超ショートショート「電気ストーブさんとのら猫の戦いをバックに温まろう」No76
わたし 春と秋は散歩と探検の季節。最近無くなると聞いて、人類の衰退を危惧しています。
電気ストーブさん 冬になるとのら猫達に群がられるのが、悩みであり楽しみ。
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秋風がぴゅるると吹いて、私のスカートを軽く撫でる。この季節は陽の光は白く変わっていて、それほど暖かくはないのがとても残念。
でも厚着は好きなのでなんだかんだ好きな季節ではある。散歩するだけで自前の洋服が自慢できるのは楽しい。
そんなわけで私は下手な口笛を吹きながら公園を散歩していた。
だから電気ストーブが歩いているのを見た時は、不意打ちすぎてとても驚いた。
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家に帰ればエアコンの暖房があるからよして帰ればいいのに、私はその人に近づいてみる。
「こんにちは。」
その電気ストーブさんは黒いコートを着ていて、頭ところがひょっこり電気ストーブになっている。口も目もなくてただ真っ赤に光っている。腕も見当たらず、足はコートに埋まっている。コートの中はどうなっているのだろうか?
「おうほう!こんにちは、燃え盛る薪の色の人間よ!この私になんの用かな!?」
変な喋り方の電気ストーブさんは私の真紅のコートを褒めてくれた。だから多分悪い人じゃないはず。
私は少し屈んで、電気ストーブさんの頭で手と顔を温めながら喋る。
「いや、ちょっとお話したいな~て。」
「お話か!素晴らしい!吾輩は童話も映画も大好きなのだ!なにを話そう?」
私は激しく動いて喋るストーブさんの頭から上手く手を避けながら、暖まる。
ストーブさんは喋る時に、ギラギラと赤く燃える反射板が黄色くなり熱くなるので、少し危険だ。
「そうだなぁ…出来るだけ長い話をお願いします。あと頭はあまり動かさないで。」
「了解した!それでは私がのら猫と戦い、なんとか引き分けた時のことを話そう!あれは1年前の冬のことだ。去年は凄まじく寒い年だった…」
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夕方にもなると、私はストーブさんの熱だけではあまり温まれなくなってきていた。でもストーブさんの話は楽しくて、そしてなによりとてつもなく長かった。
私が何処でどうやってストーブさんと別れて家に帰ろうか考えていると、ストーブさんがのら猫の家族とのら猫的な政治家が手を組んで襲ってきた話を切り上げて、こういった。
「おっと!私はそろそろのら猫の元へ行かねば、今日の寝床を取られる!人間よ!愉快で楽しい話をありがとう!では!」
ストーブさんはそう言うと、秋風のように颯爽と去っていった。
私はあまり話さなかったのに、そんなに楽しかったんだろうか?
周囲は薄暗くなってきている。
私は身震いをすると、愛すべき喋らないエアコンの待つ家に帰ることにした。
あれでいてエアコンも楽しいところがあるのだ。おしゃべりな電気ストーブよりも、そろそろ愛すべき我が家に帰ろう。
冷たい風に後を押されて、私は長い散歩から帰路に着いた。
お恥ずかしながら文章の仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、一生懸命1歩ずつ頑張りたいと思います。アドバイス等をどしどし下さると助かります。
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電気ストーブでちゃんちゃんこを焦がしちゃったのを思い出しました。
父親いわく、「現代のこどもじゃない」そうです。