シーズン01 第099話 「も」
「すももももももも」
「……もが多くない?」
「いやだから、すもも、も、もも、も、藻」
「藻ではないでしょう」
「でもひらがなの『も』って藻っぽくない?」
「ごちゃっとしてる平仮名はだいたい藻っぽいわよ」
「藻っていう漢字も藻っぽい!」
「さては密度があれば何でもいいと思ってるわね」
「7つの連続する『も』から三つの『も』を取り出したときに作ることのできる桃の数は」
「3つ取り出したら『もも』じゃなくて『ももも』じゃないの」
「だから、桃藻」
「ピンク色の藻?」
「ありそうじゃない?」
「あるにはあるでしょうけど、ピンクだと光合成ができないから枯れてる状態のことね」
「桃枯れ」
「……桃って言っておけばなんとなくありそうな感じがするのも不思議よね」
「ちなみに答えは5通りでした!」
「あら、35通りじゃないのね」
「35?」
「7×6×5÷6で35通り」
「それが許されるなら210通りでは?」
「なんで『も』同士が区別できる前提になってるのよ」
「藻だから」
「仮に藻だとしても人間には区別できないでしょ」
「理解が足りない」
「理解でどうにかなる話なの」
「例えばマリモとオオカナダモは全然違うじゃん」
「いや、オオカナダモは藻じゃないじゃない」
「それはそうなんだけど」
「そうなんだけどじゃないでしょ」
「『も』、見ようによってはイカの足に見えなくもないよね」
「もはや何でもありね」
「日本語は自由だから」
「そんな標語があるのかどうか知らないけど少なくとも作った人はそういう意図では言ってないはずよ」
「そんなことは無い。なぜならいま私が作ったから」
「そっちかー」
「そっちでした」
「きっと『も』の曲がってる部分がイカの足というかあれに見えたとして」
「そうそう」
「横棒は何なのよ」
「吸盤」
「吸盤にしては長くない?」
「それはフォントが悪い」
「どちらかと言うと『も』の横棒が短いフォントの方が悪いフォントよね。っていうか『し』じゃダメだったの?」
「あれは釣り針」
「あー、確かに」
「でも、イカの足は本来十本だから、もももももももだと三本誰かが横領してることになるね」
「税金でとられちゃったんじゃないの」
「驚異の税率30%だ」
「それはだめね」
「現実的なところでは中間マージンでは」
「価格を上乗せするんじゃなくて物自体を抜くのね」
「そうして集めたも集合を」
「を?」
「……どうしたもんかね」
「ほらー」
「けど、十本のもが七本になるってことは、中間マージンとしてまさしくもももを抜いてるわけだよね」
「桃ならともかく枯れた藻を抜いてどうするのよ」
「けど、もとももに分解すれば藻と桃だからお得じゃない?」
「確かに」
「つまり、イカの中間マージン屋さんは野菜果物屋さんをやってるんだよ!」
「青果店ね」
「花は売ってないけど」
「果実の青果店」
「なる!」
「あと、一番謎なんだけど」
「はいな」
「今までの文脈における『も』っていったい何のことなのよ」
「それは、私にもわからない」
「おい」
藻も桃も物見の者も物自体
そういうことということになる