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5-2

「なんであんな事言ったんですか!」

先輩の家で俺は問い詰める。

しかし先輩は「いえ、なんとなく」と素っ気なく返すだけだった。

「私なりにエンディングを形にしてみたのだけど、20通りのうち19は主人公が死ぬわ」

クソゲーみたいなルート分岐だな!

「正直主人公としてあの子のインパクトは薄いのよね」

先輩が怪訝そうな顔で見る。

こうなると、少しでも印象を残すには死んでもってオリオン座にでもなって貰わないと上手くいかないらしい。

前回、例の小説を書いた時は上手くいっていたからてっきり先輩も白百合に対してなにか思うことがあっと思っていたが…。

「でも、この前の小説は白百合をヒントに最後まで書けたじゃないですか…」

相当暗い小説だったけど。

「あら?あなたよくわかってなかったのね」

先輩が意外そうな顔をしたことに俺は意外だった。

「あれは白百合さんではなく、あなたからインスピレーションを受けたものよ」

「え…?」

俺の思考が止まる。まさかあの小説にインスピレーションを受けていたのは俺からだったとは夢にも思わなかった。

「はっきり言うとね、あの子に主人公の適性は無いわ」

先輩は言葉を続ける。

「あの子には、人としての重みやこだわりなどキャラクターとしての適性が決定的に欠けている。さっきのエンディング論の時もそれは思っていたわ。

まったく物事に対してグレーな部分だけの感性しかない人間の作品はつまらないありきたりなものになる」

先輩の言うところにはところどころ刺さる部分がある。白百合は、確かに役不足もいいところだろう。ぼんやりと抱いていたものを具体的に指摘されると、言い返すこともできなくなる。

「むしろ、あなたが主人公になった映画を撮れば、私のシナリオも進むと思うわ」

またまた以外な言葉だった。俺が主人公?冗談だろうか?

先輩がじっと俺を見ている。その瞳は、本気に見えた。

「いずれにせよ、ちょっと待ってください」

俺がこだわっていること。それは俺が主人公になるかどうかではなく、白百合を主人公から下ろすことだ。

でも、そもそもなんで俺はアイツで映画を撮ろうと思ったんだっけ?

「…物書きとしてのアドバイスを1つだけ言っておくわ。あのプロットは1度捨てなさい。今のあなたの構想では使えないわ」

ここに来てプロットの全ボツである。人も揃えてシナリオもあれば、あとは淡々と作って行けばいいだけだと思っていた。

これだけの人を動かしておいて、映研の映画公開の道は再度暗中模索となる。


その日は、久々に安藤と映画に行くことになった。

見るものは奴の趣味に合わせてミニシアター系である。

見ているが相変わらず意味がわからないものが多いと思う。しかし安藤曰く、それらすべてのシーンには必ず意味があるらしいが、それはもしかして視聴者側の勝手な解釈なのではないだろうか。

「で、どうだった?」

映画を見たあと、ファミレスで飯を食いながら安藤が聞いてきた。

「正直よくわからん映画だった」

さっき見た映画を述べたら、安藤は否定してきた。

「そうじゃなくて、映研の方だ」

なんだ、一応気にかけてくれてたのか。

「おかげさまでプロットまるごとデッドエンドになったよ」

「ははっ、まぁあの先輩ならそう言うか」

映画制作が再度暗礁に乗り上げたというのに。

「ま、この映画の発起人はお前だしな。スタッフとして力は貸すが、基本的なプロットは干渉するつもりねーから」

その言葉は意外だった。安藤はこだわりが強い。てっきり作る内容に干渉してくると思ったが。

「…その割には先輩の案にのったじゃねーか」

「いや、あれはなかなかナイスアイデアだなって」

先輩もそうだが、安藤ももしかしてあのプロットに対して単純に投げやり気味なのでは?

「でもせっかくなら面白いもん作りたいとは思うよ。どうもあのプロットに正直違和感があった」

先輩と同じことを言われ、少しギクリとした。

「それ先輩も言ってたな」

「割と簡単な話だと思うぜ、お前白百合を撮ろうとしてるのに、あの話がまるで他人みたいだ」

少し、ハッとさせられる。確かにあれは俺の空想の中で描いていた映画から引っ張り出したもんだ。それは、単に白百合のイメージと合っていない?

「…頼むからおもしれーもん作ってくれよー監督ー」

安藤は飯を頬張りながら言った。

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