シーズン01 第098話 「麺道」
「ラーメンって精進料理?」
「どこに精進要素があるのよ」
「量」
「量?」
「多いじゃん」
「いや、店の裁量でしょう」
「でも基本多くない?」
「そうかしら。別に食堂のラーメンだって普通じゃないの」
「あれは食堂だから」
「あと通学路にあるラーメン屋さんも普通よ」
「あれはラーメン屋さんだから」
「ほかに何があるというのよ」
「ラーメン店」
「何が違うのよ」
「ほら、大食い大会って言ったらラーメンだし」
「それはあるわね。でもあれ制限時間がついていることが多いから大食いじゃなくて早食いを名乗るべきよね。もっとも純粋な大食いにするにはルール設定が難しそうだけれども」
「二十四時間耐久レースにすれば良いんじゃ?」
「もはや寝れるわね」
「寝たら負け」
「趣旨が変わってきてるわよ」
「じゃあフランス料理のフルコースに倣って十二時間」
「一桁」
「百二十時間!?」
「そんなわけないでしょ逆方向よ逆方向。普通に二時間ぐらいよいくらなんでも」
「でも茶の湯って六時間ぐらいやってない?」
「やらないわよ。六時間も何するのよ」
「茶碗を回す」
「六時間ずっと茶碗を回し続けたらもはや陶芸ね」
「あれって回して何やってるの? 不純物除去?」
「重化学工業における理解不能な工程がすべて不純物除去だと思ったら大間違いよ」
「となると何を除去してるの?」
「除去じゃないって言ってるでしょ」
「仮に除去だとしたら」
「さあ。雑念とかじゃないかしら」
「電気の無駄」
「だから除去じゃないってば!」
「陶器で食べないよね、ラーメン」
「丼って普通は陶器じゃない? 食堂とか安いところだと洗う手間を考えてプラスチックだったりすることもあるかもしれないけれど」
「あれは工業製品じゃん」
「陶器と工業製品は両立するわよっていうか陶器は工業製品の部分集合よ」
「工業製品じゃない陶器っていうか、ほら茶碗みたいな」
「ラーメンの器用に作られた『茶碗』が存在しないっていう話?」
「All that's.」
「流石の私でもそんな英語がないことぐらいはわかるわよ」
「口語だから」
「あら、俗表現として使われてるのね」
「うん。今作った」
「ほらみたことか」
「まあまあ」
「ラーメン用の『茶碗』が存在しない理由。それは……茶碗が、お茶を飲むためのものだからよ!」
「ダウト。反例:お米」
「それはっ……、茶碗がお茶を飲むかお米を食べるためのものだからよ!」
「濁した」
「米相手なのに茶碗を名乗る方が悪いのよ!」
「丼呼びでいいはずなのに、なんでだろうねーアレ」
「きっと誰かが茶碗に米をよそったりしたのよ」
「米は何にでも合うからね」
「いや、それは意味が違うわよ」
「たぶんお茶漬けのせいなんだよね、あれ。正規茶道プロトコルには米に対するお茶漬け処理も含まれてるから」
「お茶漬けって茶道の正式な手続きに含まれてたのね」
「そうそう。で、ここからが重要なんだけど、お茶って液体だよね」
「そうね」
「米は炭水化物だよね」
「ええ」
「ということはお茶漬けは液体の中に炭水化物が入っている。これってラーメンの一変種として解釈することもできるんじゃない」
「……なるほど!」
「そしてお茶はお茶も米も精進料理なので、お茶漬けも精進料理」
「ということは」
「ラーメンは精進料理!」
「おお!」
「……成功ーーーーー!!!!」
「満足した?」
「とても」
「ラーメン食べに行く?」
「行くー!」
【ラーメンと認定されるギリギリの
ライン】そうめんチーズフォンデュ