝食はチーズオムレツとカリカリベーコン。それに甘さを控えたフレンチトーストだ。飲み物はそれぞれ好きな物をユーリが提供している。伯爵家の食事もだいぶ洗練されて来た。
朝食を楽しんでいると、珍しく母上がお願い事をして来た。
「ねぇ、ユーリ。今日の昼に公爵のお茶会に誘われているのよ。でね、軽食を人数分用意して貰えないかしら?」
「構いませんけど、母上はマジックバッグをお持ちですか?」
「いえ、持ってないわ。普通のバッグじゃ駄目なの?」
母上がお茶会に持って行くバッグを持ち上げて見せる。いかにも貴族が持ちそうな豪奢なバッグである。その分容量は少なそうだ。
「では、そのバッグをマジックバッグにしちゃいましょう。大きさは2メートル四方位で良いですよね?」
「そう言えばユーリはマジックバッグを作れるんだったわね。それでお願いよ。」
「解りました。軽食はこの間食べて頂いたハンバーグをパンに挟んだ物。ハンバーガーを用意します。人数は何人ですか?」
ハンバーグと言った瞬間シルビー姉上の目がキラリと光った。仕方ないなぁと思いながら。一個、姉上の前へと出す。
「人数は20人位かしら。」
母上は相変わらずマイペースだ。姉上は食後だと言うのにハンバーガーに噛り付いている。
「では、おかわりも考えて、50個入れて置きますので。」
「ありがとう!ユーリ。」
母上がお茶会でお披露目してくれると結構な宣伝になるかもな。等とユーリは考えているが、これが後に大変な事態を引き起こすとは思いも寄らないユーリであった。
朝食を食べゆっくりと食休みをしてからユーリは商会の店舗へ向かう。アトマスも一度レイモンド商会で商会長の父親と話をしてから来るので、この位の時間がちょうど良いのだ。
王都はほぼ円形をしていて、中央に十字に大通りが通っている。王城は北にあり。その周辺が貴族街となっている。貴族街から中央通りまでが大きな商会が立ち並ぶ商業地帯となっており、その以南、東端、西端が農村地帯となっている。農村地帯は主に畑中心で、小麦等は南門の外に畑がある。穀物類は魔物が食べないので門の外でも比較的安全に育てられるらしい。南、東、西には門があり、衛兵が常に詰めており、王都に出入りする人を監視している。特に南門は冒険者ギルドが近いので冒険者の出入りや農民の出入りが多いので南門の兵士は激務で有名らしい。
ユーリの開くアトマス商会の店は、商業地帯でも南寄り、大通りに面していて、立地は良い。貴族にも庶民にも、冒険者にもどの層に向けてでも商売が出来る。その気になれば、他の町の行商人をターゲットにする事も可能だ。
店に着いたユーリは外観も気になったので、家の外にもオールリペアを掛けた。これでほぼ新築とまでは行かないが清潔な店に見えるだろう。
中には先に来たアトマスがいた。合鍵を渡して置いたのである。
「おはようございます。どうです、店の中身はどういじるか決まりましたか?」
「ユーリ様、その件なのですが、思い切って軽食の客は店に入れない様にしたいと考えています。軽食は店頭で販売し、外に椅子とテーブルを置き食べて行く人はそこで、と言うのが良いと思います。店の中はグラスを求める客だけを入れたいと考えています。グラスは壊れ物です。価格もそれなりになると思うので、あまり客を多く店に入れたくありません。どうでしょう?」
アトマスは軽食を求める客とグラスを求める客の客層の違いに気が付いた様だ。それはユーリも考えていた。出来ればグラスと軽食の2店舗欲しいと思っていた。
「アトマスさんが良いなら僕に異論はありません。ただ、別に2つの商品を同じ店で売る事に拘らなくても良いと思いますよ。軽食は屋台でも出店でも行けますからね。」
「はい、それは私も考えたのですが、軽食は客寄せになると思うんです。人が集まるチャンスを見逃すのは勿体ないと・・・貧乏性なんでしょうかね?」
アトマスは自虐的に笑うが、商人としては正解だとユーリは思った。アトマスは本当に優秀な商人だ。
「まあ、いずれは1店舗ではなく何店舗も切り盛りする大商会にする予定です。最初は小さくても良いでしょう。これでもかなり恵まれてるスタートだと思うし。」
「そうですね。他には無い商品が最初からあるなんて恵まれ過ぎてます。」
ユーリはアトマスと二人で、グラスの棚や、店の内装等を魔法で整えて行き。店のオープンを五日後と決めて、他に何か必要な物は無いか最終確認を始めた。
「ユーリ様。そう言えば、店員は雇わなくて良いんですか?」
「店員?でも二人でって・・・」
二人で相談してやれとは言われたが、店員を雇ってはいけないとは言われていなかった。
「アトマスさん!店員をやってくれる人に心当たりは?」
「商業ギルドで斡旋してくれるはずですよ。」
「今すぐ行きましょう!!」
ユーリとアトマスは店員確保に商業ギルドへと向かうのであった。




